ガンマナイフによる治療は、どのような病気に対して有効なのでしょうか。真っ先に思い浮かべるのは転移性脳腫瘍(身体の他の部位にできたがんが脳に転移したケース)かもしれません。しかし、ガンマナイフ治療は脳神経外科領域のさまざまな疾患に適応があります。それぞれの治療の特徴について、横浜労災病院脳神経外科部長の周藤高先生にお話を伺いました。
ガンマナイフの適応になる疾患には、以下のものがあります。
身体の他の部分で発生した腫瘍(がん)が脳に転移したもので、多発性(多く発生すること)となることも少なくありません。原因となる腫瘍として最も多いのは「肺がん」です。転移性脳腫瘍の場合、治療の目的は完治することではなく、そのコントロールにあるといえます。
転移性脳腫瘍が大きくなると、腫瘍そのものが脳の組織を圧迫するだけでなく、周囲の脳組織が広範囲にむくんでさまざまな症状を引き起こします。たとえば肺がんなど、脳に転移する元となったがん自体は治療・コントロールができていても、脳の各部位が担っている重要な機能が損なわれると、生命の維持そのものができなくなってしまいます。そのことによって患者さんが亡くなってしまうのを回避するのがひとつの目標となります。
脳腫瘍が引き起こす神経症状によって患者さんのQOL(quality of life=生活の質)は著しく低下してしまいます。腫瘍の増大を抑え、コントロールすることで症状の改善をはかり、新たな症状があらわれるのを未然に防ぐことも治療の重要な目的です。
聴神経腫瘍は聴神経鞘腫とも呼ばれる良性の脳腫瘍です。神経を包んでいる膜や鞘(さや)の細胞から発生します。主な自覚症状は聴力の低下やめまいです。この段階でMRI検査を受ければ、腫瘍が比較的小さな状態で治療することができますが、放っておくと周囲の神経や組織を圧迫してさまざまな症状を引き起こします。腫瘍の大きさが2.5cm以下で脳の圧迫症状がない場合には、ガンマナイフ治療が適応となります。
ガンマナイフ治療を行うと腫瘍が大きくならないようコントロールするか、むしろやや小さくすることができます。治療時の聴力がおおむね正常の場合,聴力は60〜70%程度の確率で治療後も温存できますが、ガンマナイフ治療前にすでにかなり聴力が落ちている場合にはより難しくなります。
髄膜腫は、脳を包んでいる硬膜の細胞から発生する腫瘍です。大きくなると脳を圧迫し、脳神経や血管などを巻き込んで神経症状を引き起こします。良性の腫瘍ですので急激に増大することはなく、ガンマナイフ治療を適切に行えば高い確率で腫瘍をコントロールすることができます。
下垂体腺腫に対する治療目的は大きく2つに分けられます。ひとつは腫瘍の増大をコントロールすることです。こちらの場合、ある程度放射線量を低くおさえても治療が可能です。もうひとつはホルモンの過剰分泌をおさえることですが、これには高い線量が必要になります。
下垂体腺腫のそばにある視神経は放射線感受性が高く、放射線治療による損傷を受けやすいといえます。したがって、視神経から近い、もしくは視神経を押し上げるほど大きな腺腫の場合は放射線量を低くしたり,手術による摘出を考える必要があります。多くの場合、低い線量でも腫瘍の増大を抑えることが可能ですが、ホルモンの過剰分泌を抑えることはできません。このような場合はガンマナイフよりも外科手術が適しているということになります。
脳動静脈奇形は先天的に異常血管が集まった疾患で、主に血管奇形部からの出血により発症、また痙攣発作で見つかる場合もあります。血管奇形の大きさが3cm以下または体積にして10cc以下のものがガンマナイフ適応とされます。最終的な治療の目標は「ナイダス」と呼ばれる血管奇形部本体の完全閉塞です。
治療後の経過は2〜3年のあいだに完全閉塞するのが約70%、部分閉塞は20〜25%です。3〜4年か、それ以上経過してから閉塞する場合もあります。完全閉塞せず残っているナイダスは出血の危険性があるため、治療から3〜4年経過しても完全閉塞していない場合にはガンマナイフによる再治療も考慮します。
自覚症状がなく、たまたま検査をして発見されたような脳動静脈奇形の場合でも、出血を予防する意味でガンマナイフ治療の適応になると考えてよいでしょう。
横浜労災病院 副院長・脳定位放射線治療センター長
横浜労災病院 副院長・脳定位放射線治療センター長
日本脳神経外科学会 脳神経外科指導医・脳神経外科専門医・代議員日本脳卒中学会 脳卒中専門医・脳卒中指導医日本脳卒中の外科学会 技術指導医日本臨床倫理学会 上級臨床倫理認定士日本ガンマナイフ学会 理事・学術委員会委員・QA委員会委員長日本定位放射線治療学会 世話人日本ガンマナイフ治療計画勉強会 世話人日本放射線外科学会 世話人日本脳神経外科コングレス 会員日本頭蓋底外科学会 会員日本脳腫瘍の外科学会 会員日本医療マネジメント学会 会員日本職業・災害医学会 評議員・編集委員会委員
2015年開催の第16回日本ガンマナイフ研究会で会長を務める。困難な脳神経外科手術とガンマナイフをはじめとした定位放射線治療を両方行っている数少ない脳神経外科医。
周藤 高 先生の所属医療機関
関連の医療相談が13件あります
ガンマナイフ治療効果について
私の治療に関する質問と言うより、治療効果そのものに対する質問です。 ガンマナイフ治療について、その効果について多数の機関が情報を載せていますが、「80%〜90%の治療効果」的な表現が多いかと思います。 大変、効果のある治療と思いますが、反面、「10%〜20%は効果が出ない。」と言う事もあるのかな?と思ってしまいます。 そこで質問ですが、 ①ガンマナイフ治療後の効果判定は治療後どのくらいで実施されるのでしょうか ②残念なことに、期待した効果が出なかった場合の治療方法はどのようなものが考えられますか? 教えて頂ければ幸いです。
脳腫瘍の大きさが5センチで外科手術にするかガンマナイフ治療にするか迷っています。
右半身に力が入らなくて箸も使えなくなり歩くのにも靴を履かずに進むようになり3日位の間に日に日に悪くなって脳外科を受診したら脳腫瘍と言われました。大腸癌の手術を10月29日にしたばかりで転移だと言われました。腫瘍の大きさは、5センチです。若かったら外科手術を進めるが高齢だからねと言われガンマナイフでは、大きいから結果がでないかもと言われました。秋まで稲刈りなど一人でして体力は、ある方だと思います。どっちの治療をした方がリスクがないですか?どっち治療をするか迷っています。
転移性脳腫瘍と言われましたが病理検査もせずにガンマナイフと言われて
9月5日主人が出勤後会社から目眩がして具合いが悪いと連絡があり、病院で検査してもらうように勧め、近くの脳神経外科に行きMRI.CT.血液検査等ですぐに入院して検査が必要と言われて入院しました。次の日には9日に転院と言われて、病状を聞きに行くと転移性脳腫瘍と言われました。肺にも小さいガンと見られるものがあるがおおもとは別にあるだろうと言われ脳腫瘍は1センチくらいのが3~5個だからガンマナイフがある病院がいいだろうと言われ、ここではおおもとがわからないので転院先で調べてもらいなさい。との事でした。 最初の病院では腫瘍のまわりが腫れていると言われたにもかかわらず点滴も薬も出してもらっていなかったので9日の転院の日には吐き気が酷く座って居られない状況で転院でした。 転院先の病院ではいきなりガンマナイフですね!と言われいろいろ検査して頂きましたが病理検査の機器が壊れていて病理検査が出来ないからガンマナイフが終わったら他の病理検査が出来る病院を紹介すると言われガンマナイフの日程だけ決められました。おおもとの病理検査もせずにガンマナイフありきに不信感だらけです。病院ってどこでもこんな感じでしょうか?私はきちんと病理検査をしてもらって今後の治療方針も聞けるものだと思っていました。
脳脊髄液減少症
一ヶ月ほど前に、頭部外傷。 その後、持続的な軽い頭痛と吐き気。 あとは、目を瞑った状態で片足立ちができない。 しかし、運動とかは頑張ればでき、歩くこともサイクリングも行くことはできる。 今日医師からは、脳脊髄液減少症の可能性は低いだろうとは言われたのだがそれ以外の病気なのか、それとも、脳震盪後遺症のようなものなのか。他の病院行くべきなのか教えてください。
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