肺がんの治療は分子標的薬の登場によって大きく進歩してきました。分子標的薬は特定の遺伝子の変異ががんの発生・進行に大きく関与している場合、その遺伝子の働きをおさえることにより効果的にがんを攻撃することができます。正常細胞に与える影響が少なく、副作用が少ないことが魅力の1つです。
分子標的薬は効果のある肺がん患者さんが限られます。今回は分子標的薬の概要や、どのような患者さんに効果を示すのかなどについて京都大学医学部附属病院 呼吸器内科 助教の金 永学先生にお話を伺いました。
分子標的薬をご説明するにあたり、まずは肺がんの種類についてご理解いただく必要があります。肺がんには大きく分けて小細胞がんと非小細胞がんの2つの種類があり、非小細胞がんはさらに扁平上皮がんと非扁平上皮がんに分類されます。日本人の肺がんの約85%は非小細胞がんであり、その中でもっとも多いのが腺がんです。このような分類は、基本的にはがん細胞を採取し、顕微鏡でその形をみて行います。
小細胞がんや扁平上皮がんは、ほとんどの場合、喫煙を原因に発症します。人の体は喫煙によって体内に有害な物質を取り込むと、毎日のようにさまざまな遺伝子が変異を起こします。これら1つ1つの遺伝子変異にはがんを引き起こす力はなくても、長年にわたってたくさんの遺伝子変異が積み重なることによって発がんに至ると考えられています。このように発がんにたくさんの遺伝子の変異が複合的に関わっている場合、分子標的薬での治療はあまり有効とはいえません。たくさんの遺伝子の異常を同時に抑えることは難しいからです。
いっぽうで非扁平上皮がんは喫煙の影響が比較的少ないがんです。このがんはさまざまな機序で発生しますが、特定の遺伝子の遺伝子変異が発がんに大きく作用していることがしばしばあります。このような状態は「がんの発生・進行が特定の遺伝子変異に依存した状態」ということができ、がんの発生・進行に関わっている特定の遺伝子のことを「ドライバー遺伝子」と呼びます。分子標的薬はこのような特定の遺伝子変異によって発生したがんを効果的に治療することができます。「ドライバー遺伝子」という特定の1つの遺伝子の異常をおさえることは比較的簡単だからです。
分子標的薬はがん細胞に存在するドライバー遺伝子を攻撃することで、がん細胞にだけ作用する治療薬として開発されました。そのため抗がん剤と比較すると治療時に正常細胞に与える影響が少なく、副作用が少ないことが特徴です。しかし、重篤な副作用をおこす可能性がまったくないわけではありません。分子標的薬の副作用については、記事2『肺がんの分子標的薬、副作用は?―― 適用を絞り、管理をすれば副作用を抑えることができる』を御覧ください。
特定の遺伝子が強力な遺伝子変異(ドライバー遺伝子変異)を起こすことによって発生してしまったがんには分子標的薬を使った治療が有効です。分子標的薬によって変異を起こしている特定の遺伝子さえ抑えてしまえば、がんの進行を食い止めることができるからです。
現在、肺がん治療分野で分子標的薬のターゲットとなる遺伝子や、その候補となる遺伝子が次々に発見されています。なかでも健康保険承認されている治療が存在し、ガイドラインで検査が推奨されているドライバー遺伝子は下記のとおりです。
<検査することがガイドラインで推奨されているドライバー遺伝子>
このなかで最初に臨床の現場で投与され、実用化されたのがEGFR遺伝子変異に対する分子標的薬「ゲフィチニブ」です。分子標的薬の歴史に関しましては記事2『肺がんの分子標的薬、副作用は?―― 適用を絞り、管理をすれば副作用を抑えることができる』を御覧ください。
分子標的薬はドライバー遺伝子に変異が存在する患者さんを対象に用いられます。たとえばEGFR遺伝子変異が存在する患者さんにはEGFR遺伝子の働きを抑える分子標的薬の効果が期待できますが、EGFR遺伝子変異が存在しない患者さんにEGFR遺伝子の働きを抑える分子標的薬を投与しても効果はまったく期待できません。
該当する患者さんのほとんどは非扁平上皮がんの患者さんです。実際、非扁平上皮がんの患者さんのうち40%ほどはEGFR遺伝子変異が発がんに大きく影響しています。またALK融合遺伝子は5%ほど、ROS1融合遺伝子は1〜2%といわれています。
分子標的薬は該当するドライバー遺伝子の変異を持つ患者さんには非常によく効くことがわかっています。下の図はアメリカからの報告で、ドライバー遺伝子をもつ患者さんを正確に診断し、適切な分子標的薬を投与することの重要性を明確に示しています。
分子標的薬は基本的にステージ4の患者さんや手術後に再発された患者さんに使用されます。より早期の場合には手術や放射線治療など別の治療手段が検討されるからです。ステージ4と診断され、以前の治療であればあと1年しか生きられないといわれていた方が、分子標的薬の服用によって5年以上も生存されている例が最近ではめずらしくはなくなってきています。
前述の通り、肺がんの発生・進行に関与しているドライバー遺伝子の候補が現在も続々とみつかっています。これらのドライバー遺伝子が網羅され、それぞれのターゲットに合わせた分子標的薬が開発されれば、肺がんの治療成績は今まで以上に向上することが期待されます。実際、年内に新たなドライバー遺伝子(BRAF遺伝子変異)とそれに対する分子標的薬(ダブラフェニブ+トラメチニブ)が承認される見込みとなっています。
周辺で肺がんの実績がある医師
東京臨海病院 副院長
特集コンテンツ
東京臨海病院―江戸川区唯一の総合病院として地域に開かれた安心の医療を提供
江戸川区の医療を支える東京臨海病院による肺がんをテーマにした特集です。
内科、リウマチ科、外科、精神科、脳神経外科、呼吸器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、緩和ケア内科、消化器内科、糖尿病内科、内分泌内科、代謝内科、膠原病内科、脳神経内科、放射線治療科、病理診断科、リウマチ膠原病内科
東京都江戸川区臨海町1丁目4-2
東京メトロ東西線「西葛西」都バス 西葛27 臨海町二丁目団地前行き 東京臨海病院前下車 バス10分、JR京葉線「葛西臨海公園」 徒歩20分
東京臨海病院 呼吸器外科 部長
特集コンテンツ
東京臨海病院―江戸川区唯一の総合病院として地域に開かれた安心の医療を提供
江戸川区の医療を支える東京臨海病院による肺がんをテーマにした特集です。
内科、リウマチ科、外科、精神科、脳神経外科、呼吸器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、緩和ケア内科、消化器内科、糖尿病内科、内分泌内科、代謝内科、膠原病内科、脳神経内科、放射線治療科、病理診断科、リウマチ膠原病内科
東京都江戸川区臨海町1丁目4-2
東京メトロ東西線「西葛西」都バス 西葛27 臨海町二丁目団地前行き 東京臨海病院前下車 バス10分、JR京葉線「葛西臨海公園」 徒歩20分
東京臨海病院 放射線科 医員
特集コンテンツ
東京臨海病院―江戸川区唯一の総合病院として地域に開かれた安心の医療を提供
江戸川区の医療を支える東京臨海病院による肺がんをテーマにした特集です。
内科、リウマチ科、外科、精神科、脳神経外科、呼吸器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、緩和ケア内科、消化器内科、糖尿病内科、内分泌内科、代謝内科、膠原病内科、脳神経内科、放射線治療科、病理診断科、リウマチ膠原病内科
東京都江戸川区臨海町1丁目4-2
東京メトロ東西線「西葛西」都バス 西葛27 臨海町二丁目団地前行き 東京臨海病院前下車 バス10分、JR京葉線「葛西臨海公園」 徒歩20分
国立病院機構東京病院 呼吸器センター外科 医長
特集コンテンツ
国立病院機構 東京病院―幅広い呼吸器疾患に対し、専門的で緻密な診療を提供
国立病院機構 東京病院による呼吸器疾患をテーマにした特集です。
内科、リウマチ科、呼吸器外科、消化器外科、整形外科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、麻酔科、呼吸器内科、循環器内科、緩和ケア内科、感染症内科、消化器内科、脳神経内科
東京都清瀬市竹丘3丁目1-1
西武池袋線「清瀬」南口 久米川駅行・所沢駅東口行 東京病院北下車 下里団地行・滝山営業所行・花小金井駅行 東京病院玄関前下車 バス5分、JR武蔵野線「新秋津」 車10分、西武新宿線「久米川」北口 清瀬駅南口行 東京病院北下車 バス
国立病院機構東京病院 呼吸器内科 呼吸器センター長
特集コンテンツ
国立病院機構 東京病院―患者さんの立場に立ち地域に根差したがん診療を提供
東京都清瀬市の医療を支える国立病院機構 東京病院による肺がん・大腸がん・胃がんをテーマにした特集です。
内科、リウマチ科、呼吸器外科、消化器外科、整形外科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、麻酔科、呼吸器内科、循環器内科、緩和ケア内科、感染症内科、消化器内科、脳神経内科
東京都清瀬市竹丘3丁目1-1
西武池袋線「清瀬」南口 久米川駅行・所沢駅東口行 東京病院北下車 下里団地行・滝山営業所行・花小金井駅行 東京病院玄関前下車 バス5分、JR武蔵野線「新秋津」 車10分、西武新宿線「久米川」北口 清瀬駅南口行 東京病院北下車 バス
関連の医療相談が26件あります
ガンマナイフ治療効果について
私の治療に関する質問と言うより、治療効果そのものに対する質問です。 ガンマナイフ治療について、その効果について多数の機関が情報を載せていますが、「80%〜90%の治療効果」的な表現が多いかと思います。 大変、効果のある治療と思いますが、反面、「10%〜20%は効果が出ない。」と言う事もあるのかな?と思ってしまいます。 そこで質問ですが、 ①ガンマナイフ治療後の効果判定は治療後どのくらいで実施されるのでしょうか ②残念なことに、期待した効果が出なかった場合の治療方法はどのようなものが考えられますか? 教えて頂ければ幸いです。
高齢者のがん 治療方法について
父が肺がんで、ステージⅢ、他所への転移は見られないが、同肺内での転移は見られると診断されました。高齢のため、手術及び全身への抗がん剤治療は勧めないと医師に言われ、現在、分子標的薬の検査をしている段階です。検査入院から1か月が経ち、治療するとしても、いつから始まるかわからない状態です。本人は、咳、痰の症状以外は、元気の様子ですが、このペースで治療待ちをしていて良いのか、他の治療方法も検討した方が良いのか、教えてください。
CT検査にて、肺がんと診断されました。今後の選択肢について教えて下さい。泣
東京在住、28歳会社員です。 5日前、私の大好きな大好きな広島に住む祖父が肺癌と診断されてしまいました。毎日、涙が止まりません。遠く離れた場所でコロナの感染リスクを考えると、お見舞いに行くことすら許されず、途方に暮れながらも情報収集をしていたところ、このサービスの存在を知り、この度ご質問させて頂きました。 祖父の現在の状況は下記です。 先週、高熱を出し、病院に行きPCR検査を受けたところ陰性でした。しかし、CT検査を実施したところ肺の1/3程度の影があり、肺がんだと診断されました。 詳しい検査をするため、がんセンターの呼吸器内科に転院する予定です。 これまでの病歴として、私が知ってる限りでは、10年ほど前、肺気腫(喫煙者であったが肺気腫と診断され、そこから禁煙)になり、その後、自律神経失調症と診断され、真夏の布団の中で背中が冷たいと感じるようになり、1日のほとんどをベットで過ごすようになりました。また2.3年前には、肺炎で入退院を2回しています。 まだ不確定要素も多く、判断が難しいかとは思いますが、今回は、本当に診断結果が正しいのか?そして肺がんの場合、祖父にとって最善な治療法は何か?(外科的、内科的治療含めて)など、これからの選択肢について教えて頂きたいという一心でご連絡致しました。 祖父が、今まで通り祖母と仲良く家で暮らせる日々を取り戻してあげたいという一心で、今回ご連絡させて頂いています。どうかどうかよろしくお願いいたします。
肺がんの手術と心臓弁膜症
肺がんステージ1との診断があり、来月手術予定ですが、心電図検査で心臓に異常が見つかりました。心臓弁膜症は5段階の3との診断結果ですが、肺がんの手術には問題ないので、薬や治療等何もうけていません。本当に大丈夫でしょうか?息苦しいなどの自覚症状は昨年秋ごろから続いています。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「肺がん」を登録すると、新着の情報をお知らせします