新型コロナウイルス感染症特設サイトはこちら
連載慢性期医療の今、未来

「元気100倶楽部」の活動に込める思い―人生100年時代を健やかに

公開日

2021年06月14日

更新日

2021年06月14日

更新履歴
閉じる

2021年06月14日

掲載しました。
5a234e0a77

福岡県にある原土井病院理事長の原寛先生は、89歳になった現在も自院の経営とともに、健やかで生きがいを感じられる生き方を広める「元気100倶楽部」の活動に尽力しています。「生活習慣病」という言葉を提唱し、健康診断や人間ドックの領域の発展に貢献した日野原重明氏*の教えを受け継ぐ元気100倶楽部、その活動に込める思いやこれまでのあゆみや思いを伺います。

*日野原重明氏:健康診断や人間ドックの領域の発展に貢献した医師・医学博士。予防医学や終末期医療の充実などに尽力し、医学の発展に貢献した功績により2005年に文化勲章を受賞。100歳を超えても現役医師として活躍した。

※元気100倶楽部の詳細はこちらをご覧ください。

※本記事は、日本慢性期医療協会との連載企画「慢性期ドットコム」によるものです。

地域のニーズに応じて変化してきた原土井病院

原家には医師が多く、福岡県内でいくつかの病院を経営していました。私は元々建築の道に進もうと考えていたのですが、兄の新病院建設に駆り出され、建設工事や資金繰り、役所の手続きに至るまで関わり、それがきっかけで医療の道へ進みました。

原土井病院を開設したのは1967年、自身が35歳のときです。当初は精神科病院でしたが、高齢化の進展に伴う人口構造の変化を予見し、高齢者医療へ方向を転換。地域への貢献をモットーに掲げ、デイケアやリハビリテーション棟の開設など、ニーズに応えられる病院づくりに励んできました。

原土井病院内の一角

原土井病院内の一角

日野原先生との出会いと自身の病気が活動の契機に

元気100倶楽部の活動に至るきっかけとなったのは、故 日野原重明先生との出会いと、自身の病気です。

1989年、聖路加国際病院の院長(当時)だった日野原先生から「音楽療法の研究会を貴院で行いたい」と連絡がありました。当時、原土井病院では認知症に対する治療の一環として音楽療法を行っていたのです。日野原先生は医療業界でとても有名な方で、私にとってはまさに“雲の上の存在”。そのような方から研究会の申し出をいただき、たいへん驚きましたね。この出会いがきっかけとなり、日野原先生には看護教育について助言をいただくなど、その後も長く交流が続きました。

一方、私は40歳の頃から肝炎による倦怠(けんたい)感に悩まされていました。アルコールの摂取と喫煙はやめましたが、病院が発展していく途中で治療に専念する気にはなれず、ひた走りました。17年後、C型肝炎であることが判明。インターフェロン治療(生体がウイルスに感染した際に細胞が反応して作られるタンパク質を薬として体内に入れる治療)を受け、3年ほどかけて治癒に至りました。ところがそこから7年後の1999年に肝臓がんが見つかったのです。幸い転移はなく、手術で切除することができました。このような病を患う経験を通して、「健康」について考えるようになりました。

その翌年の2000年、日野原先生が「新老人の会」を発足されました。「日本はこれから急速に高齢の方が増えます。そんな人たちを何とか元気にしたいのです」という日野原先生の熱意に感銘を受け、高齢者医療に長年携わるなかで同じような思いを抱き、また自分自身の病気を経て健康について考えていた私は、すぐに九州で支部をつくる準備を開始。九州全域で賛同者を募り、1年後には全国第1号となる新老人の会九州支部が誕生したのです。それから九州支部代表として元気で自立した「新老人」を増やす活動を続け、九州各県に支部が誕生。元気100倶楽部の前身となる福岡支部はその後も勢力的に活動を行ってきました。

元気100倶楽部はどのような活動をしているのか

元気100倶楽部では、会員の自己啓発・健康増進や会員相互の交流を図るためにさまざまな活動を行っています。奇数月には定例会を、偶数月には学びや運動を皆で楽しみながら行う「健康元気の会」を開催しています。また、医療従事者の育成のために、診察・看護の練習に協力するVP(ボランティア・ペイシェント)の活動も。VPは医学生や看護学生、研修医などの問診を受ける患者役をしていただくボランティアです。VPの活動は、当院や、隣接する原看護専門学校、九州大学医学部などで行われています。

原土井病院で提供する「メディカルフィットネス」

原土井病院における健康増進の取り組みの1つが、「メディカルフィットネスあおば」の運営です。疾病の治療のために運動療法が必要になった方と、健康維持・増進を目的として運動を行う方のどちらにも対応しています。エアロバイク、トレッドミル、エリプティカルなどを使う有酸素運動、トレーニングマシンやダンベルを用いた筋力トレーニング、パワープレートを使用したストレッチ、腰痛予防体操などのレッスンも実施しています(新型コロナウイルス感染症の影響により一部のサービスを制限中)。

※メディカルフィットネスあおばの詳細はこちらをご覧ください。

原土井病院内のメディカルフィットネスあおば

原土井病院内のメディカルフィットネスあおば

健康長寿を目指すコホート研究

現在は九州大学と共に、病気やフレイルになる前から先手を打って対策し健康長寿を目指すためのコホート研究を計画しています。具体的には、ADL(日常生活動作)が自立している住民を対象に身体能力測定や血液検査を含む調査を行い、ミトコンドリア*DNAやそのほかの血液マーカーが健康長寿やフレイルの予測因子となりうるのかを確かめ、食事内容や運動習慣がミトコンドリアDNAに与える影響を調べます。

これまでの食事療法の常識から脱却し、エビデンスに基づいた食事療法の実践の検討や、フレイル対策の効果を数値化できる指標の研究を進めていく予定です。

*ミトコンドリア:酸素を用いて体に必要なエネルギーを作る細胞内小器官

元気100倶楽部の活動に込める思い

私は、日本が戦後の非常に貧しい時代からGDPをどんどん伸ばし、現在のような先進国になる経緯を見てきました。平均寿命についても戦後は50歳代だったのに、今や世界一の長寿国に。日本、そして世界で今後さらに平均寿命が延伸すれば、世界各国で人々は「いかに健康で長生きするか」というテーマに直面するでしょう。そのようなときに手本を示せる日本でありたいと思います。そのために私たちは元気100倶楽部の活動を通じて、人生100年時代を健康に楽しく送る人々を増やしたいのです。

MedicalNote × 慢性期.com

慢性期医療の今、未来の連載一覧