高齢化社会の進行とともに、認知症の患者数は加速度的に増加し、2013年には462万人に達したと報道されています。認知症はどのように防げばよいのでしょうか。今回は認知症予防とビタミンの関わりについて、ご紹介します。
認知症の原因のうち、頻度の高いものとしては以下の4つが挙げられます。
これらの認知症は現在は根本的な治療が困難で、治療は対症療法が中心となります。
しかしそれ以外にも、治療が可能な認知機能が低下する疾患としては、さらに以下の4つがあります。
なかでもビタミン欠乏症(特にビタミンB12、そして葉酸欠乏症)は認知症の原因として重要であると指摘されています。なぜなら、頻度は決して低くなく(筆者らの物忘れ外来では約3%)、そして見逃されやすく、さらに、不足しているビタミンの補充により症状の改善が比較的早期からみられるからです。ここでは、ビタミンと認知症の関係について、ご紹介します。
ビタミンB12や、葉酸の欠乏によって、メチオニン合成酵素が活性型になりません。メチオニン合成酵素が働かないと、ホモシステインをメチオニンに変換することができなくなり、体内にどんどんホモシステインがたまり高ホモシステイン血症となるのです。
同じくビタミンB6欠乏でも、ホモシステインをシスタチオニンを介してグルタチオンに変えることができず、同じく高ホモシステイン血症になります。
なお、メチオニンは必須アミノ酸の一つであり、コレステロールを下げ、活性酸素を取り除く作用があります。グルタチオンも同様に活性酸素を取り除く作用があります。反対にホモシステインは酸化ストレスを生じさせ、動脈硬化を引き起こす原因となるのです。
高ホモシステイン血症は、動脈硬化を促進しますので、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、脳血管障害(脳梗塞、一過性脳虚血発作)を引き起こす原因となります。さらに、高ホモシステイン血症はアルツハイマー病をはじめとする認知症を引き起こす原因であることが判明しました*1。
ホモシステインを下げるためにビタミン剤を単剤投与した研究も多いのですが、残念ながら脳卒中、心筋梗塞、認知症に対する予防効果は明らかではありませんでした。しかし最近の研究でビタミンB6、B12、そして葉酸を同時に投与すると脳の萎縮の進行が遅くなることが報告されたのです*2。
食物中では、ビタミンB6はレバー、まぐろ、かつおに、ビタミンB12は貝類(あさり、しじみ)、レバー、海苔に、そして葉酸はレバー、うなぎ、緑黄色野菜に多く含まれていることが知られています。つまり、これらのビタミンB6、B12、葉酸が豊富な食事を偏りなくとることが重要です。
認知症予防には、規則正しい生活(早寝、早起き、朝ご飯)と、適度な運動(一日3000歩~5000歩の散歩など)、新聞を読み、日記を付ける。そして偏りのない食事を摂取するとよいと考えられています。みなさんも難しく考えすぎず、日常生活から気軽に認知症を予防しましょう。
福井大学 第二内科 准教授/脳神経内科 診療教授、診療科長
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