新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)に関して国内の感染状況は落ち着き、徐々に日常が戻りつつあります。ただ、本格的な寒さが訪れる冬には第6波が懸念されており、新型コロナワクチンを2回接種した方を対象に3回目のブースター接種が計画されています。こちらのページに続き、本ページでは新型コロナワクチンの副反応で起こり得る皮膚症状について大塚 篤司先生(近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授)にお話を伺います。
※本記事は、日本慢性期医療協会との連載企画「慢性期ドットコム」によるものです。
新型コロナワクチンのうちmRNAワクチンは、接種後に副反応として何らかの皮膚症状が現れることがあります。どのような症状かというと、接種して数日~1週間後に接種した腕のかゆみや痛み、腫れ、赤み、熱感などが現れます。いわゆる“モデルナアーム”はこのような皮膚症状を表した言葉です。これらの皮膚症状はT細胞という免疫に関わる細胞が反応して起こると考えられており、健康に害を及ぼすものではありません。通常は数日ほどで自然に軽快していきます。
発疹(目で見える皮膚の変化)がかゆい場合には冷やすことで改善する可能性があり、抗ヒスタミン薬やステロイド外用薬を塗ることで症状を抑えられることがあります。しかし症状が重い場合や数日たっても自然に症状が軽快しない場合には、速やかに医療機関(皮膚科)を受診しましょう。
高齢の方の一部は新型コロナワクチン接種後1~2週間で帯状疱疹を発症することがあり、注意が必要です(若年層でも発症する可能性がある)。帯状疱疹とは水痘・帯状疱疹ウイルスが脊髄の神経部分に潜在感染し、再活性化することで起こる皮膚症状です。帯状に赤い丘疹(ぶつぶつ)や水疱(水ぶくれ)が現れ、発熱やリンパ節の腫れ、頭痛などの全身症状を伴うことがあります。
また胸や背中などの痛みが先に現れた場合、帯状疱疹と診断されず適切な治療を行えないことがあるため、注意が必要です。胸や背中などの体の一部に痛みが生じ、後から周辺に帯状の赤い丘疹や水疱が出てきた場合は帯状疱疹の可能性がありますので、皮膚科を受診してください。
ウイルスが再活性化する要因として過労や免疫機能の低下、手術などがあります。また加齢に伴い増加し、50歳以上で帯状疱疹の発症率が急激に増加します。
日本では、2016年から50歳以上の方を対象とした「帯状疱疹予防ワクチン」の接種がスタートしました。一部の自治体では費用助成があります。帯状疱疹は一度発症すると痛みが持続したり、一部麻痺が残ったりする場合があります。QOL(生活の質)にも影響を及ぼす感染症なので、50歳以上の方はなるべく早くワクチン接種を検討しましょう。免疫抑制剤を服用されている方やがんの治療を行っている方は帯状疱疹を発症しやすいため、必要に応じてワクチン接種をご検討ください。気になる点や心配なことがあれば、主治医やかかりつけ医にご相談いただくことをおすすめします。
国内では全人口の75%以上(2021年11月15日時点)がすでに新型コロナワクチンの2回接種を完了していますので、これを読んでいる方の中にも「接種部位が腫れた」「腕がかゆくなった」という経験をされた方がいらっしゃるでしょう。
新型コロナワクチン接種で皮膚症状が出た場合、次の接種をためらう気持ちが出てくるかもしれません。皮膚症状は痛みやかゆみ、見た目の問題などで不快感が生じるので、そのように感じるのは当然のことだと思います。しかしワクチンの効果を考えると2回接種することが非常に大切ですから、仮に間隔が空いていたとしても2回目をきちんと受けるようにしてください。不安な場合には主治医に相談のうえ、症状がきちんと落ち着いてから2回目を接種するなどスケジュールを調整するのがよいと思います。
アレルギーの病気、たとえばアトピー性皮膚炎や食物アレルギー、アレルギー性鼻炎、気管支喘息などで治療中の方から「新型コロナワクチンは打てますか」というご質問をいただくことがあります。これに関してお伝えしたいのは、新型コロナワクチンを打つときに注意が必要なのはポリエチレングリコール(PEG)という添加物に対するアレルギーを持つ方です。PEGは飲み薬や塗り薬、目薬などにも含まれている添加物で、医薬品以外にもヘアケア用品や歯磨き粉、化粧品などにも含まれていることがあります。
PEG以外のものに何かしらのアレルギーの病気がある方は主治医に相談のうえ、新型コロナワクチンの接種を検討してください。
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