疾患ガイド

2型糖尿病の原因とは? 遺伝的要因と生活習慣

2型糖尿病の原因とは? 遺伝的要因と生活習慣
辻本 哲郎 先生

虎の門病院 分院 糖尿病内分泌科 部長

辻本 哲郎 先生【監修】

目次
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2型糖尿病の原因は、食べ過ぎや運動不足など生活習慣の乱れである」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、2型糖尿病の発症には、生活習慣などの環境要因だけでなく、遺伝的な発症のしやすさ(遺伝的要因)が深く関わっています。

この記事では、2型糖尿病のメカニズムとその原因、日本人が発症しやすい背景までを解説します。

👉 このパートをまとめると
人間の体では通常、食事で摂取した糖分をインスリンというホルモンによって細胞の中に取り込んでいます。2型糖尿病は、このインスリンの量や作用の不足により血糖値が慢性的に高くなる病気です。

私たちの体は、食事から摂取した糖分(ブドウ糖)を全身の細胞に運び、エネルギーとして利用しています。しかし、血液中のブドウ糖は単独では細胞の中に入ることができません。そのため、膵臓(すいぞう)がインスリンというホルモンを分泌することによって、ブドウ糖を細胞の中に取り込ませています。

したがって、健康な人は食後に血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が一時的に上昇しますが、すぐに食事前の状態に戻るといわれています。

インスリンの作用が不足すると、血液中のブドウ糖が細胞にうまく取り込まれなくなります。2型糖尿病は、インスリンの作用が不足することによって血液中のブドウ糖が多くなり、血糖値が高い状態が続く病気です。糖尿病にはいくつかのタイプがありますが、日本人の糖尿病のうち、約80~90%は2型糖尿病だといわれています。

👉 このパートをまとめると
2型糖尿病の要因は1つではなく、糖尿病になりやすい“遺伝的要因”に、食べ過ぎや運動不足などの“環境的要因”が加わることで発症します。

糖尿病になりやすい“遺伝的要因”に、肥満や運動不足といった“環境的要因”が組み合わさることで2型糖尿病を発症するケースが多いと考えられています。

遺伝的要因と環境的要因によって、インスリンが分泌されにくくなったり(インスリン分泌低下)、インスリンが十分にはたらかなくなったりします(インスリン抵抗性)。

インスリン分泌低下

遺伝的要因によって、膵臓からインスリンが分泌されにくくなります。

インスリン抵抗性

遺伝的要因に加えて、食べ過ぎや運動不足、肥満といった環境的要因によって、分泌されたインスリンが十分にはたらかなくなり、より多くのインスリンが必要になります。

インスリンを分泌する力が弱い人にインスリン抵抗性が加わると、膵臓はインスリンを過剰に分泌して対応しようとします。しかし、その状態が長く続くと膵臓が疲弊して、必要な量のインスリンを供給できなくなります。この供給と需要のバランスが崩れたときに、細胞はブドウ糖を取り込めなくなり、2型糖尿病が発症するといわれています。

👉 このパートをまとめると
日本人を含むアジア人は、遺伝的にインスリンを分泌する能力が欧米人より弱い傾向があり、軽度の肥満でも血糖値が上がりやすいといわれています。

近年の研究によって、日本人を含むアジア人は、欧米人と比較してインスリンを分泌する能力(インスリン分泌能)が遺伝的に弱い傾向があることが報告されています。

これは、軽度の肥満であっても、体が必要とする量のインスリンを十分に供給できなくなり、結果として血糖値が上がりやすくなることを意味します。欧米では高度な肥満の人が糖尿病を発症するケースが多いのに対し、日本では比較的軽度の肥満の人でも発症しやすいのは、この遺伝的な背景が一因と考えられています。

2型糖尿病には、さまざまな遺伝子が関与しているといわれています。特に、“KCNQ1”という遺伝子はインスリン分泌能の低下と関連すると考えられています。しかし、あくまで“なりやすさ”に関わる遺伝子であり、必ず2型糖尿病になるわけではありません。

👉 このパートをまとめると
2型糖尿病に関連する環境的要因には、食習慣や運動不足などの生活習慣が挙げられます。当てはまる習慣がある人は、インスリン抵抗性が上昇しないように、生活習慣を改善するとよいでしょう。

以下のような食習慣は2型糖尿病の発症リスクを上昇させるといわれています。

  • 間食が多い
  • 清涼飲料水の摂取が多い
  • 白米や白パンなどの食後血糖値が上昇しやすい高GI(グリセミック・インデックス)食品の摂取が多い
  • 食物繊維の摂取が少ない

運動習慣のない人、体を動かす時間が短い人、座っている時間が長い人などは、2型糖尿病の発症リスクが高いといわれています。

大量飲酒(日本酒換算で平均1日2合以上など)の習慣がある人は、2型糖尿病になりやすいといわれています。

日本では、BMI(体格指数)が25以上の肥満の方は、2型糖尿病を発症するリスクが高いことが知られています。BMIの値が高いほどリスクが上昇する傾向があります。

以前は「2型糖尿病は食べ過ぎや運動不足など個人の生活習慣が原因」という誤解があり、それが患者さんへのスティグマを生んでいました。しかし現在は、発症には遺伝的要因が関わることが解明されています。さらに環境的要因も個人の習慣だけでなく、加齢やストレス、社会環境などが複雑に絡み合って発症するため、決して“生活習慣の悪さ”だけが原因ではありません。

A. 2型糖尿病の環境的要因である生活習慣を改善することが予防の鍵とされています。具体的には、バランスの取れた食事を心がけ、間食や清涼飲料水を避けること、そしてウォーキングなどの定期的な運動を習慣づけることが重要です。また、体重を適正に保つことは、予防における目標の1つとなります。

A. 2型糖尿病は、現在の医療では完治が難しい病気とされています。しかし、治療によって血糖値を良好な範囲にコントロールすることによって、糖尿病のない人と変わらない人生を送ることは可能だと考えられています。早期に受診し、適切な治療を続けることが重要です。

2型糖尿病の原因について理解することは、ご自身の健康状態を客観的に見つめ直し、適切な次の行動を考えるための第一歩です。もし健康診断などで血糖値に関する指摘を受けた場合は、自己判断で放置せずに医療機関を受診しましょう。

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