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糖尿病の治療薬:種類と特徴

糖尿病の治療薬:種類と特徴
松久 宗英 先生

健昭会なにわ病院 副院長

松久 宗英 先生【監修】

目次
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この記事では、2026年現在、主に使われている糖尿病治療薬の種類や特徴、副作用について解説します。

👉 このパートをまとめると
糖尿病治療の目的は、合併症の発症や進行を防ぎ、健康な人と変わらない生活の質と寿命を維持することにあります。

糖尿病とは、インスリン*の量が少なくなったりはたらきが弱くなったりすることによって、血液中のブドウ糖(血糖)濃度の高い状態が続く病気です。高血糖の状態が長期間続くと、全身の血管が少しずつ傷つき、目、腎臓、神経に関する合併症のリスクが高まります。糖尿病には複数のタイプがありますが、日本人の多くが発症するのは、遺伝的な背景に生活習慣などによる環境的な要因が加わることで発症する“2型糖尿病”です。

*インスリン:膵臓(すいぞう)から分泌され、血糖値を低下させるはたらきをもつホルモン。

糖尿病治療の主な目的は、血糖値を良好にコントロールして合併症の発症や進行を防ぎ、健康な人と変わらない生活の質(QOL)と寿命を維持することです。血糖値を良好な状態に保つため、食事療法と運動療法とともに、薬物療法が行われます。

👉 このパートをまとめると
糖尿病の治療薬には、さまざまな種類がありますが、使用法の面では飲み薬と注射薬に分かれます。どの薬を選択するかは、患者さんの状態や年齢などを考慮して医師が判断します。

膵臓にはたらきかけて、インスリンの分泌を促すタイプの飲み薬です。

スルホニル尿素薬(SU薬)

糖尿病の治療薬として長い間使用されている薬で、血糖値を下げる作用が比較的強いとされています。一方で、低血糖を起こしやすい点には注意が必要です。

速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)

SU薬に似ていますが、作用が速く、持続時間が短いことが特徴です。主に食後の血糖値の上昇を抑える目的で、食事を取る直前に服用します。

DPP-4阻害薬

血糖値が高くなったときに、インスリンの分泌を促すインクレチンという腸管ホルモンのはたらきを高める薬です。単独では低血糖を起こしにくいとされています。

GLP-1受容体作動薬(飲み薬)

インクレチンの1つであるGLP-1の作用を模倣し、血糖値が高いときにインスリン分泌を促すほか、食欲を抑える効果も期待されます。単独では低血糖を起こしにくいと考えられています。

筋肉や肝臓などでインスリンがはたらきやすい状態にするタイプの薬です。インスリンの効きが悪くなっている状態(インスリン抵抗性)を改善します。

ビグアナイド薬

肝臓で糖が作られるのを抑え、筋肉や脂肪組織などでインスリンの効きをよくする作用があります。単独では低血糖を起こしにくく、体重も増加しにくいとされ、2型糖尿病治療で最初に用いられることが多い薬です。

チアゾリジン薬

主に脂肪組織に作用し、インスリンを効きやすくする薬です。単独では低血糖を起こしにくいですが、むくみや体重増加が起こりやすいといわれています。

食事からの糖の吸収を遅らせたり、尿の中に糖を排出させたりするタイプの薬です。

α-グルコシダーゼ阻害薬

食事の直前に服用することで、小腸での糖の分解・吸収を遅らせ、食後の血糖値の上昇を穏やかにします。この薬だけでは低血糖となる可能性は低いですが、もし低血糖になった場合は、砂糖などではなくブドウ糖の摂取が必要です。

SGLT2阻害薬

腎臓で糖が血液中に再吸収されるのを防ぎ、尿と一緒に糖を体外へ排出させることで血糖値を下げます。

注射で投与するタイプの薬には以下の種類があります。

インスリン製剤

体内で不足しているインスリンを直接補うことで血糖値を下げる薬です。作用時間によって超速効型、速効型、中間型、持効型溶解インスリン製剤に分類されます。また、2種類のインスリン製剤を組み合わせた薬もあります。

食事にかかわらず、24時間分泌されている基礎インスリンの補充には、主に持効型溶解インスリン製剤を使用します。食事時にインスリンを追加で補充する場合は、主に超速効型インスリン製剤が選択肢となります。

低血糖を最も起こしやすい治療のため、血糖測定を併用することが望まれます。

GLP-1受容体作動薬(注射薬)

経口薬同様にインクレチン作用を模倣する薬で、血糖値が高いときにインスリン分泌を促すほか、食欲を抑える効果も期待されます。注射薬は分解されにくく、週1回投与の製剤もあり、効果的に血糖値を下げる作用があります。

GIP/GLP-1受容体作動薬

2種類のインクレチンの受容体に作用することで、血糖値が上昇したときにインスリンの分泌を促す薬です。やはり週1回の投与で強力な血糖降下作用や体重減少効果が報告されています。なお、この薬は“2型糖尿病”に対する治療薬であり、それ以外の目的での使用は推奨されていません。

糖尿病の治療では、まず食事療法と運動療法が行われます。これらの治療で十分な効果が得られない場合は薬物療法が検討されますが、治療薬の開始時期や選択は患者さんの状態や年齢、治療歴などを考慮して個別に判断されます。ただし、インスリンを分泌する細胞が壊れる1型糖尿病では、インスリン製剤による治療が必要です。

また近年、SGLT2阻害薬やGLP‑1受容体作動薬は心疾患糖尿病性腎症などの合併症の進行を遅らせるといわれています。これらのメリットも治療薬の選択時に考慮されます。

👉 このパートをまとめると
糖尿病治療薬の最も注意すべき副作用は低血糖です。症状を感じたらすぐブドウ糖を摂取しましょう。また、各薬に特有の副作用もあります。

低血糖とは、血糖値が下がりすぎた状態のことです。特にSU薬やインスリン製剤を使用している場合に起こりやすいとされています。

低血糖の主な症状

急な強い空腹感、冷や汗、動悸(どうき)、手足の震え、頭痛などの症状が生じます。重症化すると意識がもうろうとすることがあります。

対処法

症状を感じたら、我慢せずにすぐにブドウ糖を10~20g程度摂取してください。砂糖を含む飴やジュース(150~200mL)でも代用できます。しかし、低血糖が起こりやすいインスリン製剤やSU薬を服用している方や、砂糖の吸収に時間がかかるα-グルコシダーゼ阻害薬を服用している方は、外出時に必ずブドウ糖を携帯する習慣が大切です。

低血糖以外の副作用については、薬の種類によっても異なります。代表的なものは以下になりますが、気になる症状が出た場合は、自己判断で薬を中断するのではなく、主治医や薬剤師に相談しましょう。

SGLT2阻害薬

尿に糖を排出する作用のため、尿路や性器で細菌や真菌が繁殖しやすくなり、感染症を起こす場合があります。また、尿の量が増えるため、脱水にも注意が必要です。特に高齢者や利尿薬を服用している方は、こまめな水分補給が推奨されます。特に、体調不良で食事が取れない日(シックデイ)には、脱水や重篤な副作用のリスクが高まるため、休薬するよう指導されることがあります。事前に主治医と休薬のルールについて確認しておくことが重要です。

ビグアナイド薬

頻度は極めてまれですが、重篤な副作用として乳酸アシドーシス*が知られています。そのため、心不全腎不全など全身状態が悪い場合は投与できません。また、造影剤を使用する検査を受ける際には、一時的に休薬が必要となる場合があります。

SGLT2阻害薬と同様、シックデイでは脱水や重篤な副作用のリスクが高まるため、休薬するよう指導されることがあります。

*乳酸アシドーシス:乳酸が血液中で増加し、pH値が酸性に傾いた状態。胃腸障害やだるさ、呼吸困難などが現れる可能性がある。

GLP-1受容体作動薬

使い始めの時期に、吐き気、嘔吐、下痢、便秘といった消化器症状が出ることが多いです。このため徐々に薬を増量します。多くの場合、薬を続けていくうちに軽快するといわれています。

A. 薬によって血糖値が下がっても自己判断で薬を中断すると、血糖値が急激に悪化する可能性があります。食事療法・運動療法をしっかり行うことや体重が減ることで、薬の量を減らしたり、場合によっては中止できたりする可能性もゼロではありません。しかし、糖尿病は長く付き合っていく病気であるため、多くの場合は継続的な薬物療法が必要となります。治療の目標について、主治医とよく相談することが大切です。

A. 薬の種類によって、体重への影響は異なると報告されています。たとえば、SU薬やチアゾリジン薬などは体重が増加しやすい傾向があるといわれています。一方で、ビグアナイド薬などは体重が増加しにくいと考えられています。

A.糖尿病の人以外が、糖尿病の治療薬を使用することは推奨されていません。一部では肥満症治療薬として使用が可能な薬もありますが、減量が必要な肥満症の人以外がダイエットを目的に薬を使用することの安全性は確認されていません。糖尿病や肥満症の人以外が薬を使用した場合、低血糖急性膵炎(きゅうせいすいえん)、嘔吐や下痢などの健康被害が生じる可能性があります。

糖尿病の薬には多くの種類があり、それぞれの特徴や注意点が異なります。主治医によく相談し、ご自身の体の状態に合った薬を使用することが重要です。

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