都市部の大病院などを中心に導入が進む「ロボット手術」。本記事では、ロボットのより適切な活かし方について、広島記念病院消化器センター長・二宮基樹先生のお考えをお話しいただきました。
手術支援ロボット(以下「ロボット」)は、食道がんや前立腺がん、婦人科系疾患など、体の奥深くの治療に対し非常に有用であり、広島病院でも実際に導入して活用しています。
しかし、現在のロボットの使い方は、ロボットの本質から大きくずれてしまっていると感じています。
ロボットの本質を考えるためには、まずロボット手術による治療が生まれた歴史を辿る必要があります。もともとロボットとは、戦争などで負傷して空母などの手術ができる場まで運びこまれた人に対し、遠隔地にいる優秀な外科医が手術を行う目的で作られたものです。
しかし現状では、手術を受ける患者さんのすぐそばに外科医がいるにも関わらず、高額なロボットと共に手術台から離れた所に座り手術を行っています。多関節機能を持ち、拡大機能やぶれ防止機能を持ったロボット手術は、将来的には開腹手術をも凌駕する可能性があると考えられます。外科医がかかりきりになれる状況であれば、より簡素で安価なロボットと同様の機能を持つ器械の開発が可能なはずです。こういったことを考えると、現状では適切な「外科医の活かし方」と「ロボットの活かし方」ができているとはいえません。
他方、ロボットとはその本来の目的を考えると、外科医が不足しているへき地医療にもっと活用されていくべきものであると私は考えます。
都市部に医師が集中し、人口の少ない地域には医師がいない-このような状況は「医師の偏在」と呼ばれ、現在日本では社会問題となっています。私は、医師の偏在に対するひとつの解決の糸口となるものが、ロボットによる「遠隔治療」であると考えます。都市部の実力ある外科医が、地域の病院の手術室に横たわる患者さんを手術するのです。地域にはロボットをセットする医師や術後管理を行う医師がいれば高度な手術が可能となります。ロボット手術は保険認可がおりておらず、高価であるといった課題があるため、なかなか発展せず、現在「未来がみえてこない」といった状況です。まずはロボットをもっと安価にし、遠隔治療に活用できるほどに発展させていくことが、我が国が抱える僻地医療問題解決のための一つの答えとなるはずです。
手術支援ロボットを発展させていくという「医工連携」もまた、私が理想とする「統合」のひとつのあるべき姿です。
友愛医療センター 消化器外科センター センター長
二宮 基樹 先生の所属医療機関
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