大阪大手前つぼもと消化器内視鏡・肛門外科クリニック 院長/坪本 貴司 先生
お尻からの出血や痛み、違和感(残便感、腫れぼったさなど)があると、「痔の症状」と考える人は少なくない。しかし、出血などの症状の背景には、大腸の病気が隠れていることもある。肛門(こうもん)の病気と大腸の病気では似た症状がみられることもあり、症状だけで原因を見分けるのは容易ではない。
大阪大手前つぼもと消化器内視鏡・肛門外科クリニックの院長、坪本 貴司(つぼもと たかし)先生は、消化器と肛門の双方を専門とする立場から、「お尻の症状だからこそ、肛門だけでなく大腸まで含めて診る視点が大切」と語る。その理由や肛門の症状との向き合い方について、坪本先生に伺った。
お尻からの出血や痛み、違和感があると、多くの方はまず痔を思い浮かべるのではないでしょうか。実際に痔が原因であることもありますが、同じような症状が、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)などの腸の炎症、時には大腸がんによって現れることもあります。
とくに痔になった経験がある方は、出血があっても「痔の再発」「いつもの症状」と受け止め、受診が遅れてしまうことがあります。
以前と似た症状でも、今回も原因が同じとは限りません。自己判断せず、症状の原因を確かめることが大切です。
大腸は直腸を経て肛門へとつながっています。そのため、お尻に現れている症状は、肛門だけの問題ではなく、その奥にある大腸の病気から生じている可能性もあります。
診療の際に大切なのは、お尻とお腹を別々のものとして捉えるのではなく、症状がどこから生じているのかを一連のつながりの中で考えることです。
肛門と大腸の両方の視点から診ることで、目の前の症状だけでなく、その背景にある病気の可能性まで含めて検討できると考えています。
ただし、お尻の症状がある方全員に、初めから大腸内視鏡検査が必要になるわけではありません。まずは症状やこれまでの経過を伺い、肛門の状態を確認したうえで、大腸まで調べる必要があるかを判断します。
たとえば、出血の色や量、症状が続いている期間、便通の変化、年齢、これまでに受けた検査などは、さらなる検査の必要性を考える手がかりになります。肛門の診察で、症状を引き起こしていると考えられる病変が見つかることもあります。一方、症状が長引いている場合や、大腸の病気を否定できない場合には、大腸内視鏡検査を検討します。
お尻の症状は、恥ずかしさもあって相談しづらく、「そもそも、どこを受診すればよいのか分からない」という声もよく聞きます。肛門のことは肛門科、お腹のことは消化器内科などと分けて考えると、どちらを受診すべきか迷ってしまうのも無理はありません。
しかし、症状の原因が肛門にあるのか、大腸にあるのかを、ご自身で見分けることは困難です。受診先に迷ったときは、肛門科でも消化器内科でもよいので、お尻やお腹の症状について相談できる医療機関を受診するとよいでしょう。診察の結果に応じて、必要な検査や治療を受けたり、より専門的な診療を行う医療機関を紹介してもらったりすることができます。
「恥ずかしい」「いつもの痔だろう」と1人で抱え込まず、気になる症状があれば、まずは医療機関で原因を確かめることが大切です。
取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。