肺がんはもっともよく知られるがんのひとつです。日本ではがんの種類別にみた死因の1位が肺がんで、特に男性に多いことが明らかになっています。
これまで2,000例以上の肺がん手術を執刀され、抗がん剤治療にも積極的に取り組んでおられる化学療法研究所附属病院副院長の小中千守先生にお話をうかがいました。
がんが進行している度合いによって、その段階を1期から4期に分類します。これをステージ(病期)といい、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳとローマ数字で表記されることもあります。また、この4段階以前のものを0期と呼ぶこともあります。
ステージI(1期)がんの大きさが5cm以内で肺の中にあり、リンパ節への転移がない。
ステージII(2期)がんの大きさは5cm以上だが、リンパ節への転移がない。
浸潤(周囲への広がり)が強いが、リンパ節への転移がない。
がんの大きさは5cm以上7cm以下で、肺内リンパ節または肺門リンパ節に転移がある。
ステージIII(3期)2期よりも進行しているが、4期よりは早期の段階にある。
•3A期:軽度の進行
•3B期:重度の進行
ステージIV(4期)肺から離れた別の臓器に転移(遠隔転移)がある。
最初にがんができた肺の反対側にも転移がある。
胸水(胸腔内にたまった多量の液体)にもがんがある。
肺がんの各ステージにおける治療の選択肢は?
肺がんは大きくふたつの種類に分けられます。ひとつは小細胞がん、もうひとつは非小細胞がんです。
小細胞がんは肺がん全体の15〜20%と発生する頻度は高くありません。進行が早く遠隔転移しやすい悪性のがんですが、抗がん剤による化学療法や放射線療法が効きやすいがんでもあります。
肺がん全体の80%と、大半を占めるのが非小細胞がんです。非小細胞がんはその中でさらに腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんなどに分類されます。
前項で述べた肺がんのステージ分類は、主にこの非小細胞がんの進行度合いをあらわすものです。
肺がんのステージ(病期)は以下の3つの要因によって決定されます。
3つの要因を示す用語の頭文字からとってTNM分類といいます。
T因子はがん細胞の大きさと浸潤の度合いによりT1〜T4の4段階に分類されます。N因子はリンパ節転移の有無ですので、転移なしはN0、転移ありの場合はN1〜N3の3段階に分類されます。M因子は遠隔転移の有無ですので、転移なしがM0、転移ありがM1と分類されます。
肺がんが進行して別の臓器への転移がある場合は、全身に作用する薬剤による化学療法が選択肢に上ってきます。治療に使われる薬剤には次のような種類があります。
従来から化学療法の中心になっていた薬剤で、がん細胞の増殖を阻害し、がん細胞そのものを殺す作用を持っています。現在肺がんに用いる抗がん剤はシスプラチンに代表されるプラチナ製剤と第三世代抗がん剤の組み合わせが主流ですが、これらはがん細胞を殺すだけでなく、正常な細胞にもダメージを与えるという副作用があります。腎臓や骨髄の機能低下、下痢・吐き気など症状や程度はさまざまですが、ほとんどの抗がん剤で副作用は避けられません。
ただし、近年新しい制吐剤や白血球増多剤が開発され、化学療法は外来治療としても安全に行えるようになりました。
がん細胞の増殖や転移に関わる分子に結びついて、その働きを阻害する薬剤です。がん細胞は正常な細胞とは異なり、染色体や遺伝子に特徴的な変異があります。がん細胞の変異のタイプを調べることによって、ある種のがんに特異的に作用する薬剤を使うことができます。
よく知られるところではEGFR遺伝子に変異が起きているタイプのがんに高い効果のあるゲフィチニブやエルロチニブ塩酸塩などがあります。がん細胞特有の働きに対して効果的に作用するので、一般的な抗がん剤よりも副作用が少ないというメリットがありますが、有効ながんのタイプは限られます。
私たちのからだの中で異物を取り除くために働いている免疫細胞の仕組みを利用して、がん細胞を攻撃するのが、免疫治療薬です。免疫機能を全体的に高める免疫賦活剤(めんえきふかつざい)に始まり、がん細胞の特徴を免疫細胞に覚えさせてより効率的に作用させる特異的免疫療法も開発されてきました。
免疫治療薬の領域で現在もっとも注目されているのはニボルマブです。免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれるもので、広い意味では分子標的治療薬のひとつともいえます。がん細胞は免疫T細胞の活動を抑制して不活性化させる仕組みをもっていますが、これを阻害することによって免疫T細胞が再活性化し、がん細胞を攻撃します。
治療が困難なメラノーマ(悪性黒色腫)に高い効果があることが示されているほか、これまで治療の決め手がなかった切除不能な非小細胞肺がんや、進行期の肺扁平上皮がんに対する効果も期待されています。
赤羽リハビリテーション病院 院長
日本外科学会 外科専門医・指導医日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医・終身指導医日本臨床細胞学会 細胞診専門医・細胞診指導医日本呼吸器学会 呼吸器専門医・呼吸器指導医国際細胞学会 国際細胞病理医
日本において肺がん治療の伝統がある東京医科大学外科第一講座で、長年にわたり指導的立場で診療に従事してきた。気管支鏡専門医、細胞診専門医として診断を行い、呼吸器外科指導医としては現在まで2,000例以上の肺がんの手術を執刀した。1980年より全国に先駆けて胸腔鏡を用いた診断・治療を行い、肺がんに対しても、より侵襲の少ない手術を行っている。肺がんの化学療法にも力を入れており、呼吸器疾患における最新の診断・治療の実施をめざしている。
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