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「患者参加」「市民参加」の公開講座5コマも―日本循環器学会・福岡で現地開催

公開日

2023年03月06日

更新日

2023年03月06日

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2023年03月06日

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日本循環器学会は2023年3月10〜12日、福岡国際会議場/福岡サンパレス/マリンメッセ福岡/福岡国際センター(いずれも福岡市博多区)で学術集会を開催します。12日(日)午後には、5つの市民公開講座が行われます(申し込み期限3月8日・参加費無料)。3年ぶりの現地開催となる今大会、市民公開講座は一般の方や患者さんの「参加型」をコンセプトに企画されています。大会長を務める筒井裕之先生(九州大学大学院医学研究院 循環器内科学 教授)に学会の役割や市民公開講座の見どころ、市民の方へのメッセージを伺いました。

5つの市民公開講座を用意

学術集会最終日の3月12日(日)、福岡サンパレスで市民公開講座を行います(開催時間重複あり)。今年の市民公開講座の大きな特徴は、一般の方や患者さんの「参加型」にしたことです。市民公開講座では疾患啓発の講演が行われることが多いですが、それだけでは一方通行のまま終わってしまいます。もちろん疾患啓発は重要ですので、そうしたプログラムは残しつつ、現地開催のよさを最大限引き出したいと思い、皆さんが実際に参加できる講座を増やしました。

内容は以下の5つで、それぞれ、ウェブサイトから参加申し込みができます。

  • 「身近に潜む心臓病」+Yamaちゃんのおしゃべりコンサート
  • LVAD「補助人工心臓」患者会
  • inochi Gakusei Innovators’ Program(i-GIP)
  • 第21回心肺蘇生法 市民公開講座(セミナー+実技)
  • ACHD「成人先天性心疾患の患者とともに学ぶ」患者会

「心肺蘇生法 市民公開講座」では、AED(自動体外式除細動器)の操作方法や胸骨圧迫(心臓マッサージ)の方法などを学べる実技講習を用意しています。目の前で人が倒れたときの対処方法や救命処置について、医師とインストラクターがレクチャーします。同プログラムの中では「救急車を呼ぶ?どうする?~Withコロナの病院のかかり方、救急車の使い方~」というテーマの講演も行います。

心臓病患者さんの声を届けるプログラムを中心に

心臓病患者さんの生の声を市民の方々へ届けたいという思いで、患者さん自身の体験についてお話しいただくプログラムを複数用意しています。「身近に潜む心臓病」+Yamaちゃんのおしゃべりコンサートでは、過去に急性心筋梗塞を発症したYamaちゃんこと山下典道さん(元九州交響楽団ヴィオラ奏者)に、発症から社会復帰に至るまでの体験談を語っていただきながらコンサートを催します。心不全や脳梗塞を引き起こす恐れのある不整脈である「心房細動」に関する講座も行います。

また「補助人工心臓 患者会」のプログラムでは、「補助人工心臓とともに暮らす」をテーマに、患者さんによるパネルディスカッションを行います。もともと九州大学病院では、補助人工心臓を装着した患者さんが集まり交流できる機会をつくっていたのですが、新型コロナウイルス感染症の影響で約3年間実施できていません。患者さん同士で再び集まってお話しいただき、一般の方々にもぜひその内容を聞いてもらえればと思い企画しました。同じく患者会のプログラム「成人先天性心疾患 患者会」では「心臓病を持って働く」をテーマに、患者さんたちにご自身の経験を語っていただく予定です。

「心不全パンデミック」テーマに学生が発表

市民公開講座では、「inochi Gakusei Innovators’ Program(i-GIP)」(以下、i-GIP)に参加した高校生と医学部学生による発表も行います。i-GIPはinochi未来プロジェクトが主催する、ヘルスケアの課題解決プランを学生同士が競い合うプログラムです。毎年異なる課題が出され、2022年は「心不全パンデミック」をテーマに学生たちが解決プランを創出・実行してきました。その6か月間の活動報告や今後の展望について、一般の方に向けて発表してもらう予定です。循環器領域を中心としたヘルスケア課題に対して、学生がどのような問題意識もっていて、どのような解決策を導き出しているのかを知ってもらえるよい機会だと思います。一般の方だけでなく、医師をはじめ循環器医療に関わる多くの方に聞いていただきたい内容です。

社会のニーズと向き合う日本循環器学会

日本循環器学会は2016年、日本脳卒中学会などと共同で「脳卒中と循環器病克服5カ年計画」(以下、5カ年計画)を作成しました。重要3疾病(心不全・血管病・脳卒中)を克服し、日本人の健康寿命を伸ばすために▽人材育成▽医療体制の充実▽登録事業の促進▽予防・国民への啓発▽臨床・基礎研究の強化――の5つの戦略を掲げています。5カ年計画の作成は、日本循環器学会の社会における立ち位置が大きく変化した出来事でした。

それまで当学会は設立から80年以上、循環器病学の研究や診療、専門医の育成を中心に取り組んできました。まさに「学術団体」としての役割が主なものでしたが、5カ年計画に「国民への啓発」や「医療体制の充実」という項目が盛り込まれているように、今では社会的役割の重要性が大きく増しています。さらに2018年には「脳卒中・循環器病対策基本法」が成立し、法の下で循環器対策が行われるようになりました。社会から求められていることに向き合い、国や社会の動きと連動して活動していくことが私たちの大事な役割です。

3月12日はぜひ福岡へ

学術集会の主たる目的は、会員が研究発表や情報共有を行うことですが、循環器医療に携わっていない幅広い医療者、さらには市民の方々の参加を想定して、皆さまに参加いただけるプログラムを充実させています。全国から集まってくる医療者が普段どのような活動をしているのか直接見ていただける機会でもあります。ご興味がある方は参加申し込みのうえ、ぜひ福岡まで足を運んでください。

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

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