
胃がんは初期には自覚症状のないことが多く、ご自身で気付くことは難しいかもしれません。しかし、胃がんは早期に発見されれば、治療を行うことで治癒が期待できるがんです。主なリスク要因を知り、定期的な検査を行うことで予防と早期発見につながる可能性があります。この記事では、胃がんの原因や予防、症状、治療法、費用、そして治療後の生活について解説します。
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胃がんは胃の粘膜に発生するがんであり、主なリスク要因として、ピロリ菌感染や塩分の多い食生活、喫煙などが挙げられます。ピロリ菌に感染していた場合は、胃がんの発生リスクを下げるため、主に除菌治療が行われます。
胃がんとは、胃の内側を覆う粘膜に発生するがんです。日本では減少傾向であり、国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」のデータでは、80歳代に多く発症しています。一方で、まれですが30歳代でも進行した状況で発見されることもあります。
胃がんの発生には、以下のような要因が関係すると考えられています。
これらの要因が重なることで、胃がんの発生リスクが高まるとされています。
胃がんの予防には、以下のような取り組みが重要と考えられています。
ピロリ菌の除菌治療によりピロリ菌が陰性化すると、胃がんの発生リスクを低下させることが知られています。また、症状がない場合でも定期的に検診を受けることで、胃がんを早期に発見できる可能性があります。
ピロリ菌に感染しているかどうかは、内視鏡検査や呼気検査、血液検査などで調べることができます。そして、感染が確認された場合では、一般的に2種類の抗生物質と胃酸を抑える薬を1週間程度内服する“除菌治療”が行われます。除菌治療によって、約70~90%の確率で菌を除菌することが可能です。
ピロリ菌の除菌は、将来の胃がん発生リスクを下げることが分かっています。
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胃がんは、初期にはほとんど自覚症状がないといわれています。進行するとみぞおちの痛みや胃もたれなどがみられることもありますが、症状だけで胃がんと診断することはできません。そのため、胃がんが疑われた場合は、確定診断と治療のために複数の検査が行われます。
胃がんの初期には自覚症状がほとんどないことが多いです。しかし、進行すると次のような症状がみられることがあります。
また、がんが大きくなり胃の入り口または出口付近を狭くすると、食べ物が通りにくくなり嘔吐などの症状が現れることもあります。
ただし、これらの症状は胃炎や胃潰瘍などほかの病気でもみられるため、症状だけで胃がんだと判断することはできません。症状が続く場合には、医療機関で検査を受けることが重要です。
胃がんが疑われる場合には、以下のような検査が行われます。
口または鼻から内視鏡を挿入し、胃の粘膜を直接観察する検査です。胃がんの診断において最も重要な検査とされています。疑わしい病変が見つかった場合には、組織の一部を採取(生検)して病理検査を行い、診断を確定します。
バリウムという造影剤を飲み、X線撮影によって胃の形や粘膜の異常を調べる検査です。胃がん検診などで行われることがあります。
胃がんと診断された場合には、がんの広がりやリンパ節転移、肝臓や肺などへの転移の有無を調べるため、主にCT検査が行われます。これらの結果をもとに、がんの進行度(ステージ)が評価されます。PET/CT検査は、早期の胃がんでは保険適応外です。
がんの“ステージ”は、がんの進行度を示す指標で、治療方針を決めるうえで重要になります。胃がんのステージは、以下の3つの要素の組み合わせによって、Ⅰ~IVに分類されます(TNM分類)。
がんが胃の粘膜にとどまり、転移がなければステージⅠです。リンパ節転移や遠隔転移がある場合は、ステージが上がっていきます。
生存率とは、がんと診断された方が、診断から一定期間後に生存している割合を示す指標で、治療の効果を測る目安となります。一般的に“5年生存率”が用いられます。
国立がん研究センターのデータによれば、ステージ別の5年生存率(ネット・サバイバル*)は以下のようになっています。以下の数字は、あくまで過去の統計データであり、ご自身の未来を決定するものではありません。冷静に現状を把握するための、1つの目安としてご覧ください。
国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計(2014~2015年5年生存率)より
このデータは、胃がんが早期に発見されて適切な治療を受けた場合、5年後も生存する可能性が高いということを示しています。
*ネット・サバイバル:がんが原因での死亡のみを考慮した生存率。がん以外の原因による死亡(他の病気や事故など)は除外して算出される。
胃がんが早期の段階で発見され、適切な治療が行われた場合は、高い生存率が期待できます。また、治療後も治療前と変わらない生活を送ることができる可能性があります。胃の不調を感じたときは、まず内科や消化器内科の受診を検討してみましょう。
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胃がんの治療方法は、がんの進行度(ステージ)や患者さんの体の状態などを考慮して決定されます。
がんが胃の粘膜にとどまっており、リンパ節転移の可能性が低い場合を早期胃がんと診断します。早期胃がんの場合は、内視鏡治療(内視鏡的粘膜切除)が行われることがあります。お腹を切らずに治療できるため、体への負担が比較的少ない方法です。
内視鏡治療の対象とならない場合には、胃の一部または全部と周囲のリンパ節を切除する手術が標準的な治療となります。近年では、腹腔鏡手術により、体への負担が比較的少ない方法も広く行われています。
遠隔転移がある場合や再発した場合には、薬物療法(化学療法)が中心となります。抗がん薬に加え、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などを用いた治療が行われることがあります。
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胃がんの検査や治療にかかる費用は公的制度により医療費が軽減される場合があります。
高額療養費制度とは、1か月の医療費の自己負担額が上限額を超えた場合に、その超過分が払い戻される制度です。上限額は年齢や所得に応じて定められています。具体的な医療費については、病院の相談窓口(医療ソーシャルワーカー)や、加入している健康保険組合に相談してみましょう。
胃を切除した後は、食べ物を溜めておく機能や、消化する機能が低下します。そのため、ダンピング症候群と呼ばれる動悸やめまいなどの症状が現れることがあります。手術後は“1回の食事量を減らし、食事の回数を増やす(1日5~6回)”“よく噛んでゆっくり食べる”“消化のよい食品を選ぶ”といった工夫により、ダンピング症候群を予防します。
体の状態に注意しながら、自分に合った食事のスタイルを少しずつ見つけていくことが大切です。
✍️一言アドバイス
胃がんでは、治療後に“自分の体とどう付き合っていくか”という生活の再設計が重要です。特に食事は“失う”ものではなく、“新しい楽しみ方を見つける”プロセスだと捉えることで、心の負担を減らすことができるかもしれません。
仕事への復帰時期は、治療内容や職種、年齢などによって大きく異なるため、まずは主治医によく相談しましょう。胃を切除した後は、一般的に退院後2~4週間自宅療養し、その後の復帰を目指します。
復帰に際しては、時短勤務や負担の軽い業務から始めるなど、無理のない計画を立てることが重要です。会社によっては、治療と仕事の両立を支援する制度が設けられている場合もありますので、就業規則を確認し上司や人事部に相談してみましょう。胃がん患者の復職後5年勤務継続率は比較的高く、男性で62.1%、女性で63.4%と報告されています。
A. 胃がん予防で最も効果的なのは“ピロリ菌の検査と除菌”です。それに加え、禁煙や塩分を控えた食生活が、リスクを下げるうえで重要とされています。定期的な胃がん検診も、早期発見につながります。
A. 胃がんと遺伝の関係は明らかになっていません。ピロリ菌や喫煙・塩分の多い食生活のほうが、大きな影響を与えていると考えられています。しかし、“スキルス胃がん”の一部など、まれに遺伝が強く関与するタイプの胃がんがあります。
A. いいえ、不要にはなりません。除菌によって胃がんのリスクは下がりますが、除菌後も胃がんになる可能性があります。特に、除菌した時点である程度、胃の粘膜が薄くなっている場合は注意が必要です。ピロリ菌を除菌した後も、定期的な内視鏡検査を受けることをおすすめします。
A. スキルス胃がんは、胃の壁を硬くし、厚くしながら広がっていくタイプの胃がんです。胃粘膜の表面に変化が現れにくいため発見が難しく、進行が早いことが特徴です。
ここまで、胃がんの症状から原因、検査、治療、そして治療後の生活に至るまで解説してきました。胃がんは、早期に発見し治療を開始することが大切です。胃がん検診で陽性の判定が出たときや少しでも気になる症状があるときは、近くの内科や消化器内科を受診しましょう。
九州がんセンター 消化管外科 部長
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