疾患ガイド

認知症行動障害尺度(DBD)とは? 意義とケアへの活用法

認知症行動障害尺度(DBD)とは? 意義とケアへの活用法
涌谷 陽介 先生

倉敷平成病院 認知症疾患医療センター長、脳神経内科 部長

涌谷 陽介 先生【監修】

目次
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認知症行動障害尺度は、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)を客観的に評価する指標です。この記事では、認知症行動障害尺度を用いる目的から短縮版であるDBD-13の判断の目安、ケアへの活用まで解説します。

👉 このパートをまとめると
認知症行動障害尺度はBPSDの頻度を数値化する尺度であり、介護負担とケアや環境調整などの効果の判定に用いられます。

BPSDとは、認知症に伴う幻覚や不安、攻撃的な言動、1人歩きなどの症状を指します。これらの症状は患者さんのQOL(生活の質)を低下させるだけでなく、介護者の身体的・精神的負担の要因となります。

DBDを用いる主な目的は、BPSDの頻度を数値化することで、多職種間で患者さんの状態や変化を把握し、患者さんの家族も含めて適切なケアや環境調整などの共有を行い、その効果を判定することにあります。認知症行動障害尺度は通常28の質問項目からなりますが、臨床現場では主に13項目の短縮版(DBD-13)が用いられています。DBD-13は、厚生労働省がすすめる科学的介護情報システム(LIFE)*における評価指標の1つにもなっています。

*科学的介護情報システム(LIFE):エビデンス(根拠)に基づいた介護を実施するため、介護施設などからデータを収集し、分析してフィードバックする仕組み。

認知症の診断に用いられるミニメンタルステート検査(MMSE)や改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)は認知機能(記憶力や計算能力)を評価するものであり、BPSDの評価には適しません。認知症行動障害尺度は、BPSDが具体的な行動としてどのように現れているかを測定します。

👉 このパートをまとめると
DBD-13では、13項目の行動頻度を5段階で評価します。評価では総合得点だけでなく、各質問項目の点数の推移も確認します。

DBD-13では、“同じことを何度も何度も聞く”、“昼間、寝てばかりいる”、“やたらに歩き回る”、“口汚くののしる”などの質問項目によって、BPSDのうち、主に行動症状の有無や程度を確認します。これらの行動の背景には、記憶障害や睡眠障害、不安、怒りやすさ(易怒性(いどせい))などが存在していると考えられています。

各質問項目について、介護者が患者さんの様子を振り返り、0~4点の5段階で評価します。総合得点は最高で52点となります。

  • 0点……まったくない
  • 1点……ほとんどない
  • 2点……ときどきある
  • 3点……よくある
  • 4点……常にある

介護者はDBD-13を定期的に行うことで、総合得点だけでなく、各質問項目の点数の変化を確認することも大切です。

👉 このパートをまとめると
高スコア項目に対し、ケアや環境調整を第一選択として検討します。改善がみられない場合は薬物療法が検討されることもありますが、副作用に注意が必要です。

BPSDに対する基本的なケアの1つに、患者さんの人生や性格を尊重する“パーソン・センタード・ケア”があります。患者さんのそれまでの生活習慣を取り入れたり、得意な役割を与えたりすることで自尊心を満たし、BPSDを軽減する効果が期待されます。

高い点数となった項目について、個別にケアや環境調整を行います。たとえば、睡眠障害(夜間の不眠や日中の眠気など)では、まずストレスや夜間の頻尿・痛みなどの有無を確認し、何らかの原因が見つかった場合は治療などによって改善を図ります。日中に体を動かしたり、夜間の騒音を減らしたりすることで生活リズムを整えることも重要です。1人歩きがみられる場合、患者さんにとっては意味を持った行動(会社に行く、家に帰るなど)の可能性があるため、まずは患者さんの言葉をよく聞いて対応します。また、靴や服に連絡先を書いたり、GPS機器をつけたりするなど事前の対策も必要です。

ケアや環境調整で十分な効果が得られず、患者さん本人や周囲の安全が脅かされる場合は、薬物療法が検討されます。ただし、高齢の認知症患者さんは薬による副作用が生じやすいといわれています。特に抗精神病薬は、転倒や骨折などのリスクが上昇すると考えられているため、注意が必要です。

Q. DBD-13でカットオフ値(正常・異常の境界)はありますか?

A. 明確なカットオフ値は設定されていませんが、1点以上あれば何らかの症状が存在すると考えられます。点数そのものよりも、前回の評価からの変化を追い、ケアや環境調整、薬物療法などの効果を確認することが重要です。

Q. BPSDを評価する検査は、認知症行動障害尺度だけですか?

A. BPSDの評価尺度は複数あり、認知症行動障害尺度のように介護者が直接質問用紙に記入する検査と、医師などが認知症患者さんのご家族やケアスタッフに面接する検査に大きく分けられます。後者では、NPI(Neuropsychiatric Inventory)と呼ばれる検査が一般的です。BPSDの頻度・重症度や介護負担度をより詳細に分析したい場合には、NPIが用いられています。

認知症行動障害尺度は、単なる点数化ツールではなく、BPSDの変化やケアに対する効果を確認するための重要な指標の1つです。DBD-13を正しく活用し、ケアや環境調整に反映させることで認知症患者さんのQOL向上だけでなく、介護者の身体的・精神的負担を軽減することにつながります。

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