急性心筋梗塞は心臓の冠動脈と呼ばれる血管がつまることで心筋(心臓の筋肉)が壊死してしまう病気で、持続する強い胸の痛みやしめつけ感を主な症状とします。
危険なイメージが強いですが、早期に治療を始めるほど助かる確率が上がる病気です。それでは実際の急性心筋梗塞の予後(見通し)はどのようなものなのでしょうか。
心筋梗塞とは、心臓に血液を供給する“冠動脈”と呼ばれる血管が閉塞し、心筋が壊死してしまう病気のことです。一般的に“心筋梗塞”というと、突然の胸の痛みや呼吸困難を症状とする“急性心筋梗塞”を指します。
心臓は全身の臓器に絶えず血液を供給する臓器であるため、重症であれば心停止にいたります。一般的に、急性心筋梗塞は壊死を起こした心筋がうごかなくなるために心不全を起こしたり、壊死を起こした心筋からの不整脈や心破裂を起こしたりすることがあります。
しかし、危険な病気ではあるものの、早期に治療を開始すれば助かる確率が上がる病気であり、また発症前に特徴的な前兆が見られることもあります。そのため、前兆や初期対応を知っておき、自分自身の発症を予防することや、周りで急性心筋梗塞の発作が起きた人がいるときに適切な対応をとれるようにしておくことが大切です。
急性心筋梗塞の予後は、適切な初期対応を施すまでの時間に大きく左右されます。発症後、病院に到着して発症から遅くとも6時間以内に治療を開始できれば、治療を受けられた人のおよそ9割は助かるといわれています。しかし、死亡する多くの人は病院に到着することなく死亡しており、急性心筋梗塞で亡くなる人の半数以上が、発症から1時間以内に集中していることが特徴的です。
これは、急性心筋梗塞による死亡の直接の原因が心室細動と呼ばれる危険な不整脈によるものだからです。心室細動が起こると心臓はポンプとしての機能を停止し、やがて心臓そのものの動きも止まってしまいます。心室細動は心筋壊死の範囲が広いほどリスクが高まるため、心筋梗塞が起こってすぐに心停止に至る人、しばらく胸の痛みが続く人など、症状の現れ方はさまざまです。
心室細動が起こると心臓のポンプ機能が停止してしまうため、直ちに自動体外式除細動器(AED)を用いた処置や、呼吸がおかしい場合は人工呼吸や心臓マッサージといった心肺蘇生法を施す必要があります。
心室細動が起こってから1分以内に心肺蘇生法が開始できれば97%は蘇生できるといわれていますが、蘇生確率は分単位で低下し、5分後には25%にまで低下するといわれています。
急性心筋梗塞で命を落とさないために気を付けることは、血圧、脂質異常症、糖尿病などをしっかり管理することです。また、急性心筋梗塞を起こさないために、リスクの高い方は冠動脈のチェックなどをCTでおこなっておくことなども重要です。もし症状が現れたらすぐに救急車を呼び、心筋梗塞に対するカテーテル治療が可能な医療機関を受診するようにしましょう。
急性心筋梗塞の多くは、狭心症と呼ばれる一過性の虚血症状(冠動脈の血流が低下すること)が前兆として現れるといわれています。急性心筋梗塞を発症してしまうと非常に危険であり、助かったとしても後遺症のリスクもあるため、まずは前兆の段階で食い止めることが大切です。
急性心筋梗塞の前兆には、以下の症状があります。
上記のような狭心症の症状が頻繁に現れる場合は、医療機関を受診してみるようにしましょう。
急性心筋梗塞の症状が現れた場合、一刻も早く心筋梗塞のカテーテル治療が可能な医療機関での治療を始める必要があります。急性心筋梗塞の症状の代表例には胸の前側に生じる強い痛みやしめつけ感、圧迫感があります。特に、症状が30分以上にわたる場合は急性心筋梗塞の症状である可能性が高いため、すぐに救急車を呼ぶようにしましょう。
急性心筋梗塞を発症し、心室細動が発生して意識を失っている場合や、すでに心停止に至っている場合、救急車が到着するまでの時間で周りの人が初期対応を施すことが生存率の上昇につながります。
急性心筋梗塞の初期対応として重要なことは、AEDの使用と心肺蘇生法(人工呼吸、心臓マッサージ)の実施です。AEDは学校や職場、商業施設などさまざまな箇所に設置されているので、日頃から設置場所を確認しておくとよいでしょう。
また、心肺蘇生法は消防署や警察署などで講習会が実施されているため、やり方を学んでおくと、いざというときの助けになります。
急性心筋梗塞は激しい胸の痛みとともに心臓の機能が障害される病気であり、初期対応が遅れると予後が悪くなります。特徴的な症状が前兆として現れることも多いため、普段から自分の体調に気を配り、発症を予防することが大切です。
また、居住地域の心筋梗塞に対するカテーテル治療をおこなっている医療機関がどこかを前もってチェックしておくことも重要です。
医療法人 札幌ハートセンター 理事長 兼 CMO
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