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第13回川崎STI研究会 参加レポート

第13回川崎STI研究会 参加レポート
メディカルノート編集部 [医師監修]

メディカルノート編集部 [医師監修]

この記事の最終更新は2017年02月27日です。

2017年2月18日、第13回川崎STI研究会が川崎日航ホテルにて開催されました。本記事は当該研究会に関するレポートです。

梅毒の爆発的流行が話題にあがりました。

2016年の爆発的流行と各メディアフォーカスにより、梅毒は多くの人が知る疾患となったが、今年はさらなる流行を予感しているとのこと。特に若い臨床医は梅毒そのものや臨床所見・治療方法を知らないことが多く、診断治療スキルの育成が必要です。

尾上泰彦先生(元宮本町中央診療所 院長)

石井則久先生(国立感染症研究所ハンセン病研究センター センター長)

参考記事:疥癬の集団感染をおこすヒゼンダニに注意-「かゆみ」と「特有の皮膚症状」が特徴

実は疥癬は、皮膚科でも忘れることがあるくらい見落とされやすい疾患。パン屋さんでメロンパンを見たら疥癬を思い出してほしい(注記:疥癬という疾患は存在自体が忘れられやすいから常に認識しておいてほしい、ということ)

ノーベル生理学・医学賞を受賞された大村智先生は、疥癬治療薬イベルメクチンの有効成分イベルメクチンを発見・実用化につなげたことから、疥癬をはじめ各感染症治療の恩人と言われています。先生の功績(微生物から500種以上の化合物を発見)は、アフリカをはじめ世界各地域で3億人以上の命を救っています。

疥癬の原因であるヒゼンダニは目がいい人なら肉眼で、よくない人はダーモスコープで確認可能なくらいの大きさです(0.4mm)。透明がかった白をして頭部が少し茶色いのが特徴です。産卵後3~5日位で孵化、成虫になると雌は角層の中を掘り、卵を産みながら前進していきます。こうして形成されていくのが疥癬トンネルです。成虫になると1日2~4個産卵しますが、卵には殻があるため各種薬剤による治療効果は低いのが特徴です。

疥癬の症状である瘙痒感は、卵の殻や糞などがアレルゲンになって引き起こされていると考えられています。

疥癬の原因であるヒゼンダニの主な感染経路は、雑魚寝や皮膚の直接接触で、ときに介護者や寝具が媒介になることもあります。近年の傾向として、性感染症から介護施設等で確認されやすい疾患に変化しています。

通常疥癬

ヒゼンダニ数十匹以下の感染。感染力は弱い。顔と頭以外の全身に症状が現れる。一見すると通常のアトピー性皮膚炎とそっくり。注目ポイントは手指の股(指間部)や手掌部!陰嚢部のしこりや結節を確認しやすいことから、男性の場合は陰嚢を確認する。子どもは水疱や膿疱になりやすいため、重症化しやすい傾向にある。

角化型疥癬

100~200万匹の感染。免疫力が低下している人に多い。寄生数が多く皮膚の剥落により感染機会が多いことから、角化型疥癬は特に感染力が強く、数日で感染成立します。

免疫機能の低下は疥癬の感染率や角化型疥癬の発症率を向上させるといわれており、高齢、糖尿病、ステロイドを使用している、HIV反応などは特に疥癬のリスク要因と言われています。

ヒゼンダニの寄生しやすい部位

手、指間、手掌、手首、足、足首、陰嚢(男性)、乳頭部(女性)

疥癬トンネルはできる部分が限られています。

疥癬トンネルはヒゼンダニ発見のヒントです。ダーモスコープを使用しながら疥癬トンネル・結節を確認すると、先頭に雌成虫を確認できます。疥癬では、疥癬トンネルをじっくり確認してヒゼンダニの所在を確認することが確定診断につながるのです。

高齢者施設で疥癬の可能性を調べる際は、看護師をはじめとするスタッフによる協力も非常に有効です。自覚症状や疥癬トンネルについて普段から伝えておくことが大切です。

手洗いが1番の防御策になります。ヒゼンダニは接触から皮膚への潜伏までにかかる時間は30分程度のため、疥癬患者さんもしくは疥癬が疑われる方と接する前後で積極的な手洗いを推奨しています。

内服:イベルメクチン

外用:フェノトリン、クロタミトン

疥癬の治療で外用薬を使用する際は、症状がなくても、シワ、股等にしっかり塗布することが大切です。1回塗ったものは翌日落とします。

仮に治療後に症状の改善が見られない場合、治療が不十分である場合や、家族内感染や爪疥癬の可能性を疑います。家族内で同様の症状を訴える人がいないかを確認します。爪疥癬の治療法は角化型疥癬に準じておこないます。薬剤が入りにくいため、爪を短くしてフェノトリンを使用して治療します。

疥癬はコートジボワールやスーダンなど世界的にもたくさん患者さんがいて、その数は1~3億人ともいわれています。疥癬攻略には皮膚科医による国際協力がキーポイントになります。

しかし疥癬の原因であるヒゼンダニの生態はよくわかってないことが多いです。疥癬に関する疑問を解消するためには、ヒゼンダニ生態の解明が待たれます。

岡部信彦先生(川崎市健康福祉局健康安全研究所 所長)

性感染症をはじめとする感染症は感染しないに越したことはないです。しかし万が一感染してしまった場合、感染初期の段階で発見治療をすることが重要です。そのためには相手(感染症)を知ることが大切といえるでしょう。

臨床現場の第一線で働く先生から教えていただいたデータを取りまとめることで、増加傾向や症状をはじめ特徴的な動向など、相手を知るための手がかりにしています。今回はこの場を借りて、こうした取り組みついて紹介したいと考えています。

※本記事では、性感染症と梅毒を中心にお届けしています。

目に見える数字がそのまま真実を伝えてる?HIV感染者ならびにAIDS患者数は横ばい傾向にあるといわれていますが、このデータは本当にその通りなのか疑問を持つことが大切です。

川崎市のデータに目を向けると2016年では19例ほどの報告があったことから、数字に大きな乖離はないと考えられます。しかし従来通り警戒が必要な疾患であることに変わりはありません。

感染症サーベイランスは、諸先生からの届け出があってはじめて機能します。法律的には医師が保健所に届けて、川崎市では市が取りまとめをして厚生労働省に届け出をしています。最近では各地域の衛生研究所が担当しており、川崎市では届け出と各種検査を川崎市健康安全研究所が担当しています。届けられた情報は厚生労働省をつうじて国立感染症研究所に送られ、日本の感染症の動向をオールジャパン体制で確認・分析しています。

川崎市では「川崎市感染症情報発信システム(通称KIDSS)」(※)を通じて市内における感染症発生動向をはじめとする各種調査データの発信を行っています

全件報告とは、感染を確認した場合必ず保健所に届け出をする義務のある疾患で、性感染症では梅毒が該当します。一方の定点報告とは、全国で900人程度の先生にご協力をいただき、その医療機関で確認された疾患件数の報告のことです。性感染症では、淋菌感染症、性器クラミジア感染症性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマが該当して、疾患ごとの流行状況に関する大方の傾向をつかむのに有用です。

数値だけを見ると全国的に減少傾向にあることは喜ばしいのですが、これはあくまでも特定の医療機関で確認された件数の総体のため、キャリア(罹患者)全体の動向を把握しているものではありません。この20年位は目立った動向もなくほぼ横ばいといえます。

しかし川崎市では、全国平均と比べるとやや増加傾向にあるため、注意が必と言えるでしょう。

特に女性の場合、妊娠出産時などの感染により新生児への感染や先天性疾患などの影響が懸念されているため、性感染症の早期発見や予防と対策は重要な課題です。口腔感染に生じることが多いために、耳鼻咽喉科医による協力体制が必須と言えるでしょう。

全国的な傾向

1960年頃は少なかった梅毒は去年から爆発的な流行をみせ、現在でも患者数は増加傾向です。国立感染症研究所では、急激な梅毒患者増加を数年前から予想していました。若年層の感染数増加が特徴的ですが、同性間接触による感染の増加も見逃せません。男性は20~40歳、女性では20歳以降の感染確認が増加していますが、この世代に感染が見つかるようになったのは、各種検診の対象年齢に該当していることも影響していると考えられます。

川崎市における梅毒感染者数の傾向

2016年の川崎市内における梅毒患者の動向ですが、男性は20~30歳、女性では20~30歳の感染者が多く、年間届出数は57件でした。市内における肺炎球菌感染症の届け出件数が54件だったことふまえると、梅毒も積極的な啓発が必要な疾患といえます。

性感染症の感染者数が増加する20歳以降の女性に積極的なアプローチをするため、厚生労働省では性の健康医学財団と協力して当該年齢層が子どもの頃に親しんだキャラクターであるセーラームーンを起用、「検査しないとおしおきよ!」をキャッチフレーズに、ポスターやコンドームを作成、医療機関での配布等を実施しています。

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