よりよいリハビリを受けたい、より自分に合う作業療法士と出会いたいと望むのは、治療に取り組む患者さんやご家族にとって当然のことでしょう。現在のところ、どんな病院が自分に合っていてどんな作業療法士を探せばよいのか、その基準となるはっきりした指標がないためリハビリに課題を抱えていらっしゃる方も多いかもしれません。しかし、インターネットの普及などにより、私たちが知ることができる情報もあります。大泉学園複合施設 ねりま健育会病院 リハビリテーション部 作業療法士の二瓶太志先生にお話をうかがいます。
どんな病院に「自分にとって」よりよい作業療法士が所属しているかは、残念ながら病院が発表しているデータなどからは分からないと思います。しかし、客観的な要素としては、リハビリ専門医がいるかどうか、病床数に対してセラピストは何名いるか、疾患別リハビリテーションの施設基準は何か、回復期リハビリテーション病棟の施設基準は何か、充実加算や休日加算はとっているか、治療成績はどうかなどで、ある程度のリハビリテーションの質は確認できるのではないでしょうか。
たとえば、休日加算や充実加算は回復期リハビリテーションの質や量の評価指標です。これらは病院が評価するものですが、ひとつの判断基準になりますので雑誌や病院のホームページで確認してもいいでしょう。
それぞれの施設において、休日を含めたすべての日においてリハビリを提供できる体制を整えているかどうかの指標。回復期リハビリテーションが提供されている患者さんに対し、曜日により著しい差がないような体制をとらなければならない。休日の1日あたりのリハビリ提供単位数は2単位以上という決まりがある。
回復期リハビリテーションを必要とする患者さんに対し、1日あたりのリハビリ提供単位数がどのくらいかを表した指標。1日あたりのリハビリ提供単位数は6単位以上という決まりがある。
また、これも病院が発表している指標ですが、ADLやFIMなどの点数の伸びがよい病院にも注目するといいかもしれません。
食事や排泄などの目的を持った動作で、一人の人が独立して生活するために行う毎日繰り返される一連の基本的な動作のこと。
患者さんが、日常生活活動をどのくらいまでできているかご自分で判断した指標。評価項目は、食事や排泄コントロールなどの運動と、社会交流や理解などの認知に分かれている。治療効果の判定、予後予測の判断材料にもなる。
今後は、病院や施設が自らブログやFacebookなどを積極的に活用して、何を得意とする病院なのかを患者さんにアピールする機会が増えていくことを期待しています。また、ご家族の方たちも患者の会やネットワークなどに積極的に参加し、実際にリハビリを経験している別のご家族から情報を得ることも多いようです。昔ながらのいわゆる口コミの方法で情報を収集していくのも効果的かもしれません。
退院後も、必要に応じて外来によるリハビリや通所リハビリへ好ましい形でつなげていくことが理想的です。そのために、地域にいるケアマネージャーに情報提供をして退院前から一緒に関わってもらうこともあります。そこで退院後の患者さんにどんなサポートが必要か、通院はできるのかなど細かい見極めを行い、回復期リハビリ病棟から送り出すのです。
退院後に受けられるリハビリは、大きく5つに分けられます。施設によって得意とする分野はある程度限定されます。
基本的には急性期治療を行った病院や回復期治療を行った病院で、退院後に継続してリハビリを受けることができる。ただし、受けることのできる外来リハビリの時間や日数については制度によって決まっている。また、病院の外来リハビリの空き枠の関係や、新しい病院で医師がリハビリを処方するかどうかわからないため、希望するタイミングで、希望する病院にかかれない場合もある。通院が必要。ただし、充実した機器を使用できたり、外出機会の創出という面で大きなメリットがある
基本的に作業療法士などの専門家がいないのが特徴。ただし運動療法士などは常駐していることもあり、設置された機械などを使って自分でリハビリが行えるジムのような施設もある。比較的軽症の方だと無理なく受けられる。基本的に送迎サービスがある。
作業療法士などの専門家常駐が義務付けられている。個別の希望者のリハビリの受け入れが可能な施設。基本的に送迎サービスがある
自宅での作業に何か問題が生じた場合、理学療法士や作業療法士が動作の改善や指導、手すりの設置など環境の問題点を解決したりアドバイスしたりするサービス。家での問題に関しては、迅速な対応が期待できる。まだ数は少ないが言語療法士による訪問での嚥下や言語訓練を行っているところもある
作業療法士などが、個人で開設したリハビリテーション施設。保険適用外だが、施設に空きがあれば望む方がいつでも誰でも利用できる。特殊なスキルを持ち、高い効果が見込める場合もある
退院後のリハビリが、自分で「あまりにも合わない」と感じるようであれば、効果にも影響が出ますので施設を変えるのもひとつの選択肢だと思います。ただし、リハビリテーションは、病気によって期間やリハビリの量などが制度で決められています。たくさんやりたいからといって、いくらでも際限なく行えるものではありません。そのため、ふたつ以上の施設でリハビリを受けることはできません。
また、リハビリテーション制度は保険制度も非常に重視されています。介護保険と医療保険のリハビリの併用はある期間を超えると困難ですし、一度訪問リハビリ(介護保険)を受けた方は、外来リハビリ(医療保険)への変更もできません。リハビリテーションにはさまざまな決まりがありますので、無理をしてひとつ上の段階のリハビリを選んだけれどやっぱりレベルが合わなかった、という状況を避けるためにも、施設をおやめになるまえにセカンドオピニオンを受けたり、情報をしっかり収集するなどして慎重に決断していただきたいと思います。
リハビリは、おもに作業療法士・理学療法士・言語療法士によって行われますが、精神面のサポートを手厚くしている施設なども増えています。そういった施設には臨床心理士がおり、身体と心の両面からのサポートが望めます。今後は、独自性がもっともっと顕著になり、より細かな患者さんのニーズに答えられるようなサービスを提供する病院や施設が増えてくるでしょう。入院、外来、地域でのリハビリとさまざまな形態はありますが、高い専門性とチームアプローチの両立が質の高いリハビリテーションの条件だと思います。すでに今リハビリ病院も増え、特殊な技能を得意とする個人が開業したリハビリテーション施設なども生まれていますので、将来的には美容院や習い事を選ぶように、患者さんがご自分でリハビリサービスを選ぶような時代になるかもしれません。
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