
認知症が進行し、口から食べることが困難になったときの選択肢の1つに“胃ろう”があります。この記事では、認知症患者さんの摂食嚥下障害の特徴や胃ろうの基本的な仕組み、患者さんやご家族の方が後悔しないための意思決定について解説します。
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認知症の進行過程において、食事をとることが難しくなる“摂食嚥下障害”が出現することがあります。
認知症では症状の進行に伴い、食べ物・飲み物の認識や咀嚼、飲み込みが難しくなることがあります。それらの症状は摂食嚥下障害と呼ばれ、初期~中期頃では認知症の種類(アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症など)によって異なる特徴をみせますが、進行すると、種類による違いは分からなくなると考えられています。
認知症の種類によって、食事が困難になる理由は異なります。主な認知症の種類であるアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症による違いについて解説します。
アルツハイマー型認知症は、脳内にアミロイドβと呼ばれる異常なタンパク質が蓄積することにより生じる認知症です。日本では最も多い認知症となります。お箸やスプーンがうまく使えなくなったり、目の前にあるものが食べ物だと認識できなくなったりすることがあり、食事に時間がかかる傾向があります。そのため、使用する食器を少なくすることや、手づかみでも食べられる食べ物の用意、食べ始める動作の介助などが行われます。
血管性認知症は、脳血管障害(脳卒中)が起こり、脳の血管が損傷を受けることによって生じる認知症です。障害を受けた脳の部位によって現れる症状は異なりますが、体の麻痺や口唇・舌の運動能力の低下によって、食事を口元に運ぶ動作や咀嚼が難しくなったり、むせやすくなったりする(誤嚥)場合があります。現れている症状に応じて、食事をとる姿勢・嚥下方法の工夫や口腔・喉のマッサージなどが行われます。
レビー小体型認知症とは、脳の広範囲にレビー小体と呼ばれる異常なタンパク質が蓄積することにより生じる認知症です。レビー小体型認知症では手足の震えや筋肉のこわばりなどの影響で、食べる動作が阻害される場合や、飲み込みが難しくなる場合などがあります。調子がよい時間帯と悪い時間帯もあるため、調子がよい時間帯に食事を設定し、可能な動作に応じた介助や環境調整が行われます。
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胃ろうは、口から食事をとることが不可能になった状態のときに検討される可能性があります。
胃ろうとは、お腹の皮膚から胃へ小さな穴を開け、カテーテル(チューブ)を通して栄養を送る処置です。内視鏡を用いて穴を開ける方法が一般的であり、経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)と呼ばれています。
認知症の患者さんでは、胃や腸で食べ物・飲み物を消化する機能は保たれているものの、ご自身の力で口から栄養を摂取することができなくなった場合に、胃ろうが検討される可能性があります。
胃ろうの主な適応基準は、以下のとおりです。
また、認知症の患者さん本人の“口から食べたい”という意欲が低下している場合や、誤嚥により食べ物や細菌が肺に入ることで生じる病気(誤嚥性肺疾患)を繰り返している場合などでも検討されます。
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胃ろうの設置を含め、人生の最終段階(終末期)における医療では、事前に患者さん本人による意思決定を、文書で残しておくことが大切です。ご本人による意思決定が難しい場合は、ご家族による選択が必要になる可能性があります。
認知症の患者さんにおいて、胃ろうは人生の最終段階で行われることの多い医療行為です。本来は患者さん本人の意向により治療が決定されますが、人生の最終段階では難しい場合も少なくありません。そのため、ご自身による意思表示が可能な間に、ご家族の方や医療スタッフなどにあらかじめ胃ろうの要否を口頭だけでなく、文書(事前指示書)で伝えておくことが大切です。ご自身の意思が変わった場合は、事前指示書を変更することもできます。
患者さん本人の意思を確認することが難しい場合は、ご家族の方は医療スタッフから十分な説明を受けたうえで、患者さんにとって最善の方法を考えることになります。なお、口頭での意思表示は難しくても、表情や身振り、雰囲気などで意思を表現している場合もあります。ご家族の方は意思決定する前に、患者さんに話しかけたときの反応をよく観察しましょう。
A. 胃ろうは“口から食べる訓練”を安全に行うための栄養補助手段として活用されることもあります。摂食嚥下障害が改善することで、口からの食事の再開や、胃ろうと口からの食事の併用が可能になる場合があります。
A. PEGの場合、一般的に胃ろうを作るときの手術時間は15~30分程度で、入院期間は1~2週間程度です。また、カテーテルには複数の種類があり、種類によって頻度は異なりますが、定期的な交換が必要です。
認知症患者さんは摂食嚥下障害が生じやすく、人生の最終段階において胃ろうが必要になる可能性があります。希望に沿った医療を受けられるよう、可能な限り患者さんご自身が事前に意思表示をしておきましょう。
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