乳がんは乳房周辺から発生するがんで、女性ががんで死亡する原因の約9%を占めています。乳がん治療の基本は手術でがんを取り除くことです。ただし、治療が成功したように思えていても、摘出し切れていなかったがん細胞が再び現れたり、別の場所にがんが転移したりするなど再発することもあります。では、再発を防ぐためにはどのような対策を行えばよいでしょうか。
本記事では、乳がんの再発率や再発防止の対策、再発後の治療について詳しく解説していきます。
乳がんの再発は治療後3年以内に起こることが比較的多いとされていますが、5~10年後に再発する場合もあります。
再発には“局所再発”と“遠隔転移”の2種類があります。“局所再発”は、術後の乳房や腋窩リンパ節(腋の下)にがんが発生することをいい、“遠隔転移”は、乳房から遠いリンパ節や、骨などにがんが発生することをいいます。局所再発の場合は根治(完全に治すこと)が見込めますが、遠隔転移では多くの場合で根治が難しいとされています。
乳がんの手術には主に乳房を温存する“乳腺部分切除術”と、乳房を全摘出する“乳腺全切除術”の2種類があります。手術法にかかわらず再発率は10%未満とされていますが、再発が起こる箇所に差が出ることがあります。乳腺部分切除術後に再発した場合、約80%は温存した乳房内に再発し、残りの約20%はリンパ節または遠くの臓器に転移(遠隔転移)するとされています。一方で、乳腺切除術後に再発した場合は約30%が遠隔転移だとされています。
また、2000年代のデータでは、無再発の生存率(術後10年)は約90%で、再発も含めた全生存率は約95%と報告されているので乳がんの予後はよいといえるでしょう。
乳がんの再発が多い部位は、腫瘍の近くの皮膚や骨、リンパ節などです。また、肺や肝臓、脳などの臓器に転移する場合もあります。また、再発すると再発した部位やがんの状態などによって自覚症状がある場合があります。たとえば、骨に再発(転移)した場合は骨に痛みが出る、肺や胸郭に再発した場合は咳が出るなどがあります。
さらに、遠隔転移の場合は根治することが難しいと考えられており、早期発見ができたとしても生存期間には変化がないとされています。一方、局所再発の場合は早期発見により根治の可能性が高くなる場合があります。
乳がんの手術後には再発予防のため抗がん剤やホルモン療法、放射線治療などの再発予防治療が行われることがあります。また治療後の経過観察として、問診、視診、触診を3~6か月ごとに行い、治療から5年間異常がなければ1年間隔で検査を行うことが一般的です。これにより、再発した際の早期発見の可能性が高まるとされています。そのため、手術後の治療や経過観察については医師の指示に従って通院をするとよいでしょう。
さらに、がんの再発を防ぐためには日常的に運動することが効果的だといわれています。そのため、医師の指導の下、ウォーキングやストレッチなどを日頃から行うよう心がけるとよいでしょう。そのほか、禁煙、節酒、食生活の見直しも、がん予防の一助となると考えられています。
乳がんが局所再発した場合の治療法は手術による病巣の全摘出です。がんが残っているなど、場合によっては放射線治療や薬物療法を追加で行うこともあります。一方、遠隔転移の場合はまずは生検を行なったうえで、転移していた場合は主にホルモン療法、抗がん剤投与、分子標的療法などの薬物治療を行います。ただし、治療方法については、乳がんのタイプによって以下のように変わります。
乳がんの再発は、術後の治療や経過観察によって予防・早期発見することが可能で、早期発見によって治癒の確率が高まることがあります。そのため通院を自己判断で中断することはせず、治療終了後も医師の指示に従って定期的な通院を行いましょう。また、ストレッチやウオーキングなど、日常的な運動でがん再発の予防ができるといわれるほか、禁煙、節酒、食生活の見直しなども再発防止のために必要です。いずれも、気になることがある場合は医師に相談しながら再発予防を心がけるようにしましょう。
国際医療福祉大学医学部 乳腺外科教授、順和会 山王病院 乳腺外科/部長
関連の医療相談が46件あります
先日の健康診断にて乳がん健診カテゴリー2と結果が来た
先日の健康診断にて乳がん健診カテゴリー2と結果が来ました。 自覚症状などはありません。 今回がはじめてのマンモグラフィー検査でした。 いちど病院に行って診察してもらうべきでしょうか。
乳がんの診断内容について
左胸、乳がんと診断され、全摘出が必要と言われました。それ以外の治療法が無いかが知りたいです。
乳がんの骨転移の痛みについて
7年前に左乳房全摘手術をうけました。その後抗がん剤、ホルモン療法を経て経過観察になりました。先日腫瘍マーカーの上昇が見られ、骨シンチとCTをとりましたが、明らかな所見はありませんでした。ただ、胸骨所見が不鮮明でおそらく転移ではないと経過を引き続き見ることとなりました。 一週間くらい前から右の鎖骨下に痛みがあり、痛みがひきません。前日までは痛みも何もなかったので、寝る姿勢が悪く、筋を痛めたのかとも思いますが、転移かと心配です。姿勢によっては痛みを感じませんが、不意に動かしたり、一部分を押すと痛みます。 骨転移の場合、昨日今日のレベルで急に痛みが現れるものなのでしょうか。 また、痛み方はどのようなものが一般的でしょうか。 よろしくおねがいします。
乳がんと卵巣の関係について
乳がんで、まもなく抗がん剤が始まります。卵巣にチョコレート嚢胞があり、経過観察中なのですが、乳がんの人は卵巣や子宮のがんにもなりやすいと聞いたことがあり、卵巣の検査には少し早いのですが、診てもらいたいと思っています。 抗がん剤治療中でも、卵巣の検査は可能ですか?何かしら抗がん剤の影響がでたりしませんか? 宜しくお願い致します。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「乳がん」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。