ひと口に肺がんの検査と言っても、早期発見のための検査もあれば、進行の度合いを調べて治療方針を決定する検査もあります。私たちがもしも肺がんと診断されたら、どんな治療を受けることができるのかを正しく判断するためにも適切な検査が必要です。
検査から診断、治療まで迅速に行うことをモットーに、これまで2,000例以上の肺がん手術を執刀された化学療法研究所附属病院副院長の小中千守先生に、肺がんの病期=ステージを診断するための検査についてお聞きしました。
肺がんの検査はその目的によって行う検査の種類が異なります。
治療方針を決定するためには、がんがどの程度進行しているのかを正しく見極めることが必要です。関連記事「肺がんの治療」で触れたように、肺がんはその進行の度合いによって、ステージIからステージIVまで4つの病期に分類されます。現在、肺がんのステージを診断するうえで特に有効とされているのは次の検査です。
PET:Positron Emission Tomography (陽電子放出断層撮影)はブドウ糖ががんに集まる性質を利用して全身を一度に調べることができます。
CT:Computed Tomography(コンピューター断層撮影)はX線を使って体を輪切りにしたような詳細な画像をつくります。
PETは代謝の異常を、CTは形状の異常をみることができ、それぞれに得手・不得手があります。この両方の検査を組み合わせることで、がんの転移の状態を高い精度で調べることができます。
肺がんのステージ分類においてPET単独装置とPET/CT合体装置の成績比較をしたところ、PET/CT合体装置のほうが優れていたという報告があります。また、従来は骨への転移を調べるために骨シンチグラグラフィという検査が用いられていましたが、PET/CTで代替が可能なため、骨シンチグラグラフィを省略することができます。
EndoBronchial UltraSound-guided TransBronchial Needle Aspirationの略でEBUS-TBNAと呼ばれる検査です。超音波検査のプローブ(探触子)がついた気管支鏡を挿入し、組織を針で採取します。縦隔(じゅうかく)リンパ節への転移の有無を90%以上の高い精度で診断することが可能です。組織を採取する検査は切開や痛みを伴う場合が少なくありませんが、この検査方法は患者さんの負担が比較的少ない低浸襲な検査といえます。
また、同じように組織を採取するための検査でより外科的な手法として、胸腔鏡下生検(きょうくうきょうかせいけん)というものがあります。これは関連記事「肺がんの手術」の胸腔鏡下手術を兼ねたもので、診断の結果が肺がん(非小細胞がん)の場合はそのまま手術に移行することができます。このため超音波気管支鏡下針生検とは異なり、全身麻酔下で行います。
Magnetic Resonance Image:磁気共鳴画像の略。磁場の中で起こる体内の水素分子の振動をコンピューターで解析し、詳細な画像を作ります。CTだけでは分かりにくい頭部や骨への転移を調べるためには有効な検査です。より正確な診断を行うため、ガドリニウム造影剤を静脈から注射する造影MRIが用いられます。
赤羽リハビリテーション病院 院長
日本外科学会 外科専門医・指導医日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医・終身指導医日本臨床細胞学会 細胞診専門医・細胞診指導医日本呼吸器学会 呼吸器専門医・呼吸器指導医国際細胞学会 国際細胞病理医
日本において肺がん治療の伝統がある東京医科大学外科第一講座で、長年にわたり指導的立場で診療に従事してきた。気管支鏡専門医、細胞診専門医として診断を行い、呼吸器外科指導医としては現在まで2,000例以上の肺がんの手術を執刀した。1980年より全国に先駆けて胸腔鏡を用いた診断・治療を行い、肺がんに対しても、より侵襲の少ない手術を行っている。肺がんの化学療法にも力を入れており、呼吸器疾患における最新の診断・治療の実施をめざしている。
小中 千守 先生の所属医療機関
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