子宮がんには子宮体がんと子宮頸がんがあります。子宮体がんは子宮体部(胎児が育つ場所)にでき、子宮頸がんは子宮頸部(子宮下部の腟とつながっている部分)にできます。
子宮体がんは子宮頸がんよりも患者数が多く、日本で子宮体がんと診断される年間の患者数はおよそ17,800人です(2019年時点)。なお、発症のピークは50〜60歳代といわれています。
また、子宮体がんでは検査、進行、再発、転移時などに痛みを伴うことがあり、それぞれ痛み方や対処法は異なります。
本記事では子宮体がんの痛みをテーマに、段階・タイミングごとに解説します。
子宮体がんでは病気そのものによる痛みや検査で生じる痛み、手術後の痛みなどさまざまな痛みが生じます。
子宮体がんは比較的自覚症状の現れやすいがんです。もっとも多い自覚症状は性器からの出血で、ステージ(進行度合い)I期でも約7割に出血が現れます。
そのほか、初期症状として、排尿時の痛み、性交時の痛み、下腹部の痛みなどの症状が現れることがあるため、このような症状があるときは受診を検討するとよいでしょう。特に閉経近くに月経不順となった場合は、月経なのか不正出血なのかを一般の方が区別することは困難です。そのため、気になる症状があった場合には病院の受診を検討しましょう。
子宮体がんの検査では、まず経腟超音波検査に続いて細胞診を行います。その後、結果が陽性の場合には組織診や子宮鏡検査、CT検査・MRI検査などを行うことがあります。
痛みを感じる検査は主に細胞診と組織診です。細胞診は腟から子宮内に器具を挿入して子宮内膜の組織を採取する検査で、採取する際に痛みを感じることがあります。組織診は細胞診で異常があったときに行われる検査で、疑わしい部分の子宮内膜を削ったり吸引したりして採取します。場合によっては子宮内膜の全面を採取することもあります。これらの検査には痛みが伴うため、検査は入院して行い、麻酔を使用します。
子宮体がんの治療は手術で子宮を全摘出することが基本です。手術自体には麻酔を用いるため痛みは伴いませんが、術後はしばらく傷が痛むことがあります。手術の範囲によっても術後の経過は異なりますが、起き上がりや移動時、排尿・排便の際に苦労することがあります。また、閉経前に卵巣を切除した場合はほてりや発汗、だるさのほか、頭痛や肩こりなどの更年期障害と同様の症状が現れることもあり、その場合はそれぞれの症状に対して漢方薬、ホルモン補充療法などを用いた治療が行われます。
一般的にがんが進行すると痛みがでると考えられていますが、進行度合いと痛みは一概に比例しません。しかし、がんの広がりや圧迫が原因で内臓が痛むこともあります。また、がんが骨に転移した場合には、体性痛と呼ばれる痛みが発生することもあります。
子宮体がんにはさまざまな痛みが伴いますが、その痛みに対する対処法も複数存在します。特に治療開始以降は我慢せず、医師に相談して適切に対処することが大切です。
がんの状態や治療の状況によっても異なりますが、手術に関する痛み、抗がん薬治療による痛み、そしてがんの進行によるさまざまな痛みがあります。手術や抗がん薬治療による痛みは鎮痛薬でコントロール可能です。
アスピリン、アセトアミノフェンといった鎮痛薬のほか、医療用麻薬を使用することがあります。鎮痛薬は主にがんそのものの痛みや抗がん薬投与による筋肉痛・関節痛などに用いられ、医療用麻薬もがんそのものの痛みに用いられます。医療用麻薬は飲み薬だけでなく注射、貼り薬、坐薬などさまざまなタイプが存在します。
注射や細い管で麻酔薬や神経破壊薬を注入し、痛む場所に関係のある神経を抑制・遮断する方法です。がんそのものによる痛みを和らげる際に行います。知覚神経を抑制すれば痛みを感じづらくなり、運動神経を抑制すれば筋肉の緊張が和らぎます。さらに、交感神経を抑制すると血行が改善して痛みが和らぎます。
骨などにがんが転移した場合に行う対処法です。放射線を当てたり、経皮的椎体形成術(骨セメント) を行ったりすることで痛みを抑えます。
がんそのものの症状として痛みが生じ筋肉が緊張する・こわばるなどの症状がある場合、マッサージや鍼・灸などで和らげます。痛みがある場所周辺の筋肉がこわばることで痛みを感じやすくなることがあるため、筋肉のこわばりを緩和することも大切です。
マッサージは、体の末端から中心に向かって行います。心地よいと思える力加減で優しくなでるようにマッサージを行うとよいでしょう。
痛みから気をそらしたり、心のケアをしたりすることで痛みが楽になることもあります。散歩をしたり、好きな音楽を聴いたり、看護師などと話をしたりすることで気分転換をするとよいでしょう。
緩和ケアとは病気に伴う心と体の痛みを和らげることです。病院によっては、がんと診断されたときから行うことが可能です。
治療や食生活へのアドバイス、心のケアなどが可能なので通常の治療と組み合わせて取り組むとよいでしょう。
子宮体がんでは検査時、治療中、治療後と、さまざまな段階で痛みを伴うことがあります。痛みがあると仕事や日常生活を送ることが難しくなるほか、ストレスによる不調が生じてしまうことも懸念されます。
特に、治療やがんそのものによる痛みは長期的に続く可能性もあるため、痛みを和らげるためにさまざまな対処法が行われています。
痛みを感じたときは我慢せず、まずは担当医に相談するようにしましょう。
塚﨑 雄大 先生の所属医療機関
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