
この記事では、大腸がんの初期症状や原因、新しい検査・治療法といった知識から、治療の費用やその後の生活における準備まで解説します。
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大腸がんとは、大腸(結腸・直腸)の粘膜に発生する悪性の腫瘍です。多くはポリープががん化して発生します。
大腸は、大きく分けて「結腸」と「直腸」の2つの部分から成り立っています。
がんが発生した場所によって、それぞれ「結腸がん」「直腸がん」と呼ばれ、両方を合わせて「大腸がん」と総称します。
大腸がんの多くは、はじめからがんとして発生するわけではなく、ポリープが変化して生じます。大腸の粘膜にできる良性のイボのようなものを「ポリープ」と呼びます。
全てのポリープががんになるわけではありませんが、一部のポリープが時間をかけて大きくなり、その過程でがん細胞に変化していくことがあります。
がんになる前のポリープの段階で発見し、切除することが、大腸がんの効果的な予防につながります。
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血便、便通異常、腹痛などが代表的な症状です。ただし初期は無症状のことも多いため注意が必要です。
□ 血便・下血:便に血が混じる、便の表面に血が付着する、赤黒い便が出る。
□ 便通の異常:急に便秘になった、あるいは便秘と下痢を繰り返すようになった。
□ 便の性状:便が細くなった。
□ 残便感:便を出し切っても、まだ残っている感じがする。
□ 腹痛・お腹の張り:しつこい腹痛やお腹の張りが続く。
ただし、初期の大腸がんは自覚症状がないケースも多くみられます。上記の症状がないから大丈夫と自己判断しないことが重要です。
がんが進行すると、腸が狭くなって便が出なくなったり、出血が続くことによる貧血を生じたりすることがあります。
血便が出ると不安を感じることもありますが、だからといって必ずしも大腸がんができているというわけではありません。たとえば、痔が原因で出血が生じていることもあります。
しかし、血便は消化管のどこかで出血しているサインです。自己判断で放置せず、専門医に相談するとよいでしょう。
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大腸がんの発症には、食生活・運動不足などの生活習慣も関わりがあるとされています。日常生活上のリスクを理解し、生活習慣の改善で予防につなげましょう。
大腸がんでは、以下の要因が発症リスクを高めると考えられています。
・脂肪や肉類に偏った食生活:特に動物性の脂肪、赤肉(動物性たんぱく質)の多量の摂取が発症に関連するとされています。
・飲酒・喫煙:過度なアルコール摂取や喫煙習慣も影響するとされています。
・運動不足:日常的に身体活動が少ないと腸の動きが悪くなるため、便が長く留まり発症に関連するといわれています。
上記の日常生活上の要因に注意して、しっかり野菜を食べる、過度の飲酒・喫煙を避ける、適度な運動を心がけるなどの対策を行うとよいでしょう。また、コーヒーを飲むことで女性の結腸がんの発症リスクを低下させる可能性についての報告もあります。
リスク要因を理解し、予防に努めたうえで、定期的ながん検診を受けることが重要です。
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健康診断(便潜血検査)で異常が見つかったら、内視鏡検査を受けるのが一般的な流れです。検査前日からの食事の調整や下剤の服用が必要です。
多くの人の受診のきっかけとなるのが、便に微量の血液が混じっていないかを調べる「便潜血検査」です。健康診断などで実施されます。これは体に負担なく行えるスクリーニング検査ですが、これだけではがんの有無は分かりません。
便潜血検査で陽性と判定された場合に行うのが、大腸内視鏡検査、いわゆる「大腸カメラ」です。先端に小型カメラがついた細いスコープを肛門から挿入し、大腸の内部を直接観察します。
この検査で、がんやポリープの有無、大きさ、場所などを確認できます。また、疑わしい組織の一部を採取して、がん細胞が含まれているかを顕微鏡で調べる(生検)ことで、最終的な確定診断が行われます。
✍️一言アドバイス
内視鏡検査は「痛い」「苦しい」というイメージがあるかもしれませんが、近年は鎮静薬(軽い麻酔)を使って、苦痛を和らげて検査を行うこともできます。検査への不安が強い人は、事前に医師に「楽に検査を受けたい」と伝えるとよいでしょう。
内視鏡検査の前には、腸内をきれいにするために食事制限や下剤の服用が必要です。具体的な方法は病院から指示がありますので、従うようにしましょう。
費用については、保険適用の3割負担で10,000円程度が目安ですが、ポリープの切除や生検などを行った場合は加算されることが一般的です。事前に医療機関に確認しておくとよいでしょう。
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ステージとは、がんの進行の度合いを示すものです。がんの大きさや転移の有無などにより決定されます。今後の治療方針を決めるうえで重要な指標となります。
ステージ(病期)とは、がんの進行の度合いを示すものです。がんがどの深さまで達しているか(深達度)、リンパ節への転移があるか(リンパ節転移)、他の臓器への転移があるか(遠隔転移)、という3つの要素を組み合わせて決定されます。0からIVの5段階に分けられます。
・ステージ0:がんが粘膜内にとどまり、リンパ節転移がない状態
・ステージI~II:がんが大腸の深いところに広がり、リンパ節転移がない状態
・ステージIII:リンパ節転移がみられる状態
・ステージIV:がんが大腸から離れた他の臓器に転移している状態
生存率を知ることには心理的な負担を伴いますが、予後について正しく知ることは、治療に向き合う助けにもなります。
国立がん研究センターのデータによれば、大腸がんのステージ別の5年生存率(ネット・サバイバル*)は以下のとおりです。このデータからは、大腸がんは早期に発見し適切な治療を行うことが重要と読み取れます。
ステージI:92.3%
ステージII:85.5%
ステージIII:75.5%
ステージIV:18.3%
国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計(2014~2015年5年生存率)より
*ネット・サバイバル:がんが原因での死亡のみを考慮した生存率。がん以外の原因による死亡(他の病気や事故など)は除外して算出される。
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大腸がんの治療としては、主に内視鏡治療、手術、薬物療法(化学療法)が行われます。転移がある場合などは、放射線療法が行われることもあります。どの治療法を選択するかは、ステージやがんの状態に基づいて決定されます。
ステージ0や一部のステージIの大腸がんでは、お腹を切ることなく、内視鏡検査と同じ要領でがんを切除する「内視鏡治療」が可能な場合があります。がんの状態によっては、追加で手術が行われることもあります。内視鏡治療は、体への負担が少なく、入院の期間は数日程度であることが一般的です。
がんがある程度進行している場合や、リンパ節転移の可能性がある場合には、がん細胞が広がっている可能性のある腸管と、周囲のリンパ節を一緒に切除する手術が行われます。
お腹に小さな穴をいくつか開けて行う「腹腔鏡下手術」や「ロボット支援手術」も行われています。従来の大きくお腹を切る手術に比べて、傷が小さく、術後の回復が早いのが特徴です。
また、リンパ節転移が確認された場合、再発予防のために薬物療法(化学療法)も行われます。
手術でがんを切除できない場合の治療として、または手術後の再発を予防する目的で、薬物療法(化学療法)や放射線療法が行われます。近年では、免疫チェックポイント阻害薬による治療など選択肢が広がっています。
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治療費が高額になった場合でも、負担を減らす公的制度が利用できる場合もあります。費用や生活について、相談窓口の利用を検討してもよいでしょう。
大腸がんの検査・治療にかかる費用は、がんの状態や治療法によって大きく異なります。
たとえば、腹腔鏡下手術を受ける場合、手術そのものは3割負担で20万円程度が目安となります。入院が必要な場合はその費用が加算されます。
後述する制度が利用できる場合は、実際の自己負担額はもっと少なくなります。
高額療養費制度とは、医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合に、その超えた分が払い戻される公的制度です。
上限額は年齢や所得によって異なるため、加入している医療保険(健康保険組合など)や、住んでいる自治体(役所の窓口など)に確認するとよいでしょう。
治療中であっても、できるだけ普段どおりの生活を送ることは、QOL(生活の質)を保つうえで大切です。
食事については、手術前には食事制限が必要になる場合があります。手術後には、一定期間経過すれば、特段の制限がないことが一般的です。バランスのよい食事を心がけ、心配なことがあれば医師や看護師、相談窓口に相談しましょう。
治療法にもよりますが、手術直後は激しい運動などを行うことはできません。体の回復に合わせて、徐々に運動量を戻していく必要があります。また、仕事については、多くの患者さんが治療との両立を実現させています。がん患者の就労や復職を支援する社会的な仕組みも整ってきています。
✍️一言アドバイス
治療と生活の両立に関する悩みは、1人で抱え込まず、「がん相談支援センター」への相談を検討するとよいでしょう。「がんの相談窓口」として病院に設置されている場合があります。電話や対面で、がんや治療、そのほかの悩みについて専門家が相談にのってくれます。
A.男性のほうが、女性に比べてやや発症頻度が高いといわれています。
A.大腸がんの一部には、遺伝が関わるタイプ(家族性大腸ポリポーシス、リンチ症候群など)が存在します。大腸がん全体の中では割合は高くなく、5%程度といわれています。
A.ステージIVの場合、転移が生じています。大腸のがんと転移したがんが切除できるかにより治療は異なります。手術ができない場合は、薬物療法(化学療法)、放射線療法などによる治療が検討されます。
ここまで、大腸がんの症状から原因、検査、そして治療法や生活に関わることまで解説してきました。
大腸がんは、早期に発見し、治療を開始することが大切です。心配な症状が現れているとき、がん検診などで陽性の判定が出たときには、まず身近な医療機関を受診するとよいでしょう。
大堀 晃裕 先生の所属医療機関
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