疾患ガイド

認知症のサイン:症状のチェックポイントと検査、支援の取り組み

認知症のサイン:症状のチェックポイントと検査、支援の取り組み
浦上 克哉 先生

鳥取大学 医学部 保健学科 認知症予防学講座(寄付講座) 教授

浦上 克哉 先生【監修】

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

認知症を早期に発見できれば、進行を抑える新しい治療薬を選択できる可能性や、本人らしい生活を続けるための準備ができる可能性があります。この記事では、自宅で確認できる認知症のサインと受診のタイミング、そして検査や認知症患者さんとその家族を支える取り組みについて解説します。

👉 このパートをまとめると
家族や身近な方が「以前と違う」と感じたとき、それが単なる加齢によるものなのか、病的な変化なのかを見極めることは容易ではありません。日常生活で観察すべき具体的なポイントを理解することが重要です。

以下の項目は、認知症の初期段階で現れやすい変化を整理したものです。これらは単なる困った行動ではなく、脳の機能低下を示唆するサインであると考えられています。

記憶力(新しいことを覚える力)の低下

  • 数分前に電話していた相手の名前を忘れる。
  • 同じことを何度も言う、聞く。
  • 置き忘れやしまい忘れが目立つ。

見当識(時間や場所の感覚)の低下

  • 今日の日付が分からなくなる。
  • 慣れた道で迷うことがある。

判断力・実行機能(段取りや理解力)の低下

  • 料理の味付けを間違える。
  • おつりの計算が苦手になり、財布に小銭がたまっている。
  • 車の運転中、アクセルとブレーキを踏み間違えそうになる。
  • 掃除の段取りが悪くなる、部屋の隅々まできれいにできなくなる。
  • 洗濯機の使い方が分からなくなる。
  • テレビ番組の内容が理解できなくなる。
  • 新しく買った家電製品の使い方が覚えられない。

意欲・感情(性格や気分)の変化

  • これまで好きだったものや趣味に興味を示さなくなる。
  • ふさぎ込んで、何かすることを億劫がる、嫌がる。
  • 身だしなみに気を遣わなくなる。
  • 些細なことで怒りっぽくなる(易怒性(いどせい))。
  • 頑固になる。
  • 財布や通帳を盗まれたと人を疑う(物盗られ妄想)。

このチェックポイントは、日常生活での“気付き”を促すためのものであり、医学的な診断を行うものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。

👉 このパートをまとめると
チェックポイントで気になる点があった場合、もう少し様子を見ようと考える方も少なくありません。しかし、認知症の手前の段階で適切な治療を始めると、認知症への進行を遅らせたり予防したりすることができる可能性があります。

軽度認知障害(MCI)とは、認知症の前段階であり、認知機能の低下は見られるものの、日常生活は自立している状態を指します。この段階は、必ずしも認知症に移行するわけではありません。MCIの段階で適切な介入(食事や運動等の生活習慣の改善、薬物療法など)を行うことで、16~41%程度の方が正常範囲に回復するという報告もあります。

認知症には原因となる病気が複数ありますが、日本で最も多い病気は、脳内にアミロイドβと呼ばれるタンパク質が蓄積して生じるアルツハイマー病です。アルツハイマー病が原因の認知症は、アルツハイマー型認知症と呼ばれます。

近年、日本で承認された抗アミロイドβ抗体薬(レカネマブ、ドナネマブ)は、脳内に蓄積したアミロイドβを除去し、病気の進行を抑制する効果が期待されるアルツハイマー型認知症の治療薬です。この薬の対象者はアルツハイマー病によるMCIまたは軽度の認知症に限られ、中等度以上に進行した場合は適応外となります。また、主な副作用として脳のむくみや微少出血があり、定期的にMRI検査で副作用の有無を確認する必要があります。

👉 このパートをまとめると
チェックポイントに照らし合わせて変化を感じた場合、かかりつけ医への相談や専門医療機関(精神科や老年科、もの忘れ外来、脳神経内科など)を受診することが推奨されます。医療機関では問診や認知機能検査、画像検査などが行われます。

まずはかかりつけ医に相談するか、お近くの精神科や老年科、もの忘れ外来、神経内科、脳神経内科・外科、心療内科などが設置されている医療機関を受診しましょう。自治体のWebページに、“認知症疾患医療センター”として受診可能な医療機関の一覧が掲載されている場合もあります。

医療機関では、医師による問診に加え、認知機能を客観的に評価するため、以下のような認知機能検査が行われます。これらは現在の状態を正しく把握するための指標であり、テストとして身構える必要はありません。

改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)

見当識や記憶力、計算能力などを評価する検査です。質問と回答は全て口頭で行われます。

ミニメンタルステート検査(MMSE)

見当識や記憶力、計算能力などの評価のほか、書字や図形描写などが含まれる検査です。

認知症の内科的な原因の有無を調べるために行われます。感染症や甲状腺機能低下症、ビタミンBの不足などが認知症を引き起こしている可能性があります。

認知機能低下の原因を特定するために、脳の画像検査が行われます。主にMRI検査やCT検査によって、脳の萎縮や脳血管障害の有無を確認します。MRI検査とCT検査は、正常圧水頭症慢性硬膜下血腫脳腫瘍などの鑑別診断に役立ちます。

さらに詳しく調べるため、脳内の血流を確認するSPECT検査やPET検査が用いられることもあります。また、アルツハイマー病が疑われる場合は、アミロイドβの蓄積を調べるため、アミロイドPET検査や脳脊髄液検査(のうせきずいえきけんさ)が行われる場合があります。

👉 このパートをまとめると
もし認知症と診断された場合、2026年現在の日本では、認知症患者さんと家族の生活を支えるために多くの選択肢があります。

アルツハイマー型認知症レビー小体型認知症では、薬物療法が検討されることがあります。また全ての認知症患者さんに対して、リハビリテーションや心理療法などの非薬物療法が行われます。

薬物療法

アルツハイマー型認知症の治療薬には、抗アミロイドβ抗体薬のほか、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)やNMDA受容体拮抗薬(メマンチン)などの薬も存在します。これらは神経伝達物質を調整することで、記憶障害や意欲低下などの中核症状を一時的に改善・維持する効果があります。ドネペジルは、“αシヌクレイン”と呼ばれるタンパク質が脳に蓄積して生じた“レビー小体”という凝集体が多発するレビー小体型認知症にも保険適用となっています。

非薬物療法

認知症に対する非薬物療法にはさまざまな方法があり、患者さんに適したリハビリテーションが検討されます。たとえば、個々の認知機能に合わせた課題を行う“認知機能訓練”や過去の思い出を語り合う“回想法”、運動療法、音楽療法などがあり、認知機能の改善や維持、心理的な安定をもたらすために行われます。

認知症を早期発見することで、将来の医療やケア、財産管理について、自分の意思を表明し、家族や医療従事者などと共有することができる場合があります。これを“アドバンス・ケア・プランニング(ACP)”や“人生会議”と呼びます。どこで暮らしたいか、どのような医療を受けたいか、などをあらかじめ話し合っておくことは、患者さん本人の尊厳を守るだけでなく、将来の家族の迷いや負担を軽減することにもつながります。

介護をする家族を支援するための取り組みが、各自治体で行われています。お住まいの自治体に相談窓口や認知症カフェ、家族の会などがあるか、調べてみましょう。また、ケアマネジャーと相談しながら、デイサービスやショートステイ、訪問介護などの介護保険サービスを適切に利用することで、介護の負担を分散することも大切です。

Q. 本人が病院に行きたがりません。どう誘えばよいですか?

A. 「認知症の検査に行こう」と直球で伝えると、不安や拒否感を招くことがあります。「最近疲れやすそうだから、一度健康診断に行こう」「健康チェックを一緒に受けよう」と、健康管理の一環として誘うのが有効な場合があります。また、かかりつけ医から受診をすすめてもらうのも1つの方法です。

医療従事者がご自宅を訪問する“認知症初期集中支援チーム”を利用できる場合もありますので、地域包括支援センターに相談してみましょう。

Q. 認知症のチェックポイントに当てはまることが多かったら、すぐに認知症ですか?

A. いいえ、必ずしもそうではありません。うつ病甲状腺機能低下症、ビタミンBの欠乏などでも、一時的に認知機能が低下することがあります。これらは適切な治療で改善する可能性があるため、自己判断せず、専門医の診断を受けて原因を特定することが重要です。

認知症のサインをチェックすることは、適切な治療や支援を受けたり、自分らしい生活を守ったりするための第一歩です。家族やご自身が認知症かもしれないと感じたら、1人で抱え込まず、かかりつけ医や専門医に相談しましょう。

受診について相談する
  • 鳥取大学 医学部 保健学科 認知症予防学講座(寄付講座) 教授

    浦上 克哉 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

医師の方へ

様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。

学会との連携ウェビナー参加募集中

関連記事

  • もっと見る

    関連の医療相談が28件あります

    ※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。

    「認知症」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。
    実績のある医師をチェック

    認知症

    Icon unfold more