インタビュー

インフルエンザの検査とは 検査なしでも診断書はもらえる

インフルエンザの検査とは 検査なしでも診断書はもらえる
岩田 健太郎 先生

神戸大学大学院医学研究科 感染治療学分野 教授

岩田 健太郎 先生

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この記事の最終更新は2015年05月29日です。

「自分はインフルエンザなの?」と心配になったとき、ついつい検査の結果が気になってしまいます。しかし、検査がインフルエンザと診断するわけではなく、診断をするのはあくまでも医師です。インフルエンザの検査について、診断書について、それぞれどのように考えればよいのかを、神戸大学感染治療学教授の岩田健太郎先生にお聞きしました。

インフルエンザの検査は、鼻咽頭(びいんとう)ぬぐい液を採取して感染の有無を調べます。鼻咽頭ぬぐい液は鼻から棒を入れて鼻咽頭をぬぐわなければ取れません。また、インフルエンザウイルス検査は、発症して12時間程度経過し、ウイルスの数が増えた後に検査するのが最適だといわれており、それ以前では正しい検査結果が出ないこともあります。最近は外来、あるいはベッドサイドなどで10~15分以内に迅速かつ簡便に病原診断が可能なインフルエンザ抗原検出キットが利用され、インフルエンザの検査診断が容易に行えるようになりました。

しかし、インフルエンザの検査は、鼻に棒を入れる必要のあるつらい検査でもあります。患者さんがつらいことはよっぽどのことがない限りしないというのが医療の原則で、それにもかかわらず検査をする意味がある場合というのは、それによって治療や行動が変わったりするときです。

このため、発症後48時間を超えていて、インフルエンザ検査の結果がどうであれ、結局抗インフルエンザ薬を使わない場合、検査の意味はありません。また、漢方薬を出すと決めている場合も、検査をする意味はありません。

また、たとえば「すでに教室内で10人がインフルエンザにかかっていて、私が11人目です」と言う方が、高熱を出して病院に来たとします。その方は、検査前確率がきわめて高くなります。その場合には、たとえ迅速キットの検査が陰性だったとしてもインフルエンザと診断することになるでしょう。そのようなときにも、インフルエンザ検査をする意味はないのです。

インフルエンザに限らず一般的にも言えることですが、検査をする価値がどれくらいあるのかを、きちんと考えることが大切です。検査があるから検査をするというのはよいことではなく、検査をすることで、どうアクションが変わるのかという点が大切です。どうしても検査をして欲しいと言う患者さんには検査をすることもありますが、検査をすると決めつけるのも、逆にしないと決めつけるのもよくないのです。

インフルエンザの迅速検査(Rapid Influenza Diagnostic Test〈RIDT〉)の正確性に関しては、メタ分析がありますが、検査の感度は大体6割前後といわれています。つまり、そんなに正確な検査ではないのです。

これはよくある質問ですが、回答は「いいに決まっています」というものです。インフルエンザの検査は絶対ではありません。医師は病気の診断権を十全に与えられているので、もし検査なしでも診断できないようなら、医師とはいえません。

診断するということは診断書が書けるということです。検査しなくてもインフルエンザと診断し、それを書くことは可能です。

また、診断書だけでなく、「治癒証明書」や「かかっていない証明書」を書いて欲しいと頼まれることがあります。しかし、学校の先生などから頼まれることがある「かかっていない証明書」は、書くことが難しいものです。学校の先生も、「クラスでいじめが起きていないこと」を証明することが難しいのと同様に、非存在証明というものはそもそもすることができないのです。

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