連載リーダーの視点 その病気の治療法とは

女性がなりやすい痔とは 恥ずかしがらずに早めの受診を

公開日

2025年10月07日

更新日

2025年10月07日

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2025年10月07日

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くるめ病院 野明 俊裕先生

痔(じ)と聞くと男性の病気というイメージが強いかもしれないが、実際には女性も男性と同じくらいかかっているという。また、女性の場合は妊娠や出産、便秘などから痔に悩むことが多いものの、恥ずかしさから病院に行くことをためらう人も少なくない。

女性に多い痔について、原因や治療、予防法、病院選びのポイントなどを、くるめ病院(福岡県久留米市)の野明 俊裕(のあけ としひろ)先生に伺った。

女性がかかりやすいのはいぼ痔(痔核)と切れ痔(裂肛)

痔は日本人の3人に1人がかかっているといわれます。もちろん、女性でも多くの方が痔を患っていらっしゃいます。

女性が痔になりやすい主な原因は、便秘です。特に若い女性は無理なダイエットなどからくる便秘で困っている方が多く、排便時に力むことで肛門(こうもん)に負担がかかり、痔のリスクが高まります。

肛門に負担がかかると、「いぼ痔(痔核)」や「切れ痔(裂肛)」になりやすくなります。いぼ痔は力んだ結果、肛門周りの血管が膨らんでしまった状態で、切れ痔は硬い便や下痢などで肛門が傷ついた状態です。
いぼ痔では排便時に肛門からいぼが出てくる感覚があり、進行すると手で戻すという方が多くなります。

また、妊娠や出産も痔になりやすくなる原因の1つです。お腹が大きくなる妊娠後期にはお腹からの圧迫で肛門の血流が悪くなりますし、出産時に強くいきむことで一時的に症状が悪くなることがあります。多くの方は自然に治りますが、中には治療が必要になる場合もあります。

出産後も、母乳をあげることによる水分不足や、赤ちゃんのお世話に忙しく運動不足になりがちで、便秘になりやすい状況が続いてしまうことが多いので、注意が必要でしょう。

いぼ痔、切れ痔の治療とは

いぼ痔も切れ痔も、基本的には軟膏などが処方され、さらに便通をコントロールできるよう医師の指導を受けます。症状が強くなった場合、いぼ痔はALTA療法と呼ばれる注射による治療や痔核を切除する手術を検討し、切れ痔では肛門を広げる手術などを検討します。

なお、市販の軟膏を使って効くようなら、それでも十分対応できます。ただし症状が進み、排便のたびに肛門から出たいぼを自分で戻さないといけない状態になると、こうした方法だけでは治療が難しくなります。その段階では手術を検討する必要があるでしょう。

日常生活の工夫で痔を予防し、症状を軽くするためには

痔は、日常生活の工夫だけでもかかりにくくすることができます。くるめ病院では「痔の予防10か条」をお伝えしています。具体的には毎日お風呂に入って体を温めること、便秘や下痢を避けること、トイレで無理に力まないこと、長くトイレに座らないこと、刺激物やアルコールを控えること、そして食物繊維を多く取ることなどです。こうした日常的な注意が予防や改善に役立つでしょう。

痔の予防 10か条(くるめ病院ご提供)
 

女性のための痔の病院選び

女性の場合、痔の診察を受けることに抵抗を感じる方もいらっしゃるでしょう。そのような場合は、「診察、肛門科、女性医師」といったキーワードでインターネット検索をするとよいでしょう。また、女性の患者さんは生理を気にされる方も多いのですが、医療機関では生理中でも問題なく受診できます。特に女性の場合、生理の出血か痔の出血か判別が難しいこともありますが、医療機関はしっかりと診断できるので、気にせず受診することをおすすめします。

悪化する前に痔を専門とする病院を受診することが大切

女性にとって痔は、便秘や妊娠・出産など、生活に身近な理由から起きやすい病気です。しかし、痔は症状が軽いうちに適切な対応をすることで悪化を防ぐことができます。気になる症状があれば、早めに肛門外科を掲げる医療機関へご相談ください。

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

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