日本で毎年約1万6,000人もの人が新たに診断される子宮体がんは、40歳頃から増加し、閉経を迎える50〜60歳の女性に多くみられるがんです。子宮体がんは、がんが子宮にとどまっている早期のうちに治療をすれば80%以上の治癒が期待できるといわれており、早期発見・早期治療が望ましいとされています。
では、子宮体がんの検査はどのようなタイミングで受けるとよいのでしょうか。また、子宮体がんが疑われる場合に行われる検査には何があるのでしょうか。
子宮体がんは子宮頸がんと異なり、厚生労働省が推奨するがん検診はありません。そのため、検査を受けるタイミングの1つは、気になる症状が現れた場合です。
子宮体がんを疑う主な症状として、性器の不正出血が挙げられます。特に40歳以降の方で閉経前の月経不順や、閉経後にもかかわらず出血がある場合などは注意が必要です。不正出血以外の症状としては下腹部の痛み、お腹の張りなどが挙げられます。気になる症状がある場合は放置せず、一度婦人科を受診し検査を受けるようにしましょう。
そのほか、任意の子宮体がん検診を受ける場合が挙げられます。自治体によっては子宮体がんの検診を実施しているところがあります。また、人間ドックなど自分で費用を全額支払って行う任意型検診によって子宮体がんの検査を受けられるところもあります。
なお、がん検診はがんを疑うような症状がない健康な人を対象とする検査です。気になる症状がある場合には、検診ではなく婦人科の受診を検討しましょう。
子宮体がんの検査では、まず子宮内膜の細胞診が実施されることが一般的です。一部の自治体が実施する子宮体がん検診でも、具体的な検査内容として細胞診が実施されます。
細胞診で異常が見受けられた場合、組織診が実施されます。組織診や内診、子宮鏡検査などでがんが発見された場合やがんの可能性が高いと判断された場合には、超音波検査、CT・MRI検査などによる画像検査や腫瘍マーカー検査の実施が検討されます。
細胞診や組織診は“病理検査”とも呼ばれ、子宮体部の細胞や組織を採取し、それを顕微鏡で見ることによってがん細胞の有無や性質を確認する検査です。腟から細い器具を入れて、子宮体部の細胞・組織を採取して調べます。
細胞診の場合、人によっては採取の際に軽度の痛みを感じることがあるほか、検査後数日間はおりものに血が混ざったり、性器から出血が生じたりすることがあります。一方、組織診は組織採取のための器具が細胞診よりも大きく、採る組織も多いことから痛みを感じるため、検査時は麻酔をかけて行うことがあります。
子宮の状態を確かめるために、医師が指で直接臓器に触れる検査です。内診の場合、腟に指を入れ、片手で下腹部を触りながら子宮の状態を確かめます。この検査によって、子宮の大きさや位置、形状などが分かるほか、周囲の組織との癒着の有無が確認できます。一方、直腸診では肛門から指を入れ、直腸周辺に気になる所見がないかどうかを確認する場合があります。
内視鏡を腟から入れ、子宮内腔の状態を観察する検査です。がんの位置や形状などを見ることができます。一般的に、細胞診・組織診などの病理検査と併せて行われます。
超音波やCT・MRIなどによってがんの位置や広がり、転移などについて調べる検査です。細胞診・組織診などでがんが見つかった場合や、がんの可能性が高い場合などに行われます。
超音波検査、MRI検査では主に子宮とその周辺臓器について、CT検査では主にリンパ節やほかの臓器への転移の状態について調べることができます。なお、高齢の方で腟から器具を入れて細胞診・組織診をすることが困難な場合、細胞診・組織診の代わりにMRI検査を行うこともあります。
血液検査でがんによって産生される物質が増えていないかどうかなどを調べる検査です。この検査だけでがんの有無を判断することはできませんが、診断・治療効果の判定に補助的に用いられることがあります。
子宮体がんで行われる検査は、今後の治療方針を選択するうえで重要な役割を果たします。そのため、万が一子宮体がんと診断された場合は医師の指示に従って、自身も検査について十分に理解したうえで検査を受けるようにしましょう。
また、子宮体がんでは性器の不正出血などの自覚症状をきっかけに婦人科を受診し、検査を受けることが一般的です。気になる症状があれば、放置せずに病院を受診することを検討しましょう。早期で発見された場合は腹腔鏡手術、ロボット手術などの低侵襲手術ができる可能性があり、入院期間も開腹手術の約3分の1程度となります。
倉敷成人病センター 理事長
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