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レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症の症状の違いとは〜レビー小体型認知症が疑われた場合の検査や治療〜

レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症の症状の違いとは〜レビー小体型認知症が疑われた場合の検査や治療〜
内門 大丈 先生

医療法人社団彰耀会 メモリーケアクリニック湘南 理事長・院長、横浜市立大学医学部 臨床教授

内門 大丈 先生

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レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)とは認知症の一種で、脳の神経細胞の中に“レビー小体”と呼ばれる構造物が生じることでさまざまな症状が現れる病気です。認知症の約半数はアルツハイマー型認知症ですが、レビー小体型認知症は全体の20%程度(神経病理学的診断)で2番目に多い認知症といわれています。好発年齢は65歳以上ですが、40~50歳代で発症する人もいます。また、アルツハイマー型認知症は女性に多い病気ですが、レビー小体型認知症は男性に多い傾向があります。では、レビー小体型認知症はどのような症状が現れ、アルツハイマー型認知症とは何が違うのでしょうか。

レビー小体型認知症では多彩な症状が見られますが、主な症状は“認知機能障害(認知の変動)”“幻視”“パーキンソン症状”の3つです。ただし、人によって強く現れる症状が異なるほか、初期や中期では記憶障害などの認知機能障害などの症状が目立たないケースも多く、病気に気付きにくいことがあります。

認知機能障害とは物事を記憶したり、注意を向けたり、それに基づいて行動することが難しくなることをいいます。

レビー小体型認知症の場合には、注意力の低下、視覚認知障害、記憶障害、会話での理解力の低下などが見られます。また、この症状にはむらがあり、調子のよいときと悪いときがあります。このような注意や明晰さの著明な変化を伴う認知の変動は、中核的特徴の1つです。

レビー小体型認知症の特徴的な症状の1つが幻視です。幻視とは実際には見えないものが見えるという症状です。

たとえば“壁に虫がいる”“知らない人が立っている”などと、実際にはそこにないものがあるように見えてしまう方がいます。これらの症状が特に現れやすいのは夜間といわれています。

パーキンソン症状とは体が固くなり動きが鈍くなる、手の震えが生じる、動作がゆっくりとなる、姿勢の不安定性などの症状のことをいいます(パーキンソン病に伴う運動症状とほぼ変わらない)。パーキンソン症状が強くなると転倒のリスクが高まり、レビー小体型認知症の方の中にはけがをして寝たきりになってしまう人もいます。

また、パーキンソン病には自律神経障害などの非運動症状も含まれ、自律神経がうまくはたらかなくなることにより、便秘や尿失禁、立ち上がった際の立ちくらみ(起立性低血圧)などの症状が見られるケースもあります。

上で述べた症状のほか、レビー小体型認知症では無気力、うつなどの精神症状や、大声で寝言をいう、悪夢で目覚めて暴れるなどの睡眠障害などが見られます。このような睡眠障害のことをレム睡眠行動異常症と呼び、2017年に改定されたレビー小体型認知症の臨床診断基準の中では中核的特徴の1つとしてあげられるようになりました。

また、気分の変動が激しくなり穏やかな状態のときもあれば、急に興奮・錯乱状態になるなど精神的に不安定な状態を繰り返すこともあります。

同じ認知症でもレビー小体型認知症アルツハイマー型認知症では、症状にさまざまな違いがあります。

レビー小体型認知症特有の症状としては、認知機能障害のむら(調子よいときと悪いときがある)、幻視、パーキンソン症状、大声で寝言を言うなどの睡眠障害(レム睡眠行動異常症)などが挙げられます。これらの症状は、アルツハイマー型認知症ではあまり見られません。また、前述したようにレビー小体型認知症では幻視などの症状がよく知られていますが、アルツハイマー型認知症は初期には幻視などの症状は現れません(ただし、進行していくと幻視が出現することもあり、注意が必要)。

このように、認知症の種類によって症状が異なるため、周囲の人は病気の特徴をよく理解して関わる必要があります。

レビー小体型認知症は脳の神経細胞にレビー小体と呼ばれる構造物が生じることによって起こります。レビー小体を原因とする病気として、このほかにパーキンソン病が挙げられます。レビー小体は年齢を重ねるにつれて、脳が変化することで発生すると考えられています。レビー小体の生じた神経細胞は最終的には死んでしまいます。これにより、脳の中でも記憶に関係する“側頭葉”と情報処理に関係する“後頭葉”の機能が低下するため、幻視が生じやすくなると考えられています。

レビー小体型認知症が疑われた場合、医師による身体診察・精神状態検査やMRIによる画像検査が行われます。レビー小体型認知症にかかると、脳の萎縮が生じ、それがMRI画像で確認できます。ただし、アルツハイマー型認知症と比較すると、初期には記憶を司る“海馬”の萎縮は軽度であることが一般的です。また、脳血流SPECT検査において、後頭葉の血流低下が見られることがあります。

医師は本人の病歴や臨床症状、MRI検査、脳血流SPECT検査の結果などを踏まえ、認知症診療ガイドラインにも記載されている“DLBの臨床診断基準(2017)”を基に診断を行います。

レビー小体型認知症を根本的に治す治療は、現在のところありません(2020年9月)。そのため、非薬物療法と薬物療法を組み合わせて治療を行います。非薬物療法はケア、環境調整、リハビリテーション(リハビリ)などがあげられます。中でもパーソンセンタードケア*で本人の精神状態を安定させることは、どんな認知症であれ基本的なアプローチになります。

一方、適切な薬物療法も重要となります。認知機能障害を改善する薬としては、アルツハイマー型認知症の治療にも使用されるドネペジルと呼ばれる薬を処方されることがあります。また、うつ症状などの精神的な症状が強い患者には、抗うつ薬などの向精神薬が処方される場合もあります。さらに、パーキンソン症状による運動症状が強い患者には、抗パーキンソン病薬が処方されます。

ただし、レビー小体型認知症の方は薬に敏感に反応することが分かっており、薬が効きやすくなる、副作用が現れる、症状が悪化するなどの事例があります。これらの症状は市販の風邪薬や胃腸薬で生じることもあるため、医師に処方される薬以外を服用する場合は、あらかじめ相談するようにしましょう。

また、日常生活の中での工夫としての非薬物療法としては、転倒防止のための理学療法(リハビリ)や、起立性低血圧による転倒を防止する弾性ストッキングの着用、便秘を解消するための繊維質の食事などが挙げられます。

*パーソンセンタードケア:1980年代末に英国の老年心理学者であるトムキットウッド氏が唱えた“認知症をもつ人を一人の人として尊重し、その人の立場に立って考え、ケアを行おう”とする1つ考え方のこと

家族に認知症のような症状が見受けられた場合、まずはかかりつけの病院を受診することを検討しましょう。かかりつけ医は、以前の受診歴と現在の本人の状態を比較し、必要に応じて認知症を専門とする病院・診療科への紹介を行います。

また、レビー小体型認知症では認知症の症状のほか、幻視やうつ状態、筋肉がこわばる、転びやすくなるなどの特徴的な症状があります。そのため、もの忘れ以外にも気になる症状があった場合には病院受診を検討し、医師にその旨を説明しましょう。

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    日本精神神経学会 精神科専門医・精神科指導医

    内門 大丈 先生

    1996年横浜市立大学医学部卒業。2004年横浜市立大学大学院博士課程(精神医学専攻)修了。大学院在学中に東京都精神医学総合研究所(現東京都医学総合研究所)で神経病理学の研究を行い、2004年より2年間、米国ジャクソンビルのメイヨークリニックに研究留学。2006年医療法人積愛会 横浜舞岡病院を経て、2008年横浜南共済病院神経科部長に就任。2011年湘南いなほクリニック院長を経て、2022年4月より現職。湘南いなほクリニック在籍中は認知症の人の在宅医療を推進。日本認知症予防学会 神奈川県支部支部長、湘南健康大学代表、N-Pネットワーク研究会代表世話人、SHIGETAハウスプロジェクト副代表、一般社団法人日本音楽医療福祉協会副理事長、レビー小体型認知症研究会事務局長などを通じて、認知症に関する啓発活動・地域コミュニティの活性化に取り組んでいる。

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