群星沖縄臨床研修センター センター長 、筑波大学 客員教授、琉球大学 客員教授、獨協大学 特任...
徳田 安春 先生
筑波大学附属病院 水戸地域医療教育センター
梶 有貴 先生
Choosing Wisely
低線量スパイラルCT(通称cat、以下、CT)は、肺がんの初期徴候を見つけるために用いられる医学検査のひとつです。検査でがんが発見されれば、速やかに治療が始められます。しかし、タバコを少ししか吸わない方や、15年以上前にタバコをやめた方に対しては、CTは役に立たちません。また、55歳以下や80歳以上の人には一般的に勧められず、ヘビースモーカーの人でも検査により恩恵を受けることができる方はわずかです。そのため、検査を受ける前に、本当に受けるべきかを十分に考えるべきでしょう。その理由を以下に示します。
いくつかの研究により、以下に示すリスクを持っている人には、わずかではありますがCTを受けるメリットがあることが示されています。
1000人の高リスクの人にCTをすると、約3人は早期に肺がんが見つかり、治療により死を免れることができます。また、13人は肺がんが見つかり治療をしても死は免れないとされています。
低リスクの人にとっては、CTは有用ではありません。低リスクの人に対するCTが延命につながったということを証明した研究は報告されていないのです。
高リスクの人に対してCTを行っても、誤解を生むような結果が出てしまうことがあります。仮に、高リスクの人100人にCTを実施したとすれば、約40人に何らかの異常が見られることになります。しかし、実際に肺がんだと診断されるのはそのうちの2、3人程度なのです。肺がんではない、症状を来さない病気の発見により、さらなる検査が実施されることになります。多くの場合、何回ものCTの追加が必要になり、生検や手術まで必要となることもあります。これらは、出血や肺虚脱などの合併症を引き起こす可能性もあります。
また、低リスクの人にとっても、CTが誤った警告を出してしまうことがあり、不必要な懸念を引き起こしかねないのです。
低線量CTの放射線被爆量は、一般的な胸部X線検査の20倍にものぼります。放射線にあたればあたるほど、がんになるリスクは上昇するので、放射線にあたらないに越したことはないのです。
米国では、CTは1回につき100ドル~300ドル以上もの費用がかかります。CTの検査費用を保険でまかなうことができるのは、進行性肺がんになる危険性が非常に高いと認定された場合のみです(★日本では異なります)。さらに、CTを実施すると特段意味をなさない追加検査や処置までも実施され、費用がよりかさむこともありえます。
以下の場合にはCTを検討しましょう
これらの高リスクの人にとっては、CTによる利益はCTに伴うリスクを上回るでしょう。しかし、これは高リスクでない人にはあてはまりません。高リスクでない人に対するCTの有益性は証明されていません。
肺がんを予防するためには、まず禁煙をしましょう。禁煙はCTよりもよい予防策となります。
スクリーニング検査は、がんの早期発見に役立ちます。しかし、多くのがんは完治できません。生活習慣を改めることによって、わずかかもしれませんががんになる危険性を減らせます
死に至る肺がんの原因として最も多いのは、喫煙です。100人の肺がん患者のうち、90人は喫煙が原因でがんになっています。さらに、喫煙は喉頭がん、口腔がん、咽頭がん、膀胱がん、腎がん、膵がんといった他のがんの危険性も高めます。喫煙によって、これらのがんによる死亡率が60~70%上昇します。しかし、一度禁煙すれば、がんの危険性はその時点から低下していくので、15年以上禁煙できている人にとってはスクリーニングの検査は薦められていません。禁煙の補助として、ニコチンパッチや他の薬剤などの医療資源を利用することができるので、医師に相談するとよいでしょう。
女性の場合100人の新規がん患者のうち7人、男性の場合100人の新規がん患者のうち4人には、肥満が関係しているとされます。肥満はがんによる死亡率を40%上昇させるとされ、特に子宮がんや咽頭がんといった特定のがんで顕著です。
体を動かすことは、大腸がんになる危険性を30~40%低下させます。より長時間、より高負荷で、頻度を上げて運動をすることで、危険性をより減らすことができます。加えて、女性であれば乳がんになる危険性を20%かそれ以上に低下させることができるとされています。
ラドンとは目には見えずにおいもない気体ですが、放射能があります。ラドンによって肺がんの危険性が高まるとされ、喫煙者であればさらに高まるとされています。もし自宅のラドン濃度が高ければ、認定された業者に依頼して、建物の外にラドンを排出する装置を取り付けてもらうとよいでしょう。
※本記事は、徳田安春先生ご監修のもと、米ABIMによる “Choosing Wisely” 記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。
翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム 学生メンバー・大阪医科大学 荘子万能
監修:梶有貴、徳田安春先生
翻訳監修:梶有貴
群星沖縄臨床研修センター センター長 、筑波大学 客員教授、琉球大学 客員教授、獨協大学 特任教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of General and Family Medicine 編集長
関連の医療相談が26件あります
ガンマナイフ治療効果について
私の治療に関する質問と言うより、治療効果そのものに対する質問です。 ガンマナイフ治療について、その効果について多数の機関が情報を載せていますが、「80%〜90%の治療効果」的な表現が多いかと思います。 大変、効果のある治療と思いますが、反面、「10%〜20%は効果が出ない。」と言う事もあるのかな?と思ってしまいます。 そこで質問ですが、 ①ガンマナイフ治療後の効果判定は治療後どのくらいで実施されるのでしょうか ②残念なことに、期待した効果が出なかった場合の治療方法はどのようなものが考えられますか? 教えて頂ければ幸いです。
高齢者のがん 治療方法について
父が肺がんで、ステージⅢ、他所への転移は見られないが、同肺内での転移は見られると診断されました。高齢のため、手術及び全身への抗がん剤治療は勧めないと医師に言われ、現在、分子標的薬の検査をしている段階です。検査入院から1か月が経ち、治療するとしても、いつから始まるかわからない状態です。本人は、咳、痰の症状以外は、元気の様子ですが、このペースで治療待ちをしていて良いのか、他の治療方法も検討した方が良いのか、教えてください。
CT検査にて、肺がんと診断されました。今後の選択肢について教えて下さい。泣
東京在住、28歳会社員です。 5日前、私の大好きな大好きな広島に住む祖父が肺癌と診断されてしまいました。毎日、涙が止まりません。遠く離れた場所でコロナの感染リスクを考えると、お見舞いに行くことすら許されず、途方に暮れながらも情報収集をしていたところ、このサービスの存在を知り、この度ご質問させて頂きました。 祖父の現在の状況は下記です。 先週、高熱を出し、病院に行きPCR検査を受けたところ陰性でした。しかし、CT検査を実施したところ肺の1/3程度の影があり、肺がんだと診断されました。 詳しい検査をするため、がんセンターの呼吸器内科に転院する予定です。 これまでの病歴として、私が知ってる限りでは、10年ほど前、肺気腫(喫煙者であったが肺気腫と診断され、そこから禁煙)になり、その後、自律神経失調症と診断され、真夏の布団の中で背中が冷たいと感じるようになり、1日のほとんどをベットで過ごすようになりました。また2.3年前には、肺炎で入退院を2回しています。 まだ不確定要素も多く、判断が難しいかとは思いますが、今回は、本当に診断結果が正しいのか?そして肺がんの場合、祖父にとって最善な治療法は何か?(外科的、内科的治療含めて)など、これからの選択肢について教えて頂きたいという一心でご連絡致しました。 祖父が、今まで通り祖母と仲良く家で暮らせる日々を取り戻してあげたいという一心で、今回ご連絡させて頂いています。どうかどうかよろしくお願いいたします。
肺がんの手術と心臓弁膜症
肺がんステージ1との診断があり、来月手術予定ですが、心電図検査で心臓に異常が見つかりました。心臓弁膜症は5段階の3との診断結果ですが、肺がんの手術には問題ないので、薬や治療等何もうけていません。本当に大丈夫でしょうか?息苦しいなどの自覚症状は昨年秋ごろから続いています。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「肺がん」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。