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60歳から患者数が増加する“心房細動”とは~原因・症状・治療について詳しく解説~

60歳から患者数が増加する“心房細動”とは~原因・症状・治療について詳しく解説~
藤田 勉 先生

医療法人 札幌ハートセンター 理事長 兼 CMO

藤田 勉 先生

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心房細動(AF)とは不整脈の病態の1つであり、心臓の心房という部分が不規則に震え、けいれんするような状態を指します。患者数は60歳以上になると急速に増加し、高齢化とともにその数は年々増えているといわれます。

一般的に3人に1人は無症状であるといわれますが、脈の乱れや動悸を自覚する方が多く、ときにふらつき、失神といった症状が見られることもあります。心房細動は必ずしも命に直結する病気ではありません。しかし、適切な治療を行わないと脳梗塞(のうこうそく)心不全につながり、最悪の場合は命に関わる状態となる可能性もあるため、早めの受診・治療が重要となります。

本記事では、心房細動の原因や症状、治療などについて詳しく解説します。

心房細動とは、心房が小刻みにけいれんするような状態を指します。そもそも心臓は、心房(右房、左房)、心室(右室、左室)の4つの部屋に分かれており、これらは、外側は筋肉、内側は空洞で中には血液がたまっています。

正常な心臓 洞結節 イラスト

正常な心臓の場合(上図を参照)、通常右心房にある洞結節(どうけっせつ)という部分から外側にある筋肉に弱い電気を送ることで右心房と左心房を収縮させ、その後右心房の下部にある房室結節という部分を中継して心臓全体に電気を伝えます。このような仕組みによって筋肉の収縮がコントロールされ、内側にある血液を全身に送り届けています。

しかし、なんらかの原因によって洞結節以外から電気が送られるようになったり、電気を伝える心房の筋肉が変質したりすると、電気の流れに誤作動が起こり、心房細動が引き起こされます。

電気の流れに誤作動が起き、心房細動が発症する原因として、加齢、心臓に負担がかかる病気(高血圧心臓弁膜症など)、自立神経に関わる病気(甲状腺機能亢進症など)のほか、喫煙や過度な飲酒、肥満などの生活習慣の関与が挙げられます。

本来、人間は胎児の頃には洞結節以外からも心臓に電気が流れていますが、生まれる前に洞結節以外はふたを閉じて活動を停止します。しかし、加齢や甲状腺機能亢進症が原因で塞がれたふたが外れることがあり、その結果、通常流れない場所から電気が流れることで心房細動が発症するとされています。また、加齢は電気の通り道となる心房の筋肉を変質させるため、電気の流れの誤作動につながる可能性があります。そのほか、喫煙や過度な飲酒は、心房細動をはじめとするさまざまな病気の発症を高める可能性があることが報告されているので注意が必要です。

心房細動の症状は数時間~1週間程度で自然に治まる“発作性心房細動”から始まり、進行すると発作を繰り返すことで7日以上持続する“持続性心房細動”となります。さらにその後は“慢性(永続性)心房細動”に移行するという経過をたどります。発作性心房細動の場合は通常自然に治まりますが、慢性(永続性)心房細動に移行すると正常な状態に戻ることはなく、持続時間が長くなればなるほど自然な回復の可能性も低くなるとされています。

また、3人に1人は自覚症状がなく、特に持続性心房細動の場合は脈の異常に慣れてしまい、症状に気付かないことがあるといわれています。一方で、症状がある場合は脈の乱れや動悸、息苦しさ、ふらつき、胸の痛みなどが現れることがあり、場合によっては失神の原因となることもあります。

心房細動が起こると血液がよどんで血栓ができやすくなるため、血栓が血管を塞いでしまうと塞栓(そくせん)症を起こします。たとえば、脳の血管が塞がった場合は脳梗塞を引き起こすこともあるため、血栓を予防するために心房細動の治療の一環として薬を飲む必要があるとされています。

心房細動の診断は、心電図によって行われます。心房細動と診断された場合、症状などの状況によって薬剤療法や非薬剤療法の中から適切な治療法が選ばれます。心房細動が出現している人に対する薬剤療法には心拍数を抑える薬と心臓を正常なリズムに戻す薬(抗不整脈薬)があります。また、抗不整脈薬は心房細動の予防にも用いられます。

一方、薬で改善されない場合は電気ショックが行われることもあります。さらに、心房細動では脈が遅くなることもあり、この場合はペースメーカーの埋め込みが検討されます。そのほか、根治的な治療法として、心房細動の原因となる部分を焼くカテーテルアブレーション治療という選択肢もあります。

心房細動は加齢によって引き起こされる不整脈で心臓に持病がなくても発症する可能性がある病気です。治療をしなくても自然に治る場合もあれば、脳梗塞など命に関わる合併症を生じるケースもあるため、状況に合わせて適切な治療を受ける必要があります。そのため、脈の乱れや動悸、胸の痛みを感じるなど、気になる症状がある場合はかかりつけ医や循環器内科の受診を検討しましょう。

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