インタビュー

狭心症の現状と診断について

福岡山王病院病院長／循環器センター長、高木病院循環器センター長、国際医療福祉大学教授

横井宏佳先生

この記事の最終更新は2016年04月24日です。

狭心症の典型的な症状は胸の痛みや圧迫感ですが、最近は症状の出ない狭心症も増加傾向にあります。また、高齢者に多いイメージの狭心症ですが、近年は若年層における狭心症が増えています。狭心症の現状や診断について福岡山王病院病院長兼循環器センター長の横井宏佳(よこいひろよし)先生にお話を伺いました。

狭心症の現状について

心臓を取り囲んでいる冠動脈が動脈硬化や血栓などで狭くなり、血液の流れが悪くなると、心臓の筋肉に必要な酸素や栄養がいきわたりにくくなります。このように心臓（心筋）に血液が流れにくくなった状態のことを「虚血性心疾患」といいます。

虚血性心疾患の代表的な病気は「狭心症」と「心筋梗塞」ですが、血管が完全に詰まってしまう心筋梗塞になると、心臓の停止・突然死など、危険な状態を来してしまいます。そのため、心筋梗塞になる一歩手前の「狭心症」の段階で発見し、治療を行うことがとても大切なのです。

現在、日本人の死因の第一位はがん（悪性腫瘍）ですが、がんに次いで多いのが狭心症をはじめとする心疾患です。高齢化社会を迎えた日本においては、高齢者の増加とともに、狭心症や心筋梗塞といった心疾患を患う方の数も増えています。特に、心臓や脳の疾患の中でも血管が原因となる疾患での死亡者数は、がんと変わらない程の割合を占めるようになりました。

若年層で増加する狭心症

さらに最近の傾向として懸念されることは、40歳未満の若年層の患者さんが増加していることです。小児期に患う川崎病の後遺症や家族性高脂血症などが原因で、若くして狭心症になられる方はおられますが、近年の特徴としてはそういった疾患は何もないまま発症する方が増えているのです。これは、私が20～30年診療を行ってきた中における大きな変化です。

若年層で狭心症になられる方には、あまりよくない生活習慣をされている傾向があります。

例えば、

・メタボリックシンドローム（内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさり、心臓病や脳卒中などの動脈硬化性疾患をまねきやすい病態）の兆候がある

・喫煙習慣がある

・食事は味付けが濃く・脂っぽいものを主に多く食べる

というような事例が挙げられます。

また医療機関にほとんど行かないということも、重要な特徴のひとつです。そのため突然心筋梗塞などを発症し、生死に関わる状態寸前で病院に来られるのです。少子高齢化が叫ばれる現代において、若者が狭心症を起こして命を落としてしまうという状況は非常に懸念されている問題であり、これら若者に対する対策が急がれます。

高齢者と狭心症

高齢者の方に関しては、狭心症や心筋梗塞になることで、体力の低下とともに行動範囲が制限され、日常生活における活動力が低下してしまいます。健康寿命（健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間のこと）いう観点からみると、活動力の低下を食い止めることは今後の日本における重要なテーマです。ですから、高齢者の方の狭心症や心筋梗塞を減少させることと予防対策は早急に取り組まなければない課題です。

また、最近注目されているトピックスとして「症状が出ない狭心症」があります。これは主に糖尿病の方に多くみられます。自覚症状がないため、知らない間に病状が進行していることが少なくありません。糖尿病がある方や、動脈硬化のリスクが高い方については、意識して注意する必要があるでしょう

狭心症の診断について

狭心症の典型的な症状は、胸の痛みです。動いたときに感じることもあれば、安静にしている時に胸が苦しくなることもあります。胸部の痛みや圧迫感は胸の中心に起こることが多いのですが、のどやみぞおち、あるいは肩や背中などが痛む場合もあります。

このような何らかの症状が現れて患者さんは病院に来られますが、まず一般的に行う検査は心電図検査です。しかし、心電図検査は安静時には異常がないこともあるため、運動負荷をかけたり、24時間ホルター心電図検査（胸にいくつかの電極を張り付け、そこから得られる心電図を小型の機械に記憶させる検査）を行ったりすることもあります。その他にも、心臓の超音波検査や血液検査、動脈硬化の危険因子の有無などのチェックを行い、狭心症の疑いがあるかどうか判断します。

これらの検査を行った上でさらなる検査が必要ということになれば、冠動脈CT（撮影した画像を、コンピューターを使って立体的に見て、血管の性状を見る）や心筋シンチグラフィ（心筋の血液量を画像で診断する）を行います。ただし、血管のけいれんが原因で起こるタイプの狭心症の場合は、CTや心筋シンチグラフィではわからないため、心臓カテーテル検査（手足の動脈から細い管を心臓の血管の入り口まで送り込み管の先端から造影剤を注入して、血管の細さや詰まり具合を写し出す）を行います。

狭心症の現状と診断について

狭心症の現状について

若年層で増加する狭心症

・メタボリックシンドローム（内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさり、心臓病や脳卒中などの動脈硬化性疾患をまねきやすい病態）の兆候がある

・喫煙習慣がある

・食事は味付けが濃く・脂っぽいものを主に多く食べる

高齢者と狭心症

狭心症の診断について

関連記事

狭心症とは？ 胸の痛みや苦しさに注意を――症状・検査・治療について

東京曳舟病院のカテーテル治療への取り組み――患者さんの負担が少ない治療を行うために

虚血性心疾患（狭心症・心筋梗塞）に対する治療方法は？

虚血性心疾患（狭心症・心筋梗塞）を早期発見するためにできること――原因や症状、検査法について解説

狭心症の原因や症状とは？ 冠動脈が狭くなることで起きる病気

狭心症の検査――​​カテーテルを使わない心臓の検査の方法

狭心症の治療はどのように行われるのか

狭心症に対するカテーテル治療「PCI」とは

冠動脈バイパス術（CABG）とは？適応や方法について

虚血性心疾患に対する冠動脈バイパス術――国立国際医療研究センター病院における手術の特徴

虚血性心疾患（狭心症・心筋梗塞）の種類と症状――みぞおちの上の痛みは受診を

菊名記念病院 循環器内科の取り組み――各科との連携で迅速かつ幅広い治療が可能

心筋梗塞とは？ 発症する前に早めの対策が重要――狭心症との違いやリハビリテーションについて

冠攣縮性狭心症とはどんな病気？ 原因、症状、治療について

患者さんの負担が少ない冠動脈バイパス術MICS-CABGとは？ ——メリットや特徴などを解説

労作性狭心症の原因・検査・治療法――患者さんの特徴とは

狭心症の原因・症状とは？ 胸の痛みなどが現れる虚血性心疾患のひとつ

冠攣縮性狭心症とは――原因・検査・治療について

冠動脈疾患の治療－カテーテルを用いたインターベンション治療の種類と効果

心筋梗塞や狭心症を未然に防ぐ-冠動脈のMDCT検査とは？

重度の狭心症や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の治療「低出力体外衝撃波治療」と「超音波治療」

心臓疾患の手術選択について——メリット／デメリット・安全性は？

狭心症の治療－薬物療法と手術治療が行われる

狭心症の検査と診断－検査の基本は心電図と血液検査

狭心症の症状－狭心症を疑う胸の痛みとは

狭心症の原因－加齢や不規則な生活習慣がリスクになる

心臓のリハビリテーションについて

狭心症とは ？

狭心症の症状について

狭心症の治療について

冠動脈インターベンションのこれから

PCI（Percutaneous Coronary Intervention）とは

狭心症や慢性完全閉塞症と診断されたら

急性心筋梗塞や不安定狭心症など、「急性冠症候群」の検査方法と治療法

労作性狭心症の治療法

労作性狭心症の検査

冠動脈治療の最新法 冠動脈カテーテル治療とは

冠動脈の病気と治療―カテーテル治療の推進

冠動脈バイパス手術とは 心筋梗塞・狭心症の手術

心臓カテーテル検査とはーー入院泊数や費用、リスクと適応

狭心症と診断されたときに次考えておくこと～全身の動脈硬化と最新の検査法“血流維持型汎用血管内視鏡”について～

冠攣縮性狭心症の治療には何が行われるの？～薬物療法のほかに、生活習慣を改善することも重要～

狭心症の症状～痛みの程度はどのくらい？受診の目安になる症状は？～

狭心症とはどんな病気？〜心筋梗塞との違いや、種類ごとの特徴〜

狭心症の治療法を詳しく解説〜基本となる生活管理と薬物療法の内容とは〜

狭心症のカテーテル治療−動脈硬化を削り取る「DCA」とは？

狭心症の診断で重要な心臓カテーテル検査とは？ 治療に向けたさまざまな検査を紹介

「胸が痛い」狭心症の症状とは？ 歯や肩に痛みが生じる場合も

狭心症などの虚血性心疾患に対するPCI（経皮的冠動脈形成術）とは？

心臓CTで分かること〜CTの発展から見る心臓CT特徴を医師が解説〜

心疾患とは？～種類によって異なる症状や治療、死亡率について～

虚血性心疾患の原因 ～動脈硬化の危険因子、高血圧・脂質異常症・喫煙に注意を～

虚血性心疾患の治療法 ～薬物療法やカテーテル治療、バイパス手術の方法や適応～

心疾患の種類には何があるの？〜代表的な3種類の心疾患の特徴となりやすい人について〜

大動脈弁狭窄症の症状 ～初期は無症状のことが多い？ 胸の痛み、息切れなどに要注意～

冠攣縮性狭心症とはどんな病気？～胸の痛みや不快感などの症状が起こる～

狭心症の種類別の原因とは？ 〜発作を予防する対策や発作が起きたときの対処法〜

多岐にわたる循環器疾患の治療を提供

沖縄の循環器医療を牽引する病院理事長

心臓手術ではチームワークを重視

狭心症とは？胸の痛みや苦しさに注意を――症状・検査・治療について

狭心症の原因や症状とは？冠動脈が狭くなることで起きる病気

狭心症の検査――カテーテルを使わない心臓の検査の方法

菊名記念病院循環器内科の取り組み――各科との連携で迅速かつ幅広い治療が可能

心筋梗塞とは？発症する前に早めの対策が重要――狭心症との違いやリハビリテーションについて

冠攣縮性狭心症とはどんな病気？原因、症状、治療について

狭心症の原因・症状とは？胸の痛みなどが現れる虚血性心疾患のひとつ

狭心症とは？

冠動脈治療の最新法冠動脈カテーテル治療とは

冠動脈バイパス手術とは　心筋梗塞・狭心症の手術

狭心症の診断で重要な心臓カテーテル検査とは？治療に向けたさまざまな検査を紹介

「胸が痛い」狭心症の症状とは？歯や肩に痛みが生じる場合も

虚血性心疾患の原因～動脈硬化の危険因子、高血圧・脂質異常症・喫煙に注意を～

虚血性心疾患の治療法～薬物療法やカテーテル治療、バイパス手術の方法や適応～

大動脈弁狭窄症の症状～初期は無症状のことが多い？胸の痛み、息切れなどに要注意～

狭心症の種類別の原因とは？〜発作を予防する対策や発作が起きたときの対処法〜