疾患ガイド

ミニメンタルステート検査(MMSE)とは? 評価の基準について解説

ミニメンタルステート検査(MMSE)とは? 評価の基準について解説
井原 涼子 先生

東京都健康長寿医療センター 健康長寿イノベーションセンター 臨床開発ユニット長

井原 涼子 先生【監修】

目次
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ミニメンタルステート検査(MMSE)とは、認知機能の状態を調べる検査です。アルツハイマー型認知症を診断するときに、スクリーニング検査の1つとして広く行われています。この記事では、MMSEの標準的なカットオフ値(境界となる数値)の定義から、アルツハイマー型認知症治療薬である抗アミロイドβ抗体薬(レカネマブ、ドナネマブ)の適応基準まで解説します。

👉 このパートをまとめると
MMSEにおいて、23点以下は認知症の疑い、27点以下は軽度認知障害(MCI)の疑いを示します。

MMSEは、国際的に広く行われている認知症のスクリーニング検査です。ご自身がいつ・どこにいるのかという“見当識(けんとうしき)”や、記憶力、計算力などの質問について口頭で答えるだけでなく、注意力の課題や、文章を読む、書く、図形を模写するなどの動作を行う課題(動作性課題)もあります。検査時間は5~10分程度で、満点の場合は30点となります。

MMSEではカットオフ値を基準として、認知機能の低下が病的なものであるかを判断します。

日本では、MMSEにおける認知症のカットオフ値は23点/24点であり、23点以下の場合は“認知症の疑い”と判定されます。軽度認知障害(MCI)*のカットオフ値は27点/28点で、27点以下の場合は“MCIの疑い”となります。

ただし、これらはあくまでスクリーニングの際の目安となるカットオフ値であり、MMSEの点数だけで認知症やMCIと診断されることはありません。認知症やMCIといった状態の診断は、あくまで日常生活における障害の重症度の評価に基づいて行われます。これらに加え、なぜそのような状態になっているか、原因を調べる目的で、脳の画像検査や血液検査など、複数の検査が組み合わされて行われます。

*軽度認知障害(MCI):認知症の前段階。認知機能の低下はあるものの、日常生活の障害はみられない状態。

MMSEを含め認知機能を評価する検査では、検査を受けた時点の患者さんの体調や心身の状態によって点数が変動します。たとえば、睡眠薬の服用や寝不足、緊張で言葉がすぐに出ないなどの理由によって、本来の認知機能よりも点数が低くなる可能性があります。また、MMSEでは教育を受けた年数の長さが点数に影響を与えるといわれており、教育年数が16年以上の患者さんは、8~15年の患者さんよりも点数が高いと報告されています。そのため、より長いスパンで障害を評価する日常生活の問診のほうが診断上有用なのです。

👉 このパートをまとめると
近年、アルツハイマー型認知症の治療薬として、抗アミロイドβ抗体薬が承認されました。この薬の投与対象となるかを判断する検査の1つにMMSEがあります。

認知症には複数の種類があり、原因となる病気に応じて分類されています。日本で最も多い原因は、脳内にアミロイドβと呼ばれるタンパク質が蓄積して生じるアルツハイマー病です。アルツハイマー病によって引き起こされた認知症は、アルツハイマー型認知症と呼ばれています。

近年、日本で抗アミロイドβ抗体薬(レカネマブ、ドナネマブ)と呼ばれる薬が承認されました。抗アミロイドβ抗体薬は、脳内に蓄積したアミロイドβを除去し、病気の進行を抑制する効果が期待される、アルツハイマー病によるMCIおよび軽度の認知症の治療薬です。

この薬の対象者はアルツハイマー病によるMCIまたは軽度の認知症に限られ、中等度以上の認知症に進行した場合は適応外となります。投与対象かどうかを判断する検査の1つとして、MMSEが用いられています。

なお、重要な副作用として脳の微小出血や脳のむくみが生じることがあるため、治療中は定期的にMRI検査を行う必要があります。

レカネマブあるいはドナネマブの投与対象となる条件には、以下のような基準が含まれています。

  • レカネマブ……MMSEの点数が22点以上
  • ドナネマブ……MMSEの点数が20点以上28点以下

MMSEの点数のほか、臨床認知症尺度(CDR)*のスコアが0.5(認知機能低下が疑わしい)あるいは1(軽度の認知症)であることや、MRI検査が実施可能であるかどうかも確認されます。

*臨床認知症尺度(CDR):認知症の重症度を評価する指標。0(障害なし)~3(重度の認知症)まで0.5刻みの5段階で評価される。

Q. MMSEと改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)では、どちらの結果を信じるべきですか?

A. 両者はどちらも認知症のスクリーニング検査として用いられていますが、評価の重点が異なります。HDS-RはMMSEよりも記憶に関する項目が多くなっており、MMSEには含まれない物事をこなす能力を評価する課題が含まれます。一方で、MMSEは言語の能力を評価する課題がHDS-Rよりも多いです。また、MMSEとHDS-Rには高い相関があるため、MMSEで低い点数となった場合は、通常HDS-Rでも同様の結果となります。認知症は1つの検査結果だけで診断されるわけではなく、問診や複数の検査結果を鑑みたうえで、医師が総合的に判断します。

Q. MMSEの点数を上げるため、事前に練習してもよいですか?

A. MMSEやHDS-Rなどは、検査時点での患者さんの認知機能を把握するために行われており、事前の練習は推奨されません。なお、認知機能を調べるための検査はMMSEやHDS-Rのほかにも複数存在し、どの検査が行われるかは実施する施設や患者さんの状態などに応じて判断されます。また、認知症のスクリーニング検査に加えて、より詳細な検査が実施される場合もあります。

MMSEの点数は、その検査が行われた時点での認知機能を調べるための指標です。MMSEの結果だけで認知症あるいはMCIと診断されることはありませんが、ご自身にとって最適な医療選択を行うための助けとなります。

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