インタビュー

認知症患者の「終末期ケア」の考え方とは

認知症患者の「終末期ケア」の考え方とは
内門 大丈 先生

医療法人社団彰耀会 メモリーケアクリニック湘南 理事長・院長、横浜市立大学医学部 臨床教授、日...

内門 大丈 先生

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この記事の最終更新は2015年09月25日です。

がんのペインクリニックや終末期ケアは近年発展を見せ、がん終末期のQOL(生活の質)は徐々に向上しているように感じられます。一方、認知症患者さんに対する終末期ケアは、まだ十分ではなく、課題が多く残ります。認知症患者の終末期ケアをどのように考えていけばいいのか、湘南いなほクリニック院長・横浜市立大学医学部臨床准教授の内門大丈先生にお話をお聞きしました。

大切な人ががんで余命○ヵ月、と宣告されたとき、みなさんは何を考えますか。自ずと終末期ケア(どのような最期を迎えるか)について考えるようになるのではないでしょうか。
がんの患者さんに対する終末期ケアについては、情報も多くあり、「家で最期を迎えたい」「苦しまないで最期を迎えたい」など、いくつかの選択肢がイメージできるものです。

身近な人が認知症になったとき、どれだけの方が終末期ケアを考えるでしょうか。認知症と「死」を、どれだけの方が結びつけて考えられているでしょうか。認知症などの「非がん」の人たちにとって、「死」というのはなんだか遠くにある出来事に感じることが多いのです。

これには、がんと認知症の経過の長さの違いが影響しています。

もちろん、寛解・治癒する場合もありますが、「余命○ヵ月」「余命1年」など、がんの診断から死までは比較的短いものです。そのため、死は確実に迫ってきており、実感をもたざるを得ない状況に陥るのです。

一方、認知症の診断から死までの平均的な期間は約10年と言われています。

この経過の長さが、死に対する実感を湧かなくさせる要因といえるでしょう。また、患者さんご本人が医療機関を受診した時点ですでに認知症が進行している場合も多く、ご本人が先のことを考える力を失っていることもあります。

合併症がない場合、認知症の初期は、体は元気なことが多いです。体は元気ですが、少し物忘れがある、行動に整合性がないなどの症状が見られるようになります。「体は元気なんですけどね……」という言葉を患者さんの家族からよく聞きます。この時点では、精神科的な治療がメインになります。

しかし、認知症になると、体の老化現象が早まっていきます。筋力が落ちて転倒しやすくなって骨折につながったり、食べ物の飲み込みが悪くなって誤嚥性肺炎になったりするのです。また、がんを併発することもあります。そのため、精神症状などに対してのみの治療で済んでいたものが、徐々に体の病気に対する治療も必要となってきます。

この時に問題となるのが、医療の連携です。認知症そのものの症状に加えて、体の病気が出てきたときに、精神科医と、体の病気を観る医師の連携が重要になってきます。
それぞれの医師が、患者さんの症状や服用している薬についての情報を共有し合い、適切な治療をすることが求められますが、これがなかなかうまくいっていない現状があるのです。医師(医療機関)どうしの連携がうまくいかないと、患者さんがたらいまわしになってしまうリスクもあります。今後は、医療機関・医師どうしの連携がより求められるようになるでしょう。

どのような最期を迎えるかを患者さんと考えていくことを「ACP(アドバンス・ケア・プランニング:Advance Care Plannning)」といいます。自分の最期に、延命治療を望むのか、どこで亡くなりたいのかなどを考えることです。認知症においても、ACPを考える必要があります。

しかし、前述のとおり、認知症の患者さんの「最期」を考えるのは、とてもむずかしいことです。あまりに初期だと「まだまだ先の話」と思って死について実感を持って考えられないですし、認知症が進行してしまうと、患者さん本人は正常な判断ができなくなっていまいます。

これという正解はACPにはありませんが、やはり重要なのは、患者さん自身が常に「自分はどのような最期を迎えたいか」を考えておくことでしょう。健康なうちから、どのような最期を迎えたいかを考え、その意思を家族に表明しておくことで、いざというときに家族の判断材料になります。

認知症が少し進行していたとしても、「自分が重篤な身体疾患にかかったときにどうしたいか?」という単純な質問であれば、本人が判断できることもあります。認知症がかなり進行してしまった場合には、ACPを医師と家族で話し合っていく必要が出てきます。その際は、患者さんの経過に合わせて、何度も意見をすり合わせていくことが、最善の選択肢につながるのではないでしょうか。

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