心筋梗塞は強い胸の痛みを代表的な症状とする病気で、心臓に酸素と血液を供給する血管が閉塞し、心筋が壊死してしまうことで起こります。突然発症し、死に至る人も多い病気で、日本ではがんに次いで死亡原因として多い心疾患の中心となる病気と考えられています。
心筋梗塞の主な原因は血管が狭くなる動脈硬化で、主に生活習慣の積み重ねによって進行します。それでは、どのようなことに気を付ければ、心筋梗塞を予防することができるのでしょうか。
心筋梗塞とは、心臓に酸素や血液を供給する冠動脈が何らかの原因で閉塞し、心筋細胞に酸素が届かなくなることで心筋が壊死する病気です。冠動脈が閉塞する原因のほとんどは血栓と呼ばれる血の塊で、多くは動脈の内壁が狭くなる動脈硬化に加えて最後血栓が閉塞させてしまうことで発生しますが、その他にも、血管自身がけいれんしたり、前兆なく血管が避けてしまったり、カテーテル治療・心血管手術の合併症として起こったりすることもありえます。
また、心筋梗塞は急性冠症候群の1つと捉えられています。急性冠症候群とは冠動脈が突然閉塞することによって生じる病気の総称で、心筋梗塞以外に不安定狭心症*が挙げられます。心筋梗塞・不安定狭心ともに血栓によって生じることで知られており、心臓突然死を引き起こす恐れもあります。
*不安定狭心症:血栓により突然冠動脈の血流が悪くなる重症な狭心症を指します。
心筋梗塞のもっとも代表的な原因である動脈硬化の予防には、脂質、血圧、血糖値をコントロールすることが大切です。忘れられがちですが、喫煙は心筋梗塞の重要な原因の1つであり、禁煙は必須です。なお、日本循環器学会では、会員全員が非喫煙者であることを目指しています。
心筋梗塞には、発症のリスクを高めるさまざまな要因があります。代表的なリスク因子には、以下のものがあります。
血圧が高い状態は血管を傷つけ、動脈硬化を進行させやすくなると考えられています。日本で心筋梗塞や狭心症を発症する人の約半数は、高血圧であるともいわれています。
以前は高脂血症と呼ばれていた病気で、コレステロールや中性脂肪などの血中脂質が高くなる病気です。一般的に動脈硬化は血管内の壁にコレステロールが沈着することで、血管を狭くすると説明されることが多いです。そのため、脂質異常症では動脈硬化の進行が速くなり、脳梗塞・心筋梗塞のリスクが高くなります。特に悪玉コレステロールとされているLDLコレステロールの値に注意しており、再発予防にはこの数値を低下させることが必須です。
糖尿病はインスリンの量やはたらきが低下することで、血糖が高くなる病気です。高血圧と同様に血管を傷つける原因とされており、動脈硬化が進行しやすくなります。また、高血圧や脂質異常症なども合併しやすく、心筋梗塞のリスクが積み重なりやすくなります。
前述のとおり、喫煙は重要な因子です。ヘビースモーカー(1日20本以上の喫煙など)は、心筋梗塞や狭心症のリスクがおよそ1.5倍にもなるといわれています。また、動脈硬化を進行させるほかのリスク(脂質異常症、高血圧など)も合併しやすくなります。
肥満は高血圧、糖尿病、脂質異常症など、心筋梗塞に関連するあらゆる病気のリスクを高めることが一般的に知られています。
心筋梗塞のリスクとなる高血圧や高コレステロール血症は、遺伝により発症することもあります。そのため、家族に心筋梗塞の人や、血圧やコレステロールが高めの人がいる場合は、生活習慣に問題がなくてもリスクが高くなることがあります。
心筋梗塞を予防するためには、心筋梗塞のリスク因子を理解したうえで、リスクを減らすような生活習慣を心がけることが大切です。心筋梗塞のリスクとなる病気の多くは目立った自覚症状がないため、定期的なチェックが必要になります。
食事は血圧、血糖値、血中脂質などに影響するもっとも大切な要素です。その人の性別や体格に応じた摂取エネルギー内で、糖質、脂質、たんぱく質のバランスが取れた食事を行うことが必要です。
運動は、血圧、血糖値、血中脂質を低下させ、心筋梗塞のリスクを減らすことが知られています。ハードな運動は必要なく、軽い有酸素運動を毎日続けることが有効とされています。
喫煙は心筋梗塞の重大なリスク因子です。また、副流煙による受動喫煙でも健康リスクが高まるため、禁煙することで自分や周りの人の健康を守ることができます。
心筋梗塞の発症に密接に関わる血圧や血中脂質などは、異常値が見られても症状がないことがほとんどです。そのため職場や自治体の健診を定期的に受けて自分の健康状態をチェックするとともに、異常が認められた場合は早期に治療を始めることが大切です。
心筋梗塞は生活習慣の積み重ねにより発症することが多い病気です。生活習慣病の多くは症状なく進行するため、現段階で症状がなくても、なるべく早く対策を始めることが大切です。
また、すでに何らかの生活習慣病にかかっている人は、しっかりと治療を受けることで将来の心筋梗塞の発症を予防することができるでしょう。処方されている治療薬を正しく服用するほか、気になる症状や不安点があれば医師に相談することを心がけましょう。
国際医療福祉大学 大学院医学研究科(循環器内科学)教授、国際医療福祉大学 福岡薬学部 教授、医療法人社団 高邦会 高木病院 院長補佐、高血圧・心不全センター外来担当
心不全・高血圧治療におけるオピニオンリーダー
九州大学医学部を卒業後、同大学循環器内科学に入局。九州大学循環器病未来医療研究センター部門長を経て、現在は国際医療福祉大学大学院医学研究科(循環器内科学)および福岡薬学部にて教授を務める。循環器内科、特に高血圧や心不全を専門とし、国内ならびに国際学会で評議員やフェローを務め、ガイドライン作成や委員会活動に携わっている。多臓器連関循環動態恒常性維持システムを脳機能から紐解く研究も行っている。
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