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アルツハイマー型認知症の人に対する支援のポイント〜疑う症状が見られたらどうすればよいの?〜

アルツハイマー型認知症の人に対する支援のポイント〜疑う症状が見られたらどうすればよいの?〜
繁田 雅弘 先生

栄樹庵診療所 院長、東京慈恵会医科大学 精神医学講座 客員教授、東京慈恵会医科大学附属病院 精...

繁田 雅弘 先生

目次
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アルツハイマー型認知症とは、アルツハイマー病*によって引き起こされる認知症の一種です。全ての認知症の中でもっとも多くを占め、主に70歳以上で見られます。 主な症状、もの忘れ、言語機能の低下、遂行機能障害(物事を順序立ててできなくなること)などが見られます。家族にこのような症状がある場合、心配のあまり本人の意思に反して無理に病院を受診したり、怒ったり否定したりするケースがあります。しかし、それは望ましいことではありません。

では、もし家族や周囲の人にアルツハイマー型認知症を疑う症状が見られた場合、まず何をしたらよいでしょうか。また、診断された場合には、どのように支援するとよいでしょうか。本記事で詳しく解説します。

*アルツハイマー病…脳にアミロイドβたんぱくとタウたんぱくがたまり、神経細胞が減少して脳が萎縮する病気の一種で、進行するとアルツハイマー型認知症を引き起こす。

アルツハイマー型認知症が疑われる場合は、早めの受診を検討する、主張に対して無理強いしない、怒ったり否定したりしないといったことが重要です。

詳しくは以下のとおりです。

アルツハイマー型認知症では、最初にもの忘れの症状が現れることが一般的です。特に、昔のことはよく覚えているのに最近のことを覚えるのに苦労するという特徴があります。そのほか、言語機能の低下や遂行機能障害(物事を順序立ててできなくなること)などもアルツハイマー型認知症の特徴的な症状です。このような症状がある場合には、早めに受診を検討するとよいでしょう。

医療機関ではさまざまな検査によって認知症かどうか、その原因は何かを診断し適切な治療を行います。アルツハイマー型認知症の場合は、薬で症状の緩和を目指します。また、もの忘れの原因がアルツハイマー型認知症ではなく、内分泌疾患や慢性硬膜下血腫などの病気だった場合には、薬や手術によって治療が可能なこともあります。このように、適切な治療を受けるためには、早めに受診することが非常に重要です。

アルツハイマー型認知症の人の中には認知症が生じていることを否定して、「病院に行く必要はない」「もの忘れはしていない」などと言う人が多いとされています。このような主張は、自分が忘れてしまったことを忘れているという部分もありますが、自分がアルツハイマー型認知症だと信じたくない気持ち、怒りや悲しみ、不安などから生まれると考えられます。つまり、本人もなんとなく違和感を抱いている可能性が高いといえます。

家族は早く診断してもらいたいために、無理にでも病院に行かせようとすることがありますが、無理強いは受診に対して後ろ向きになり、逆効果となる可能性も考えられます。そのため、できる限り無理強いはせず、まずは本人の気持ちに寄り添って、本人が受診したいと思えるような状態にできることが望ましいでしょう。特に、それまでの本人と家族との情緒的な関係や信頼関係がしっかりしていない場合は、無理強いは危険です。

もの忘れや勘違いなどの症状に対して、怒ったり否定したりすることはお互いの信頼関係を損なうことにもつながります。そのため、周囲の人はまず話を聞く姿勢を持つとよいでしょう。

たとえば、アルツハイマー型認知症の人のなかには物を置いた場所を忘れてしまい「物を盗られた」などと言う“物盗られ妄想”という症状があります。この場合、周囲の人は「盗っていない」と真っ向から否定するのではなく、置いた場所が分かっている場合は「ごめんなさい、間違って片付けてしまいました」というように答えるなどの対応を取るとよいでしょう。

また、自宅にいるのに「家に帰る」などと言う場合は「お送りしましょう」などと言って一緒に外に出て、近所を散歩して帰ってくるなどの対応ができるとよいでしょう。しかし、家そのものの居心地が悪い場合、ここが家ではないと本人が訴える場合があります。そうした可能性がある場合は環境の改善を検討しましょう。

アルツハイマー型認知症と診断された場合は医師と十分に相談しながら、医師の指導のもと周囲の人が連携しながら対応していくことが非常に大切です。

たとえば、アルツハイマー型認知症では症状が進行すると、徘徊はいかい(うろうろと歩き回ること)が見られることがあります。しかし、徘徊をなくすために本人を無理やり閉じ込めたり、外に出られないようにしたりすることはよくないとされています。

アルツハイマー型認知症における徘徊は、“会社に行きたい”“この場所が落ち着かない”などの勘違いや、徘徊自体が目的ではなく、人や物を探そうとするなど正当な目的があることも多いのです。そのため、徘徊を無理やり制限するのではなく、さまざまな原因を考えて本人に落ち着いてもらい自然に徘徊がなくなるようにするとよいでしょう。

アルツハイマー型認知症の人が不安に思う原因としては、光や音などの刺激、分かりづらい生活環境などが挙げられます。光や音などの刺激は強すぎるとストレスになり、弱すぎると症状が悪化することがあるため、本人にとって適度な明るさや好きな音楽を流すなどして環境を整えてあげるとよいでしょう。

また、トイレの場所が分かりづらいなどの生活環境も徘徊の原因となり得ます。そのため、トイレや居室の目印となる案内を置くなどといった工夫も必要です。いずれも、本人が不安に思っていることを取り除けるよう、周囲が協力して支え合うことが重要です。

介護をする人が疲れてしまうと介護の質が下がり、結果的にアルツハイマー型認知症の人にも悪影響となります(なお、本人はそれ以上に疲れている可能性もあります)。そのため、介護をする人も休みながら力まずに介護を行っていくとよいでしょう。

介護に関する悩みは地域包括支援センターで相談することも可能です。地域包括支援センターには保健師や社会福祉士、ケアマネジャーなどの専門職員が配置されているため、介護に関するさまざまなアドバイスを受けることができます。

アルツハイマー型認知症の人への支援でもっとも大切なことは、否定したり無理強いしたりすることなく本人の気持ちに寄り添うことです。そうすることでアルツハイマー型認知症の人は安心し、症状が安定することもあります。

ただし、介護は長期間にわたることもあるため、家族や周囲の人が疲れてしまうことがあります。そのため、医師と相談したり、デイケアや介護施設など専門機関の協力を得たりしながらアルツハイマー型認知症の人をサポートしていくとよいでしょう。

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  • 栄樹庵診療所 院長、東京慈恵会医科大学 精神医学講座 客員教授、東京慈恵会医科大学附属病院 精神神経科 客員診療医長

    繁田 雅弘 先生

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