毎年流行するインフルエンザは、年齢に応じた接種量や接種回数の予防接種を受けることによって、免疫が得られます。今回は、予防接種を受けるにあたっての注意点などについて、国立成育医療研究センター感染防御対策室の宇田和宏先生に詳しくお話を伺いました。
13歳以上の方でも、免疫不全の方や免疫抑制剤を使用している方は医師の判断で2回接種が可能です。
インフルエンザの予防接種は、十分な効果を出すために、ガイドライン*の推奨間隔である3〜4週間で2回目のワクチンを打つ場合がほとんどです。
インフルエンザワクチンの添付文書には、13歳未満の接種間隔は2〜4週間と記載されています。
医師は、基本的に3週間以上4週間未満で2回目のワクチンを打ちます。3週間以内に2回目のワクチンを打つと、十分な免疫をつくることができない可能性があるからです。
12歳以下の方は、3〜4週間の間隔を空けて2回目の予防接種を受けましょう。
ガイドライン:その病気の診断方法や治療方針を定めた指針
ワクチンの量は、以下のように一律で決められています。
体格が実年齢以上に発達していたとしても、量を増やすことはありません。
免疫不全の方や免疫抑制剤を使用している方は、医師の判断で2回接種も可能
インフルエンザワクチンの副反応は、軽度であることがほとんどです。
副反応には、以下の症状があります。
アナフィラキシー:アレルギー反応のうち、呼吸困難などの症状が急速に全身に生じ命にかかわる状態
予防接種を打った箇所の局所的な腫れはよくみられますが、通常2〜3日で改善します。腫れやすい方から全く腫れない方までおり、腫れ方には個人差があります。
揉んだり、触ったりすると腫れがひどくなることがあるので、あまり触らない方がよいです。
市販薬なども塗らなくてよいです。特別な対応は不要です。腫れが強く熱を持っているようであれば、冷やすと楽になることもあります。
副反応による発熱は、37度〜39度と幅があります。
発熱したとしても、翌日には下がることがほとんどです。高熱が数日間続くような場合は他の病気が原因の可能性があるため受診してください。
インフルエンザワクチンの副反応で、ひどい頭痛になることは少ないです。
激しい頭痛の場合は、ワクチンは関係がなく、他の病気が原因の可能性があるため受診してください。
インフルエンザワクチンの添付文書には、「10万接種あたり1例」という極めて稀な割合ですが、アナフィラキシー*が起こる可能性が記載されています。
国立成育医療研究センターでは、万が一起こったとしてもすぐに対応できるよう、念のためにワクチン接種後30分間は院内にいてもらうようにしています。
アナフィラキシー:アレルギー反応のうち、呼吸困難などの症状が急速に全身に生じ命にかかわる状態
予防接種後の副反応は通常接種後2日以内にあらわれて数日程度で改善することが多いです。明確な基準はないですが、3日以上何らかの症状が改善せずに持続する場合は、副反応ではないかもしれません。別の病気の可能性を考慮して受診したほうがよいです。
インフルエンザの流行期は通常12月〜3月です。ワクチンを接種してから免疫がつくまでに数週間かかりますので、一般的には流行期が始まる前の10月末〜11月初旬から12月までにワクチン接種を行うことがのぞましいといえます。
2017年10月頃にはインフルエンザワクチンが不足していましたが、徐々に解消してきています。
2017年のワクチン不足の原因は、その製造過程でインフルエンザワクチン株*が思っていたよりも増えなかったためです。
インフルエンザワクチンには、流行しやすいA型のうち2つ、B型のうち2つの計4種類の型が入っています。
4種類の型は、WHO(世界保健機構)が選んだその年に流行するであろうウイルス型を参考にして、厚生労働省から依頼を受けた国立感染症研究所が「インフルエンザワクチン株選定のための検討会議」で検討します。その後、これに基づいて厚生労働省が決定しています。その後、その年のワクチンが製造されます。
しかし、2017年は予測して選定したワクチン株が思ったよりも発育が悪く、必要量に達することができませんでした。製造元が、より増殖効率のよいワクチン株で作り直した結果、例年よりワクチンの製造が遅れ、市場に出てくる時期が遅れたということです。
ワクチン株:ワクチンのもととなるウイルス
ワクチンには、「不活化ワクチン*1」と「生ワクチン*2」の2種類があります。
不活化ワクチンは1週間後、生ワクチンは4週間後に接種することが予防接種法で決められています。
他のワクチンも打ちたい場合、インフルエンザワクチンは不活化ワクチンのため、インフルエンザの予防接種後1週間あければ、接種することができます。月曜日にインフルエンザワクチンを打ったとして、次の月曜日から他のワクチンを打てます。
1 不活化ワクチン…毒性や感染力を失わせた病原体を打つもの。(例)インフルエンザワクチン、日本脳炎ワクチン、肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチン、四種混合ワクチンなど
2 生ワクチン…弱らせた病原体そのものを打つもの。(例)水痘ワクチン、麻しん風しんワクチン、おたふくワクチンなど
基本的に不活化ワクチン、生ワクチンを問わず全ての種類のワクチンを同時に接種して差し支えありません。
赤ちゃんの場合、受けるべきワクチンがたくさんあります。何種類かのワクチンを同時に打って、定められた間隔を空けて、また同時に何種類かを打つことが可能です。
インフルエンザワクチンの中には、非常に微量の卵由来成分*が含まれています。
つなぎで卵が使われている料理や、加熱した卵なら食べられるという方は、インフルエンザワクチンを打っても差し支えありません。
ただ、卵を完全に除去している患者さんは医療機関で相談いただくのがよいと思います。
アナフィラキシー発症に必要な卵に対する抗原量は600 ng(ナノグラム)/dose以上とされているが、日本国内のインフルエンザワクチンに含まれている量は1〜10 ng/ml×0.5 mlであり、理論的には卵アレルギーの患者さんに接種しても問題ないとされている。[注]アメリカのガイドラインには、卵アレルギーがあっても理論的に打ってよいと記載されているが、日本ではまだその段階まで容認されていない。
注:(1)BMJ2009, 339:b3680
注 : (2)基礎疾患をもつ人への予防接種 日本小児アレルギー学会誌(0914-2649), 2010,24巻2号 Page193-202
以下の方は、インフルエンザの予防接種を受ける前に医師とよく相談してください。
普段しているレベルの動きで、常識の範囲内であれば問題ありません。
子どもの場合、普段と同じ程度の運動や遊びであれば問題はなく、お風呂も普段通り入って構いません。
1回3,000〜4,000円台の価格設定の医療機関が多いです。保険は効かないため自費での接種になります。自治体によっては補助があるため、お住まいの市区町村のホームページなどをご確認ください。
繰り返しになりますが、インフルエンザの予防接種は決められた量、回数を適切な時期に打つことで免疫を作ることができます。
流行するウイルスの型は毎年少しずつ変わるため、毎シーズン予防接種を打ちましょう。
予防接種の効果についてはこちら『インフルエンザ予防接種の効果』をご覧ください。
東京都立小児総合医療センター 感染症科
国立成育医療研究センター 教育センター センター長/臨床研究センター 副センター長/臨床研究教育部長(併任)/血液内科診療部長(併任)
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