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肺がんのTNM分類と組織型分類とは?〜がんの進行度合いや、治療方針を決めるときに使われる〜

肺がんのTNM分類と組織型分類とは?〜がんの進行度合いや、治療方針を決めるときに使われる〜
櫻井 裕幸 先生

日本大学医学部附属板橋病院 呼吸器外科 部長、日本大学医学部外科学系呼吸器外科学分野 主任教授

櫻井 裕幸 先生

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肺がんの治療方針を決定する際は、病気の広がり、組織型(顕微鏡によるがんの分類)、患者さんの体の状態(体力)、希望などを基に総合的に検討する必要があります。特に、病気の広がりを表すTNM分類によるステージ(病期)分類や組織型分類は、肺がんの治療方針を決定するうえで重要な指標となります。

このページでは、TNM分類や組織型分類の概要や肺がんの治療方針について詳しく解説します。

TNM分類とは、がんの進行度合い(ステージ)を判断する際に用いられるがんの分類方法です。TNM分類は国際対がん連合(UICC)が定めた世界共通の分類で、肺がんを含む28つのがんに用いられ、7~8年おきに改定されています。

TNM分類では、原発巣*にあるがんの大きさや広がりを示す“T因子(Tumor:腫瘍(しゅよう))”、リンパ節へのがんの広がりを示す“N因子(Node:節)”、遠隔転移の状態を示す“M因子(Metastasis:転移)”という3つの視点からがんを評価し、それを組み合わせることによって病気の進行度合い(ステージ)を判断します。

それぞれ分類はT0、T1、T2……というように数字で大別され、より細かい分類がアルファベットで加えられています。TNM分類は数字が大きくなるほど進行していると評価されます。

肺がんでは、上で述べた3つの評価を基にステージに分類します。ステージは0~IV期で大別されるほか、より細かい分類がアルファベットで加えられており、TNM分類同様、数字が大きくなるほど病気が進行していることを示します。

*原発巣:最初にがんが発生した臓器のこと。最初にがんが発生した部位が肺の場合、肺が原発巣となり肺がんの治療が検討される。

肺がんは、胸部X線検査喀痰細胞診(かくたんさいぼうしん)(痰の中にがん細胞が混じっていないかどうかを調べる検査)、胸部CT検査、気管支鏡検査、経皮的針生検、胸腔鏡検査などにより、がんが疑われる場所から採取した組織や細胞を顕微鏡で観察し(病理検査)、がん細胞を確認して確定されます。組織や細胞を採取する検査は、がんが発生した部位によって選択されます。

肺がんのステージを判断する際には、画像検査や病理検査の結果を基に判断します。画像検査では、まずは胸部X線検査や胸部CT検査によってがんを疑うものが見られるかどうか、見られた場合にその大きさや周囲の臓器への広がりはどうかということを確認します。また、肺以外のほかの臓器(骨・脳など)への転移がないかどうか確認するために、PET-CT検査やMRI検査、骨シンチグラフィなどが行われることもあります。

では、実際はどのような定義でTNM分類が行われるのでしょうか。

以下では、2017年に定められたUICC-8版のTNM分類に基づき、それぞれの分類の概要とそれによるステージの分類について説明します。

TMN分類表

T因子はがんの大きさ・広がりから決まります。大きさには充実成分径が用いられます。

充実成分とは

充実成分はCT画像などで見ると、がん内部の高い吸収値を示す部分(以下図:白く濃い部分)のことをいいます。

肺のCT画像
C Tで撮影した充実成分

N因子はリンパ節への広がりから決まります。所属リンパ節とは、そのがんに関与するリンパ節のことで、肺がんの場合、縦隔リンパ節、肺門リンパ節、肺内リンパ節などがあります。

N因子

M因子

M因子は遠隔転移があるかどうかで決まります。遠隔転移とは、原発巣から血管やリンパ管に入り込み、血液やリンパ液の流れから離れた別の臓器に移動し、そこで増えてしまうことをいいます。

上のようなTNM分類を組み合わせ、肺がんのステージ分類を以下のように決定します。一般的に原発巣のがんの大きさ・広がり(T)が大きいほどステージが進んでおり、リンパ節への広がり(N)があり、それが広いほどステージが進行しています。

ただし、がんの大きさ(T)が小さく、リンパ節への広がり(N)がない場合であっても、ほかの臓器への転移(M)がある場合には、もっともステージが進行した状態と判断されます。

素材:PIXTA/作成:MN

がんの組織型とは、がんを顕微鏡で見たときに分かる組織による分類です。肺がんの組織型は非小細胞肺がんと小細胞肺がんに分けられ、それぞれの分類によってがんの進行速度や転移のしやすさ、治療方針などが異なります。そのため治療方針を決定する際には、TNM分類によるステージ分類だけでなく、組織型分類を行うことが大切です。

非小細胞肺がんは肺がんの大多数を占める組織型で、さらに腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどに細分化されます。このうちもっとも発生頻度が高いのは腺がんで、非喫煙者や女性でもかかる可能性があり、症状が現れにくいことが特徴です。

また、扁平上皮がんは喫煙との関与が大きい肺がんとして知られており、肺の入り口に近い比較的太い気管支にがんができやすいので、咳や血痰など症状が現れやすいといわれています。大細胞がんは上で述べた2つよりは頻度の低いがんですが、発症すると増殖が速いことで知られています。

小細胞肺がんは肺がんの10~15%を占める組織型で、扁平上皮がんと同様に喫煙との関連が非常に高いといわれています。非小細胞肺がんと比較すると増殖が速く、転移を起こしやすいという特徴がありますが、非小細胞肺がんよりも抗がん剤による薬物治療や放射線治療が効果を示しやすいといわれています。

肺がんの組織型を調べるためには、病理検査が必要です。肺がんの病理検査では、前述のとおり喀痰細胞診や気管支鏡下検査、経皮的針生検、胸腔鏡下検査が実施されます。

肺がんでは、TMN分類によるステージ分類や組織型分類、患者さんの状態や希望などを基に、手術治療・放射線治療・薬物療法が検討されます。薬物治療では、細胞障害性抗がん剤のほか、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など、さまざまな種類の薬物が用いられることが特徴です。

肺がん治療の場合、特に組織型分類によって治療方針が大きく異なるといわれています。以下では、それぞれの組織型による肺がんの治療方法についてお伝えします。

非小細胞がんの場合、ステージがI~III期のときには手術治療が検討されます。手術治療が行われた場合、時に抗がん剤による薬物治療が組み合わせられることもあります。

III期でも手術が難しい場合には、放射線治療と薬物治療を組み合わせた治療が行われます。

また、もっとも進行したIV期では薬物治療が検討されます。

小細胞肺がんの場合、ステージに関係なく薬物治療を中心に治療を行うことが一般的です。がんが片方の肺にとどまっている限局型の場合には、細胞障害性抗がん剤による治療が一般的で、体の状態によっては放射線治療が併用されます。

進展型の場合も細胞傷害性抗がん剤による治療が中心ですが、時に免疫チェックポイント阻害薬が併用されることもあります。また、ごく早期の小細胞肺がんでは手術治療が検討されることもあります。

肺がんにはTMN分類のほかにもさまざまな分類があり、その分類に応じて病気の進行や治療方針が異なります。そのため、治療についてはがんの分類などについてよく理解して考えることが大切です。

ただし、肺がんの分類は複雑で理解しづらく、混乱したり悩んだりすることもあります。分からないことや不安なことがある場合には、担当医に相談し説明を受けることを検討しましょう。

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