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インタビュー

肺がんの低侵襲手術とは。現代における肺がん手術の2つの方向性

肺がんの低侵襲手術とは。現代における肺がん手術の2つの方向性
大﨑 敏弘 先生

飯塚病院 呼吸器外科部長・呼吸器病センター長

大﨑 敏弘 先生

この記事の最終更新は2016年01月17日です。

肺がん治療(特に手術方法)は、からだに負担の少ない低侵襲手術へと向かっています。肺がんの手術は従来の大きく切る手術から、より傷跡の小さな手術へと進歩し、術後の患者さんの生活の質も向上しました。飯塚病院では呼吸器病センターとして、呼吸器腫瘍外科や呼吸器内科、呼吸器腫瘍内科などの診療科が垣根を越え連携をとりながら、肺がんを含めた呼吸器疾患の集学的治療に取り組んでいます。呼吸器外科部長であり呼吸病センター長の大﨑敏弘先生に、肺がん治療の現状についてお話を伺いました。

肺がんは、進行が早く悪性度の高い「小細胞肺がん」(ただし、薬や放射線治療が比較的効きやすいタイプのがんです)と「非小細胞がん」の2つに大きく分類されます。非小細胞肺がんはさらに「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」などに分類されます。煙草との関連が大きいのは扁平上皮がんで、男性に多い肺がんです。

このように、ひとことで「肺がん」といってもさまざまな種類があり、それぞれ性質が異なります。このうち、日本人に多いタイプの肺がんが腺がんで肺がんの約60%を占めています。

肺がんの進行度はTNM分類と呼ばれる分類(病期、ステージ)で評価されます。Tは、肺にできたがんの大きさや広がりの程度(T因子)、Nは、リンパ節転移の程度(N因子)、Mは、遠隔転移の有無(M因子)で、これら3つの因子を総合的に組み合わせることで病期が決定されます。

肺がんの病期は、1期(1A、1B)、2期(2A、2B)、3期(3A、3B)、4期にわけられ、肺がんの治療はがんのタイプや病期(ステージ)に基づいて、総合的に判断して行われます。肺がんの治療のなかで最も根治が期待できるのは手術ですが、手術の適応となるのは基本的に1期、2期および3期の一部の肺がんです。

肺がんの病期と治療方法

病期

病態

 

治療方法

1期

血行性転移、リンパ節転移がない

手術

2期

小範囲(肺門)のリンパ節のみ転移がある

手術+化学療法

3期

広範囲(縦隔)のリンパ節まで転移がある

隣接した臓器(胸壁など)に浸潤している

手術+化学療法(+放射線療法)

化学療法+放射線療法

4期

血行性転移(脳・骨転移など)がある

化学療法

※他にも様々な因子が絡んでくるため、患者さんごとに詳細に検討して決定します。

肺がん手術における低侵襲(体への負担が少ないこと)には2つの考え方があります。ひとつは、アプローチ方法(傷(切開)の大きさや肋骨切除の有無など)としての低侵襲手術です。「胸腔鏡手術」に代表されるもので、胸壁(肋骨や筋肉など)が傷つきにくく、従来の胸を大きく切る開胸術と比べて小さな傷で済み、術後の痛みも軽減できます。手術の質を落とさずに、いかに傷を小さくするかというアプローチの方法を工夫した手術です。

もうひとつは、切除する範囲を病態(肺がんの進行度や患者さんの全身状態)に合わせて適切な範囲で小さく切除する手術で「縮小手術」と呼ばれます。手術の根治性を落とさず肺の機能温存を図る方法です。

低侵襲手術というと、一般的には胸腔鏡手術といったとらえ方をされているようですが、肺がん治療においては、このふたつの方向性を低侵襲と考えています。

肺は左右で構造が少し異なっています。右肺は上葉、中葉、下葉の3つの肺葉、左肺は上葉、下葉の2つの肺葉から構成されています。

右図:肺は肺門部と肺野部の2つに分けることもある。肺門部は肺の入り口で太い気管支があり、肺野部は、肺の奥(末梢部)を示している。

従来の肺がん手術は開胸術で行われ、肺葉をまるごと全て切り取る手術法(肺葉切除といいます)が一般的でした。開胸手術は背中から胸にかけて大きく切開(20~30センチほど)し、肋骨の骨を1本切って行う大手術で、術後の傷の痛みのほか、呼吸機能の低下など患者さんの生活の質(QOL)が低下する術式でもありました。

そのため、患者さんにやさしい治療法として低侵襲である胸腔鏡手術が普及するようになりました。日本でも1990年代初めに気胸などの手術に導入され、次第に肺がん手術にも広がっていきました。胸腔鏡手術が普及したことで患者さんの術後の生活の質も向上しています。

このように一般的となった低侵襲手術ですが、重要なことは根治性を落とさないことです。再発や5年生存率など治療の予後(治療後の経過)もしっかりとみていかなければなりません。

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