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大腸がんの治療:選択肢と費用、副作用

大腸がんの治療:選択肢と費用、副作用
豊島 治 先生

とよしま内視鏡クリニック 院長

豊島 治 先生【監修】

目次
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大腸がんと診断された際、どのような治療が行われるのか、日常生活にどのような影響が生じるのか、不安に思われることもあるかもしれません。この記事では、病気の状態に応じた治療法の解説、体への負担、日常生活への影響などについて解説します。

👉 このパートをまとめると
がん治療は「手術」「薬物療法(化学療法)」「放射線療法」の3つが柱になります。がんの場所や進行度、そして全身の状態に合わせて、これらの治療法を単独で、あるいは組み合わせて最適な治療計画を立てていきます。

なお、大腸がんの治療においては、早期の場合であれば内視鏡手術が選択肢となります。

がんが存在する部分や、周辺のリンパ節などの組織を切除する方法です。早期のがんであれば、根治を目指せる治療法です。

抗がん薬を飲み薬や点滴などで投与します。血液の流れに乗って全身に広がるため、手術では切除できないようながん細胞も攻撃することができる治療法です。手術で切除できない進行がんなどに対して行われるほか、手術の前に行う場合や手術後の再発予防として行う場合もあります。

放射線をがんに照射することで、がん細胞のDNAにダメージを与えて破壊する治療法です。手術が難しい場合の治療で重要な役割を果たします。手術の前後に行われることや、がんによる症状を和らげるために行われることもあります。

👉 このパートをまとめると
大腸がんの治療では、ステージ(病期)ごとに標準的な治療法が存在します。がんの進行度を示すステージは、治療法を決めるうえで重要な指標になります。

ステージ0は、リンパ節への転移がなく、がんが粘膜内に留まっている状態です。ステージIは、リンパ節への転移がなく、がんが粘膜の下の層(粘膜下層または固有筋層)までに留まっている状態です。

これらの早期がんでは、お腹を切らずにがんを切除する「内視鏡手術」が可能な場合があります。がんの状態によっては、追加での手術が必要になる場合もあります。

ステージIIは、がんが腸の深いところ(漿膜下層~外膜)またはほかの臓器まで達しているものの、リンパ節への転移はない状態です。ステージIIIは、がんの深さにかかわらず、リンパ節への転移が認められる状態です。

この段階で行われる主な治療法は手術です。がんのある腸管と周囲のリンパ節を切除します。再発のリスクが高いと判断された場合には、手術後に化学療法(術後補助化学療法)を行うことが推奨されます。なお、ここでの手術は外科手術を指します。

ステージIVは、がんが肝臓や肺など、大腸から離れたほかの臓器に転移(遠隔転移)している状態です。

大腸がん(原発巣)と転移したがん(転移巣)のそれぞれについて、外科手術や熱凝固療法で取り除くことが可能か判断されます。切除可能な場合には手術が選択されることが一般的です。がんを切除しきれないと判断された場合や、患者さんが手術に耐えられないと予想される場合には、化学療法や放射線療法による治療、または症状を和らげるための治療が行われます。

👉 このパートをまとめると
大腸がんを切除する場合には、内視鏡手術のほか、腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)、ロボット支援手術などの低侵襲(ていしんしゅう)な選択肢があります。がんの状態、治療の効果、体への負担などを考慮して最適な方法が選択されます。なお、腹腔鏡下手術とロボット支援手術は外科手術に含まれます。

内視鏡手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援手術は、いずれも体への負担が少ない、低侵襲な治療法です。

内視鏡手術

内視鏡手術では、大腸の中に、先端にカメラがついた管(大腸内視鏡、大腸カメラといわれる)を入れてがんを切除します。肛門(こうもん)から管を挿入するため、手術のような傷はつきません。

手術(腹腔鏡下手術、ロボット支援手術)

大腸がんの外科手術には、開腹手術以外の方法として、腹腔鏡下手術、ロボット支援手術があります。

腹腔鏡下手術は、お腹に小さな穴をいくつかあけて、そこから腹腔鏡と呼ばれる器具を挿入して行う手術です。お腹に小さな傷はつきますが、開腹手術に比べると体への負担を抑えることが可能です。

ロボット支援手術では、手術用ロボットを用いて、腹腔鏡下手術と同様にお腹に小さな穴をあけて手術を行います。より複雑な操作や精密な操作が可能とされています。

これらの治療法は、開腹手術に比べて手術後の痛みが少ない、入院期間が短いなどの利点があります。一方で、手術時間が長いなどのデメリットが存在する場合もあります。

✍️一言アドバイス
治療法の選択にあたっては、治療の効果や再発のリスク、体への負担、費用の負担などのバランスを考慮することが大切です。自身にとって納得できる選択となるよう、治療後の生活の質(QOL)も考えながら、医師や看護師、相談窓口の方とよく相談するとよいでしょう。

👉 このパートをまとめると
大腸がんに対する薬物療法は、再発の予防や進行の抑制などを目的として行われます。薬剤により副作用が生じることがあり、副作用への治療やケアも行われます。

薬物療法の目的は、主に2つ挙げられます。1つは、ステージIIIの大腸がんや、再発リスクの高いステージIIの大腸がんに対する手術後に行う「術後補助化学療法」です。手術で切除しきれなかったがん細胞などを攻撃し、再発を防ぎます。

もう1つは、手術が難しい場合などに行う症状緩和のための薬物療法です。がんの進行を抑え、QOLを保ちながら生活することを目指します。がんが小さくなった場合は、手術で切除できるようになることもあります。

近年では、従来の抗がん薬に加えて、新しい薬剤も登場しています。

分子標的薬とは、がん細胞に現れる特定の分子を標的として作用する薬剤です。また、免疫チェックポイント阻害薬とは、人間が本来持つ免疫の力を発揮させたり強めたりしてがんを攻撃する薬剤です。

なお、これらの薬剤による治療は全ての患者さんに対して行うことができるわけではありません。患者さんの体力やがんの部位、がんの遺伝子的な特徴などによって適応が決定されます。

化学療法による治療においては、副作用が生じることがあり、それに対して治療やケアが行われます。代表的な症状と治療・ケアの方法を知り、適切な準備を行うとよいでしょう。

吐き気・食欲不振

使用する薬剤にもよりますが、4~6割程度の方にみられます。吐き気止めを使用することで症状のコントロールを図ります。食欲がない場合は、無理に一度に食べず、食べられるときに食べられるものを少しずつ口にしましょう。

口内炎

4~5割程度の方にみられます。適切な歯磨きなどで口の中を清潔に保ち、乾燥させないようにすることが予防になります。また、口の中を氷などで冷やすと、口内炎の予防になるといわれています。口内炎ができた場合、食事を食べやすい形態にする、刺激物を避けるなどの工夫も大切です。

脱毛

薬剤の投与後しばらくしてから、頭髪や体毛が抜けてくることがあります。使用する薬剤や患者さんの体の状態などにより、脱毛の程度はさまざまです。治療終了後しばらく(3~6か月程度)すると再び毛髪は生え始めます。見た目への影響も大きいため、帽子やバンダナ、医療用のウィッグ(かつら)を着用する方もいます。

👉 このパートをまとめると
大腸がんに対する放射線療法は、手術前後の補助として、または症状を和らげるために行われます。化学療法と同様、副作用が生じることがあり、副作用への治療やケアも行われます。

大腸がんに対する放射線療法は、手術の前後に行われる「補助放射線療法」と、がんによる症状を和らげる「緩和的放射線療法」に大別されます。

補助放射線療法では、手術の前に放射線を照射することでがんを小さくしたり、手術の後に行うことで再発を防いだりする目的で行われます。緩和的放射線療法は、痛みや出血など、がんによる症状を和らげる目的で行われます。

そのほか、放射線療法は、転移巣への治療や手術が難しい場合の選択肢となります。

放射線療法による治療においても、化学療法と同様に副作用が生じることがあります。代表的な放射線療法の副作用とその治療・ケアの方法についても知っておくとよいでしょう。

疲労感(だるさ)

放射線は正常な組織にも影響を与えるため、その回復に体力を要するといわれています。治療中は過度な運動は避け、適切な休息をとりましょう。また、可能な範囲で十分な食事や睡眠を心がけましょう。

吐き気・食欲不振

消化器への影響などにより生じます。食欲がない場合は、無理に一度に食べず、食べられるときに食べられるものを少しずつ口にしましょう。吐き気止めなどの薬で症状を和らげることもあります。

口内炎

口の粘膜が炎症を起こし、口内炎ができることがあります。適切な歯磨きなどで口の中を清潔に保ち、乾燥させないようにすることが予防になります。口内炎ができた場合、食事を食べやすい形態にする、刺激物を避けるなどの工夫も大切です。

皮膚炎

放射線を照射した部位の皮膚に、乾燥や赤み、かゆみなどの症状が現れることがあります。皮膚を清潔に保つ、熱いお湯での入浴などを避ける、直射日光を避けるなど、皮膚に負担をかけない工夫をしましょう。

脱毛

頭皮に放射線の影響が及ぶと、脱毛が生じることがあります。清潔に保つことで頭皮の状態の悪化を防ぐことができます。炎症が生じている場合は強くこすらず優しく洗い、タオルでこすったりドライヤーの温風を当てたりしないようにしましょう。帽子やバンダナ、医療用のウィッグ(かつら)を利用してもよいでしょう。

Q.手術や抗がん薬などの治療にかかる費用は、総額でどれくらいになりますか?

A.治療法や入院期間によって大きく異なりますが、公的医療保険が適用される場合、自己負担は通常1〜3割です。たとえば、腹腔鏡下手術で10日間入院して総医療費が150万円であれば、自己負担3割で40~55万円程度が目安となります。ただし、次に説明する「高額療養費制度」を使えば、負担を軽減できる場合もあります。

Q.高額療養費制度とは何ですか?

A.高額療養費制度とは、医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合に、その超えた分が払い戻される公的制度です。

上限額は年齢や所得によって異なりますので、加入している医療保険(健康保険組合など)や、住んでいる自治体(役所の窓口など)に確認するとよいでしょう。

Q.ステージIVと診断されました。どのような治療法があるでしょうか?

A.ステージIVの場合、転移が生じています。大腸のがんと転移したがんが切除できるかにより治療は異なります。手術ができない場合でも、薬物療法(化学療法)、放射線療法などによる治療が検討されます。

Q.退院後の食事で気をつけることはありますか?

A.手術後には、一定期間を経過すれば特段の制限がないことが一般的ですが、まずは消化のよい食べ物を選ぶとよいでしょう。バランスのよい食事を心がけ、心配なことがあれば医師や看護師、相談窓口に相談しましょう。

この記事では、大腸がんの治療法について解説してきました。大腸がんは、早期に発見し、治療を開始することが大切です。また、治療にあたっては、標準的な選択肢を知り、医師としっかりとコミュニケーションをとり、納得して治療に臨むとよいでしょう。

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