子宮頸がんとは、子宮の入り口である“子宮頸部”に生じるがんです。日本では、1年におよそ11,000人が子宮頸がん(浸潤がん)と診断され、年間で約3,000人が亡くなっています。しかし、子宮頸がんは検診によって早期に発見し適切な治療を行うことで、その死亡率を減少させることができます。
本記事では、子宮頸がんの発見に有効な検診方法や精密検査が必要となる確率、検査結果の見方などについてお伝えします。
子宮頸がんを早期発見するため、厚生労働省では20歳代以上の女性を対象に、2年に1回の子宮頸がん検診をすすめています。
子宮頸がんの検査にはいくつかの種類がありますが、その中でも子宮頸がんによる死亡率を減らす効果が複数の論文で科学的に認められているのが“細胞診”です。細胞診とは、子宮頸部の細胞を専用の器具で採取し、その細胞を顕微鏡で見ることによって、細胞の異常を調べる検査です。細胞診の結果、異常があった場合には精密検査を受診する必要があります。
厚生労働省『平成29年度地域保健・健康増進事業報告』では、2016年に子宮頸がんの検診を受けた3,804,714人のうち、子宮頸がんの検診で“異常あり”と判断され精密検査が必要になる確率は2.13%でした。また、精密検査が必要になった人の中で、実際に子宮頸がんが発見された確率は1.68%でした。
しかし、子宮頸がんを疑われるような状態であっても、そのうちの80%はがんに発展しないといわれています。そのため、検診で“異常あり”といった結果が出て精密検査が必要になったからといって、子宮頸がんと決まったわけではありません。
子宮頸がんの検査結果は“NILM”“LSIL”“HSIL”など、アルファベットで記載されていることがあります。結論から述べると、“NILM”以外は追加の検査を受ける必要があります。
以下では、子宮頸がんの検査結果の見方について解説します。
正常であることを指し、精密検査は不要です。
軽度異形成の可能性がある状態で、コルポスコープという拡大鏡を使って病変が疑われる場所の組織を採取して診断する精密検査を要します。ただし、時間の経過とともに正常化していく可能性が高いため、検査後は経過観察になることが多いです。また、正常と軽度異形成との判断に迷う場合はASC-US(後述)と表記されます。
HSILには、中等度異形成(CIN2)と高度異形成・上皮内がん(CIN3)の可能性がある2種類があり、いずれの場合も精密検査が必要です。中等度異形成の場合、軽度異形成と同じく自然と正常に戻る可能性もありますが、長期存続する場合は悪化する可能性があるため治療が必要なケースもあります。一方、高度異形成・上皮内がんの場合は治療が必要になることが一般的です。
また、細胞診の結果が判断しにくい場合には、以下のような表記が使用されることもあります。
NILMかLSIL(CIN1)いずれかの可能性がある場合を指し、場合によっては精密検査が必要になることもあります。HPV検査(後述)を行い、陽性(ハイリスクHPVが検出)の場合は、ただちに精密検査を行います。
HSIL(CIN2・CIN3)か浸潤がんの可能性がある場合を指し、精密検査が必要です。
細胞診の結果が“NILM”以外であった場合、精密検査を受けましょう。子宮頸がんの精密検査には以下のような種類が挙げられ、医師の判断に応じて組み合わせて行われます。
前述のとおり、コルポスコープと呼ばれる拡大鏡を使って子宮頸部の状態を確認し、異常があれば組織を採取して調べる検査です。
子宮頸がんの発生には、発がん性のヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が関与していることが分かっています。HPV検査は子宮頸部の細胞を採取し、HPVに感染しているかどうかを調べる検査です。ASC-USの場合では保険診療として行われます。
また、精密検査の際にあらためて細胞診を行うこともあります。精密検査後は医師の指示の下、経過観察のための通院や必要に応じた治療を行うことになります。
子宮頸がんの検査(細胞診)では、子宮頸部をブラシやヘラなどでこすることによって細胞を採取します。個人差はあるものの通常は痛みがなく、採取にかかる時間は数分程度ですが、少量の出血を伴うこともあります。また、生理中の場合は血液の混入で正確な診断ができないため、生理中の検診は控えるようにしましょう。検査日が生理と重なりそうな場合は、予定を変更するとよいでしょう。
一方、妊娠中でも子宮頸がん検診を受けることができます。ただし、妊娠していることを医師に必ず伝えたうえで行うようにしましょう。現在、妊婦健診で行われる子宮頸がん検診は公費となることが一般的です。
2020年7月29日、国立がん研究センターは“有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン”を更新し、子宮頸がん検診として新たに“HPV検査単独法”を細胞診と同レベルで推奨することを発表しました。これは“細胞診などの検査と組み合わせずにまずはHPV検査だけを行う”というもので、子宮頸がん(浸潤がん)の罹患率を減少させる可能性が海外の研究で証明されています。HPV陽性の場合に細胞診を行い、さらに異常があれば精密検査を行うことが想定されています。
ただし、実際の検診に導入するためには、国内で統一した診療のルール(診療アルゴリズム)が構築されてからとなります。そのため、現時点(2022年1月現在)ではどの自治体も統一された方法での導入まで至っておらず、時間がかかることが予測されます。このことから、子宮頸がん検診の選択肢が広がって受診率が改善すれば子宮頸がんによる死亡率を減少させることが期待できるでしょう。
ここまでで解説してきたように、子宮頸がん検診では精度管理がなされた細胞診だけが子宮頸がんによる死亡率を減少させる効果があるとされてきました。実際に、子宮頸がんは検診(細胞診)を定期的に受けることによって、子宮頸がんによる死亡率を最大で80%減少させることができるといわれています。
現時点で子宮頸がん検診の対象となる20歳代以上の女性の方は、特に気になる症状がない場合でも地域や会社の健康診断を利用して子宮頸がん検診の受診を検討しましょう。症状がある場合は、検診ではなく保険診療として医療施設を受診するようにしましょう。子宮頸がん検診の受診にあたり不安や疑問がある場合は、検診を受ける医療機関、またはかかりつけ医に相談するとよいでしょう。
横浜市立大学医学部産婦人科学教室 主任教授
日本産科婦人科学会 特任理事・産婦人科専門医・指導医日本臨床細胞学会 理事・細胞診専門医・細胞診指導医日本がん治療認定医機構 がん治療認定医日本婦人科腫瘍学会 理事・婦人科腫瘍専門医・婦人科腫瘍指導医日本産婦人科乳腺医学会 理事・乳房疾患認定医日本婦人科がん検診学会 理事NPO法人婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG) 理事
1988年横浜市立大学医学部卒業、2007年に日本婦人科腫瘍学会が認定する婦人科腫瘍専門医を取得する。2013年より日本産科婦人科学会特任理事(子宮頸がん予防担当)に就任し、婦人科腫瘍の集学的治療と子宮頸がん予防、卵巣明細胞がんのトランスレーショナルリサーチなどを手がけている。
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大変お世話になっております。 子宮頚がんのクラス3aです。 まだ月一回の検診に行っておりません。 もし、今妊娠していたら出産は可能なのでしょうか。 万が一を考えて不安になっております。 次回の検診日が先なので、 至急回答をお願い申し上げます。
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