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乳がん検診はなぜ重要?対策型乳がん検診の普及・啓発に向けて

乳がん検診はなぜ重要?対策型乳がん検診の普及・啓発に向けて
岡本 直子 先生

戸塚共立第1病院附属 サクラス乳腺クリニック 院長

岡本 直子 先生

目次
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乳がんは、日本で罹患率が急増しているがんの一種です。横浜市では、乳がんを早期に発見し、適切な治療に結びつけるための取り組みの一環として、40歳以上の女性を対象にした対策型*乳がん検診を行っています。横浜市における乳がん検診の特徴と定期的な受診の重要性について、市の対策型乳がん検診を実施している戸塚共立第1病院附属サクラス乳腺クリニックの岡本直子先生にお話を伺いました。

*40歳以上の女性が2年度に1回市の補助下で受けることのできる乳がん検診

横浜市における乳がん検診―受診率向上のための取り組み

2009年頃、日本における乳がん検診率は約10%と非常に低く、ほとんどの方が検診を受けていませんでした。その後、各自治体の呼びかけなどによって受診率は向上し、2019年7月現在で横浜市内の乳がん検診の受診率は40%台にまで増加しています。今後は、厚生労働省が謳った「がん検診受診率を50%に伸ばすこと」に準じて、横浜市でも検診受診率50%達成目指しており、市民の方々が乳がん検診を受けやすくなるためにはどういった工夫が必要であるかを市で検討中です。

ここでは、当院で実施している横浜市の対策型乳がん検診の内容と特徴についてお話しします。

2つのコースから選択できる対策型乳がん検診

対策型乳がん検診とは、公共政策として自治体が補助し、40歳以上の女性に2年度に1回行われる乳がん検診です。横浜市では、2005年より、マンモグラフィ検査を中心にした対策型乳がん検診を、40歳代以上の女性を対象に行っています。

対象者は2つのコースから任意で検診内容を選択することができます。

1つめは、視触診とマンモグラフィ検査の両方を実施するコースで、横浜市の場合、費用は1,370円です。そして2つめは、マンモグラフィ検査のみを単独で実施するコースで、横浜市の場合、費用は680円です(2019年7月時点)。 

マンモグラフィ検査は、複数のランダム化比較試験によって死亡率減少効果が科学的に認められた乳がん検診方法です。マンモグラフィ検査が導入されるまでは、視触診による検査が中心でした。しかし、視触診による死亡率減少効果は証明されておらず、乳がん検診における視触診の必要性については、議論が交わされてきました。さまざまな検討の結果、横浜市で実施する対策型乳がん検診において、視触診は2019年から選択制となりました。

マンモグラフィ検査単独と視触診併用、2つのコースのそれぞれのメリット

マンモグラフィ検査単独のコースのメリットは、気軽に乳がん検診を受けられることです。視触診併用コースに比べて費用がかからないので、まだ一度も検診を受けたことがない方や医師の視触診が苦手な方などにとっては、申し込みやすいコースとなっています。

一方、視触診併用コースのメリットは、より正確に診断できることと、医師の問診(医師との対話)が受けられることです。乳頭分泌物や皮膚所見(ひきつれ、びらん等)といった外見上の変化や、乳房内に乳腺組織が多い高濃度乳房にできたがんなどは、マンモグラフィ検査のみではがんを見つけられないことがあります。そのため、視触診とマンモグラフィ検査をセットで受けることで、より精密に乳房の状態を調べることが可能となり、見逃しも少ないといえるでしょう。

クーポンやパンフレットの配布

横浜市では、より多くの方に乳がん検診を受けていただくために、対策型乳がん検診の無料クーポン(40歳の方対象)と、乳がん早期発見の重要性および乳がん検診の内容を詳細に記したリーフレットを、対象者のご自宅に配布しています。受け取った方は、ぜひ活用してください。

乳がん検診はどのくらいの頻度で受けるべき?

40歳以上は対策型検診と任意型検診を併用し、1年に1回受けることが望ましい

乳がんの予防や早期発見という観点において、1年に1回は乳がん検診を受けていただくことが理想的です。

自治体補助下で2年度に1回受けることのできる対策型乳がん検診を、必ず受けていただきたいと考えます。

そして、対策型乳がん検診を受けない年度は、「記事1」でご説明した任意型乳がん検診を受けていただきたいです。

40歳未満の女性は安心を得るために任意型検診の受診を

横浜市の場合、30代以下の方は対策型乳がん検診の対象外であるため、市の対策型乳がん検診を受診することは現状ではできません*。ただ、30歳を過ぎたら任意型検診で身体的負担の少ないエコー検査から受けていただきたいと考えます。なかには、30代で乳がんを発症する方もいらっしゃるためです。

*自治体によって対策型乳がん検診の対象範囲は異なります。

定期的に乳がん検診を受けてほしい―岡本直子先生からのメッセージ

マンモグラフィ

乳がん検診を受ける前は、「マンモグラフィ検査は痛いのではないか」「検診でがんの疑いがあるといわれることが怖い」などと不安な気持ちを抱えている方が多いかもしれません。また、仕事や育児など、日々の生活に追われてしまい、ご自身の健康になかなか目を向けられないでいる方もいらっしゃることと思います。まずは一度、検診を行っている施設に足を運んでみてください。通常1時間程度の所要時間で検査を受けることができます。また、初めての方でも、一度検診を受けて頂くことで、検査全体の流れや検査の様子がつかめてきますので、検査に対する不安な気持ちも徐々に和らいでいくでしょう。

乳がんは日本で多くみられるがんのひとつですが、早期発見して早期治療を行えば完治が望める病気でもあります。ぜひ、市の対策型検診や各医療機関での任意型検診を活用して、ご自身の健康を守っていただきたいと考えます。