連載クリニックの現場から

たっぷり寝たのに、眠いのはなぜ? 寝不足ではなく「過眠症」である可能性

公開日

2026年10月16日

更新日

2026年10月16日

更新履歴
閉じる

2026年10月16日

掲載しました。
Da667083ec

グッドスリープ・クリニック 院長/佐藤 拓 先生

夜はしっかり眠れているのに、日中どうしても強い眠気に襲われる。そんな悩みは「気合いが足りない」「怠けている」といった思い込みなどから、本人も周囲も見過ごしてしまいがちだ。しかし、その眠気の背景には「過眠症」という病気が隠れていることがある。東京・浜松町にあるグッドスリープ・クリニック院長であり、日本睡眠学会 総合専門医でもある佐藤 拓(さとう たく)先生に、日中の強い眠気との向き合い方について伺った。

その眠気、まず確かめたいこと

日中の眠気の原因として、まず多いのは単純な睡眠不足です。自分では足りているつもりでも、実際には必要な睡眠時間に届いていないことは少なくありません。

また、睡眠時間は足りていても睡眠時無呼吸などで眠りの質が下がっていると、しっかり休めず日中に眠気が出ます。生活リズムの乱れも、眠気の一因になります。


ですから、日中の眠気が気になるときは、まず睡眠時間が足りているか、眠りの質が保たれているか、生活リズムが整っているかを見直すことが出発点になります。

整えても眠いなら、「過眠症」の可能性

ところが、睡眠を十分にとり生活リズムを整えても、なお強い眠気が続く場合があります。こうしたケースでは「過眠症」という病気が考えられます。

過眠症は、睡眠不足では説明できない強い眠気が続き、日常生活に支障をきたす病気です。代表的なものに、ナルコレプシーと特発性過眠症があります。どちらも日中の強い眠気を主な症状としますが、伴いやすい症状には違いがあります。 

ナルコレプシーでは、大笑いや驚きなど強い感情をきっかけに体の力が抜けたり、寝入る瞬間に金縛りや幻覚といった体験をしたりすることがあります。一方、特発性過眠症では、睡眠時間が長くなったり、目覚めた後もしばらく頭や体が十分に働かないといった特徴があります。
いずれも、本人の意志や生活習慣だけの問題ではなく、脳の睡眠と覚醒の仕組みが関係していると考えられています。

「眠気を抑える」から「原因に向き合う」へ

過眠症の治療は、これまでは日中の眠気そのものを抑える薬物療法が中心でした。
眠気という症状をやわらげ、日常生活を送りやすくする、いわば対症療法的なアプローチです。

近年はこれに加えて、眠気が起こる「原因」により近いところに働きかける治療の研究が進んでいます。

たとえば、先に挙げたナルコレプシーでは、脳の中で目を覚ました状態を保つ「オレキシン」という物質が不足していることが分かっています。この不足を補うなど、眠気の大もとの仕組みに着目した新しいアプローチが注目されています。

症状を抑えるだけでなく、なぜ眠気が起こるのかという根本に目を向ける方向へ治療が少しずつ広がってきているのです。

「ただの眠気」で片づけないために

日中の強い眠気は、居眠りによる事故や仕事・学業への支障など、生活に大きな影響を及ぼすことがあります。一方で、「自分の頑張りが足りないだけ」と抱え込み、受診にたどり着いていない方も多くいらっしゃると思います。

生活習慣を整えてもなお続く強い眠気の場合は、体からのサインかもしれません。日中の眠気に長く悩んでいるなら、我慢や自己判断で終わらせず、一度、睡眠障害を専門とする医師に相談してみましょう。

 

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

クリニックの現場からの連載一覧