連載慢性期医療の今、未来

日野原重明氏の教えを受け継ぐ「健やかで生きがいを感じられる生き方」とは?

公開日

2021年06月14日

更新日

2021年06月14日

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2021年06月14日

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「人生100年時代」という言葉が社会に浸透しつつある日本。世界一の長寿国となった我が国において、健康寿命をいかに延ばすかという課題は非常に重要なものです。予防医学の発展に努め多大な功績を残した故 日野原重明先生*の教えを受け継ぎ、現代養生学を基に「健やかで生きがいを感じられる生き方」の普及啓発を行う原寛先生(原土井病院理事長)に、そのポイントと実践について伺います。

*日野原重明氏:「生活習慣病」という言葉を提唱し、また、健康診断や人間ドックの領域の発展に貢献した医師・医学博士。予防医学の充実などに尽力し、医学の発展に貢献した功績により2005年に文化勲章を受賞。100歳を超えても現役医師として活躍した。

※元気100倶楽部の詳細はこちらをご覧ください。

※本記事は、日本慢性期医療協会との連載企画「慢性期ドットコム」によるものです。

「健やかで生きがいを感じられる生き方」とは?

高齢になっても自立し、それまでの人生で培った知恵や経験を社会に還元していく――それが「健やかで生きがいを感じられる生き方」です。人生100年時代といわれる今、健やかで生きがいを感じられる生き方を実現するべく「元気100倶楽部」では、故 日野原重明先生の教えを受け継いで活動しています。

元気100倶楽部の前身は、日野原先生が会長を務めていた「新老人の会」の福岡支部です。現在、400人ほどの会員が在籍しています(2021年5月時点)。

病気が起こる4つの原因

元気100倶楽部が指針とする「現代養生学」を紹介します。

現代養生学では、病気が起こる原因は大きく4つあるとしています。1つ目は遺伝・体質によるもの、つまり生まれつきの病気です。2つ目はよくない環境によるもの、たとえば水や空気が悪い・下水道がない・食物が汚染されていることで起こる感染症などの病気です。3つ目は自分でつくる病気、つまり生活習慣や社会的習慣によるもの、1人1人の生活習慣はもとより、地域や国家、人間関係などの問題に起因した病気を指します。最後が経済的困難によるもの、たとえば栄養失調などです。

私たちは一生のうちにさまざまな病気にかかりますが、その中で先天性のものは少なく、現代の日本では経済的困難による病気も多くありません。現在、病気の一部は「生活習慣によるもの」です。

あるときまでは元気に働いていたのに、突然症状が現れてきたり、検診を受けた際に異常が指摘されたりする方がいます。「どうして自分は病気になってしまったのだろう」とショックを受ける方も多いでしょう。その気持ちは理解しつつ、少々厳しいことを申し上げると、生活習慣病には突然なるわけではありません。青年時代から壮年時代にかけての生活習慣、すなわち衣食住・運動などの毎日の習慣が積み重なり、時間をかけて現れてくるものです。そうした意味で、あなたの病気はあなた自身がつくっているといえます。

次項では、生活習慣が自分自身の病気をつくるという考えに沿って、どのような生活習慣を心がければ「健やかで生きがいを感じられる生き方」を続けられるのかをお話しします。

食事の回数と時間

食事は1日3食きちんと取りましょう。朝食を抜くと血糖値が上がりやすくなり、基礎代謝が低下します。朝食から昼食までは4時間以上空けてください。また、食べてすぐ眠ると成長ホルモンの分泌が抑えられ代謝を妨げてしまうため、夕食は寝る3〜4時間ほど前までに済ませるとよいでしょう。

食事の内容・食べる順番

洋食・中華は週2〜3回に抑え、なるべく1汁3菜の和食にしましょう。

食事の際は、食べる順番に気を付けます。具体的には、野菜類(食物繊維・ミネラル・ビタミンなど)、肉類や魚介類(たんぱく質)、最後にご飯などの主食(炭水化物)を取ります。炭水化物の取りすぎを避け、食後の血糖値上昇を抑えることが重要です。

写真:PIXTA

 

なるべくよくかみ、「腹八分目」を心がけてください。毎食のように満腹になるまで食べていると、内臓脂肪が増えてしまいます。内臓脂肪が増加すると、生活習慣病を発症するリスクが高まるため、注意が必要です。

毎日の運動習慣

高齢になると、寝たきりなど体の不活動状態により廃用症候群(体を動かさないことよって引き起こされる二次的な障害)に陥り、筋力低下や骨粗しょう症、心臓機能障害、肺炎、うつ状態、排尿傷害などの症状が現れる可能性があります。それを避けるために、できるだけ毎日体を動かすよう心がけてください。

具体的なポイントとしては、毎日7000〜8000歩は歩くとよいでしょう。自宅から職場などの目的地まで、なるべく早足で歩くのをおすすめします。駅などにあるエスカレーターやエレベーターは使わず、なるべく階段で上り下りします。もし足が痛い場合は手すりを持ちましょう。

自宅では、長時間座ったままでいることのないよう、ときどき立ち上がって体を動かすようにしましょう。また、車は便利ですが体を動かさなくなるので、車での移動はなるべく避けて、歩ける距離は歩くようにします。自転車を活用するのもよいでしょう。

写真:PIXTA

写真:PIXTA

体を動かす時間の目安

年齢ごとの身体活動量の基準をご紹介します。65歳以上では、強度を問わない身体活動を毎日40分ほど行いましょう。たとえば、ラジオ体操10分、徒歩20分、植物の水やり10分などです。18〜64歳では、3メッツ*以上の強度の身体活動を毎日60分行うとよいでしょう。3メッツに相当するのは、たとえば軽い筋肉トレーニング、ウォーキング、掃除機をかける、洗車する、子どもと遊ぶなどの活動です。18歳未満の場合は、楽しく体を動かすことを毎日60分以上行うことが望ましいとされています。

ただし、これらは健康な方に向けた基準ですから、健康診断などで異常が見つかっている方は自治体や主治医の指導を受け、安全に留意して運動を行うようにしてください。

*メッツ:運動強度の単位で、安静時を1としたときと比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示したもの。

フレイルの予防

要介護にならないためには、フレイル(加齢に伴い、運動機能・認知機能などの予備能力が低下してストレスに対する回復力が低下した状態)を予防することが重要です。以下の点に1つでも該当する場合、注意が必要です。

  • 筋力が弱くなった(例:重い荷物を運びにくくなった)
  • 歩く速度が低下した(例:横断歩道を青信号で渡り切るのが難しくなった)
  • 体重が減少した(食事療法をしていないのに1年間で体重が4〜5kg減少した)
  • 以前より疲れやすくなった
  • 活動レベルが低下した(例:出掛けるのが億劫になった、家に閉じこもっている)

次に、フレイルを予防するための方法を紹介します。

  • 十分なたんぱく質・ビタミン・ミネラルを含む食事を取る
  • 定期的なストレッチ・ウォーキングなどの運動を行う
  • 体の活動量や認知機能を定期的にチェックする
  • 感染症の予防を行う(ワクチン接種など)
  • 手術を行った場合は栄養管理やリハビリテーションなど適切なケアを行う
  • 内服薬の種類が多い(目安は6種類以上)場合は主治医に相談し、減薬を試みる

新しいことに挑戦し続けることの大切さ

体を健康に保つことと同時に、精神的な健康を維持することも重要です。自分の体と頭を使い、新しいことに挑戦し続けることが大切ではないでしょうか。たとえば私は原土井病院理事長としての役目がありますので、毎日その仕事をする。そのうえで、「いいな」と思ったことにはどんどん挑戦するようにしています。仕事などを通じて人と関わり合うことは、社会性の維持にもつながります。

※お話の続きは、こちらの記事をご覧ください。

 

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