新型コロナウイルス感染症特設サイトはこちら
連載慢性期医療の今、未来

病院における新型コロナ対応の実践例――「濃厚接触ゼロ」の取り組み

公開日

2021年03月04日

更新日

2021年03月04日

更新履歴
閉じる

2021年03月04日

掲載しました。
64e0cddb2f

この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年03月04日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

世界中で混乱を巻き起こしている新型コロナウイルス感染症。全国で数多くの病院や介護施設などを運営する平成医療福祉グループでは、対策本部を設置し一元的かつ迅速な対応を進めるとともに、ポストコロナ(新型コロナウイルス感染症の治療後)の患者さんを積極的に受け入れています。「濃厚接触ゼロ」を目指すその取り組みを含めて、実際に病院でどのような対応をされているのか、平成医療福祉グループ副代表の武久敬洋先生にお話を伺いました。

※この記事は、日本慢性期医療協会との連載企画「慢性期ドットコム(https://manseiki.com/)」によるものです。

基本の感染対策とポスターによる注意喚起

施設の感染対策としては、出入口における消毒剤やサーマルカメラの設置、マスク着用の徹底、ポスターを掲示して感染対策への協力の呼びかけなどを行っています。出入口で発熱など異常が見られる場合には、院内を通らずに発熱外来へ誘導できるようにしました。

平成医療福祉グループが作成したポスターの一例
平成医療福祉グループが作成したポスターの一例

「濃厚接触ゼロ」の取り組み

院内で感染対策を徹底することは当然ですが、それでも感染者をゼロにするのは容易ではありません。そのため、感染者が出た場合にクラスターを引き起こさず周囲への影響が最小限で済むように、看護師や介護職、リハビリテーション(以下、リハビリ)を行うスタッフについては病棟をまたぐ人員配置を行わない、食事介助時には必ずフェイスシールドを付ける、リハビリを行う際には必ずグローブを装着するなど、「濃厚接触ゼロ」を目指した体制をとっています。また、グループの全職員に持ち運び用の手指消毒剤(アルコールジェル)を配布し、いつも携帯するよう呼びかけています。

平成医療福祉グループが作成したポスターの一例②
平成医療福祉グループが作成したポスターの一例

入院する患者さんへお願いしていること

感染者の早期発見やクラスター抑制のため、新規の入院患者さんには全例、入院時PCR検査を実施しています。この検査に伴う費用が患者さんに請求されることはありません。入院時に新型コロナを疑う症状や検査での異常がある場合、結果が出るまでのおよそ1〜2日間はPPE(個人用防護具)を装着したスタッフが対応し、陰性が確認されたら通常の入院スペースに移動していただく形をとっています。一方、そのような症状や検査異常がない場合には通常どおりの流れで入院していただくことが可能です。なお、PCR検査で陽性と判明した場合には、新型コロナウイルス感染症の診療が可能な医療機関をご紹介し、転院となります。

入院後については、食事中の感染リスクを考慮し、新しく入院された方は14日間自室で食事をしていただくようお願いをしています。

オンライン/電話診療と面会制限

2020年の初め頃から患者さんのオンライン診療と電話診療にも対応しており、特に電話診療は需要が高いようです。

感染対策のために基本的に外部からの面会を制限していますが、世田谷記念病院では感染対策を施した専用の面会室を設置しました。部屋の真ん中にアクリル板を置き空間を完全に分けることで、飛沫感染や空気感染のリスクを抑えながら入院中の患者さんと訪問者が直接顔を合わせられるようにしています。また、オンライン面会のシステムを使ってご家族のお顔を見てお話することも可能です。オンライン面会は予約制で、現在は予約の枠が埋まりつつあるほどの反響があります。

世田谷記念病院の専用面会室
世田谷記念病院の専用面会室

グループ全体を管轄し迅速に対応する「対策本部」の設置

全国に多数の病院・介護施設などを有するため、感染制御や情報管理を一元的かつ迅速に行うべく、新型コロナに対する対策本部を設置しています。

具体的には、全ての施設で標準的な感染対策が行えるよう情報を共有し、各施設の補助金の申請状況を把握したり、PCR検査機器やPPEの購入に際して必要な情報を集めたりします。また、いずれかの施設で感染者や濃厚接触が疑われるケースが発生した場合、漏れなく対策本部に報告が届くよう管理体制を整えました。介護施設など感染制御に関して直接介入する必要が生じた場合には、対策本部の1名がその日のうちに現地に入り素早く対応しています。

対策本部は、私を含めた医師3名と、看護部長、リハビリテーション部長、事務担当者、介護施設担当者など多職種で構成されており(2021年2月時点)、昨年からの活動をとおして新型コロナ対応の経験が蓄積されてきました。

収益面での影響について

新型コロナウイルス感染症の影響により、全国の病院が経済的なダメージを受けました。

平成医療福祉グループは急性期病院メインではないため、大学病院などと比して収益面での影響は大きくありませんが、グループ全体でこれまでに6億円ほどの損害が出ています(2021年2月時点)。グループ全体の傾向として、急性期医療の度合いが高いほど、都市部であるほど収益面での影響は大きかったです。たとえば、徳島や山口の病院は大幅な影響はありませんでしたが、一方で東京、神奈川、千葉、大阪、兵庫などの病院は比較的大きな影響を受けました。収益面の影響が顕著に現れた時期は、1回目の緊急事態宣言が出ていた2020年4〜5月で、その背景には入院の稼働率が大きく下がったことがあります。しかし、8〜9月にはほとんどの病院で平年並みに戻りました。

慢性期医療を担う病院の使命

新型コロナの治療後の患者さん、特に高齢の方の場合は、低栄養や筋力低下など廃用症候群(長期間体を動かさないことにより起こるさまざまな障害の総称)になっている可能性が高く、なるべく早く元の生活に戻れるようサポートすることが重要です。

急性期病院の病床が逼迫している今この状況において、ポストコロナの患者さんを積極的に受け入れ地域医療に貢献することこそ、私たち回復期・慢性期病院の使命です。そのため今後も私たちは、ポストコロナの患者さんを積極的に受け入れていきます。

慢性期医療の今、未来の連載一覧