乳がんは、何が原因となって起こるのでしょうか。また、遺伝子や食生活とは関連しているのでしょうか。この分野のスペシャリストである虎の門病院臨床腫瘍科部長の高野利実先生に、お話をうかがいました。
乳がんの発生には、「エストロゲン」という女性ホルモンが関係していると考えられています。
乳がんのリスクファクター(危険因子、乳がんが起こりやすい原因や環境)としては、以下が挙げられます。
その他、高脂肪食の摂取や、飲酒や喫煙、遺伝的要因も乳がんのリスクファクターと言われています。これらについては、以下に詳しく説明します。
一部の乳がん患者には、遺伝的要因が関わっていると言われていて、家族性乳がんと呼ばれることがあります。乳がんに非常に強く関わっている遺伝子に、BRCA1やBRCA2という遺伝子があります。
乳がんであると診断されたときは、家族歴(家族や近親者の病歴などの記録)を確認することが重要で、家族性乳がんの可能性がある場合には、遺伝子の検査を行うことも検討します。家族性乳がんの場合には、がんが発生していない乳房や卵巣にも将来がんができる可能性が高いと考えられるため、予防的な切除なども検討されます。遺伝子検査の結果は、家族や親戚にも影響を及ぼすため、検査の前に、遺伝カウンセリングを受け、検査の意味をきちんと理解し、受けるかどうかを慎重に検討する必要があります。
前に述べたように、乳がんは「エストロゲン」という女性ホルモンによって発症すると言われていますが、このエストロゲンの構造とそっくりな物質が存在します。それが「イソフラボン」です。イソフラボンは、大豆に多く含まれる成分です。大豆を適度に摂取することにより、エストロゲンの作用が軽減し、乳がんのリスクが減る可能性が示唆されていますが、イソフラボンを過剰に摂取すると、乳がんのリスクを高める可能性もあると言われています。
その他、乳がんのリスクとして高脂肪食が挙げられます。
がん研有明病院 乳腺内科 部長
がん研有明病院 乳腺内科 部長
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医・指導医日本乳癌学会 乳腺専門医
東京共済病院、帝京大学医学部附属病院、虎の門病院の3ヶ所で腫瘍内科を立ち上げたのち、2020年にがん研有明病院に乳腺内科部長として赴任。2021年に院長補佐となり、患者・家族支援部長、および、臨床教育研修センター長を兼任。日本臨床腫瘍学会専門医部会長、西日本がん研究機構乳腺委員長も務め、日常臨床のみならず、患者支援、腫瘍内科医育成、臨床研究、情報発信にも力を入れている。
Human-Based Medicine(HBM: 人間の人間に拠る人間のための医療)がモットー。読売新聞社「ヨミドクター」でコラム連載中(2024年7月時点)。著書は「気持ちがラクになる がんとの向き合い方」(ビジネス社)など。
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