婦人科腫瘍の中でもっとも多いのが子宮にできるがん。子宮がんには、子宮頸がんと子宮体がんの2種類がありますが、同じ子宮にできるがんでもその病態はまったく異なっています。若い女性から高齢の女性まで幅広く発症する子宮頸がんと、閉経期以降のやや高齢の方に多い子宮体がんと、どのような違いがあるのでしょうか。今回は、子宮頸がんの特徴について飯塚病院産婦人科部長の辻岡寛先生にお話しを伺いました。
子宮頸がんは、子宮の入り口である子宮頸部に発症するがんのことで、ヒトパピローマ(HPV)というウイルスが原因で起こることが分かっています。
性交渉の経験のある方なら誰もがかかる可能性があり、またその機会が多い方に起こりやすいとされています。発症するリスクとしては、以下のようなものがあります。
子宮頸がんの特徴としては、20~30歳代の若い女性にも多いということが挙げられます。このように若い年代でかかるがんというのは、ほかの固形がん(血液がん以外のがん)ではあまりないことです。
患者数が多い乳がんの場合は30~40歳代から罹患者数が増えてきますが、20歳代で比較する際、上皮内がん(深いところまで浸潤していないがん)というレベルまで含めると子宮頸がんのほうが罹患者数は多くなります。そのため子宮頸がんに関しては、検診での早期発見が非常に重要になるのです。
子宮頸がんの発生原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)には複数の型があり、その数は100種類以上あることが分かっています。その中で実際にがんになるリスクのあるものは13~15種類、さらにリスクの高いハイリスクタイプのものが7~8種類ほどあります。
ハイリスクタイプのHPVは性交渉経験のある女性(男性)なら誰もが感染している可能性があり、生涯に一般女性が感染する確率は60%ほどであるといわれています。しかしHPVは感染したとしてもすべてががんへと移行することはないといえます。ほとんどの場合が一時的なもので、ウイルスは体内から自然に消失し病気を発生させることはありません。ただ、その中の約10%が持続感染を起こし、そのケースが前がん病変(がんの前段階)へと変化し、さらにその10~30%ががんへと移行するといわれています。
子宮頸がんを発生させるハイリスクタイプの約70%を占めているのが16型と18型というウイルスです。これらのウイルスに対してはワクチンが出ており、感染する前にワクチンを接種することでほぼ100%の予防効果があることが証明されています。
子宮頸がんは、がんになる前の“異形成”という前がん状態でがんを発見できる唯一のがんです。異形成は、軽度異形成、中等度異形成、高度異形成と3つの段階を経て上皮内がんへと進んでいきます。高度異形成や上皮内がんと診断される場合、もしくは中等度異形成でもハイリスクHPVが検出される場合には治療が必要になります。
子宮頸がんに対してもっとも一般的に行われる治療法は手術ですが、術式についてはがんの進行度や妊娠・出産の希望があるかどうかなど、患者さんの状況に応じて選択します。たとえば、異形成や上皮内がんを含めたごく初期のがんの段階で妊娠・出産を希望する場合には子宮を残す治療法である円錐切除術やレーザー蒸散術などを行います。
円錐切除術とは、子宮の入り口を円錐状にくり抜く手術です。子宮を残すことはできますが、この手術では将来妊娠やお産といったときに子宮口がゆるんで流産したり、分娩時に子宮口が開かず帝王切開になったりといったトラブルが起こることがあります。
そこでさらに子宮にやさしい治療法として行われているのが、レーザー蒸散術です。これは、子宮の入り口の上皮を5~7ミリほどレーザーで焼きつぶす治療法ですが、円錐切除と比較すると再発率が少し高くなります。そのため、飯塚病院では、妊娠する可能性のある方で、上皮内がんまでの病変にとどまっているケースに関しては、まずレーザー蒸散術による治療を行い、治療後はこまめに検診を受けてもらうということをおすすめしています。
飯塚病院 産婦人科 管理部長
飯塚病院 産婦人科 管理部長
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医日本婦人科腫瘍学会 婦人科腫瘍専門医日本内視鏡外科学会 技術認定取得者(産科婦人科領域)日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
飯塚病院産婦人科部長。ハイリスク妊娠などの周産期医療をはじめ、婦人科腫瘍では子宮頸がん・体がん・卵巣がんなど幅広い分野に精通し、内視鏡手術もこなすオールラウンダー。日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医および同学会指導医、日本婦人科腫瘍学会認定 婦人科腫瘍専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医および同機構がん治療暫定教育医。
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大変お世話になっております。 子宮頚がんのクラス3aです。 まだ月一回の検診に行っておりません。 もし、今妊娠していたら出産は可能なのでしょうか。 万が一を考えて不安になっております。 次回の検診日が先なので、 至急回答をお願い申し上げます。
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