疾患ガイド

低血糖の症状とは? 原因から対処法まで解説

低血糖の症状とは? 原因から対処法まで解説
松久 宗英 先生

健昭会なにわ病院 副院長

松久 宗英 先生【監修】

目次
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低血糖とは、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が正常範囲を下回った状態を指します。糖尿病の治療薬を使用している方に生じやすく、冷や汗や動悸、重篤な場合は意識障害などを引き起こす可能性があります。そのため、初期症状に気付き、正しく対処することが重要です。

この記事では、低血糖の症状や原因から、対処法まで解説します。

👉 このパートをまとめると
低血糖とは、血糖値が正常範囲よりも低下した状態(目安として、70mg/dL未満)を指します。

低血糖の1つの目安は、血糖値が70mg/dL未満になった状態とされています。

ただし、実際には70mg/dL以上の場合でも、普段よりも急激に血糖値が下がる場合や高い血糖値が続いている場合は低血糖の症状が出現する可能性があります。

また、血糖値だけではなく、以下の3つの要素(Whippleの3徴)がそろった状態を低血糖として捉える考え方もあります。

  • 空腹時の低血糖に一致する症状の出現
  • 症状出現時に血糖値が低下
  • ブドウ糖を摂取することによる症状の改善

低血糖を繰り返している方や、糖尿病の治療期間が長い方、自律神経障害がある方、高齢者などでは、初期症状を感じることなく、突然意識障害などの重い症状が出現することがあります。これは“無自覚性低血糖”と呼ばれ、特に自動車の運転をする方などは注意が必要です。

👉 このパートをまとめると
低血糖の症状は、“交感神経症状”から“中枢神経症状”へと段階的に進行します。

一般的に血糖値が70mg/dL未満になった場合では、以下のような“交感神経症状”と呼ばれる症状が現れます。

  • 強い空腹感
  • 冷や汗が出る
  • 心臓がドキドキする(動悸)
  • 手や指が震える
  • 不安な気持ちになる
  • 顔色が悪くなる(顔面蒼白)

一般的に血糖値が50mg/dL程度となった場合では、以下のような“中枢神経症状”と呼ばれる症状が現れます。

  • 頭痛がする
  • 目がかすむ
  • 強い眠気、生あくびが出る
  • 集中力が落ちて、ぼんやりする

一般的に血糖値が50mg/dLよりも下がった場合では、以下のような症状が現れます。

  • ろれつが回らない、普段と異なる言動をとる
  • 意識がもうろうとする
  • けいれんを起こす
  • 意識がなくなる(昏睡(こんすい)

けいれんや昏睡などの意識障害は、自力での対処ができないため“重症低血糖”といわれ、早急な治療が必要です。

👉 このパートをまとめると
低血糖の原因には、主に糖尿病治療薬が関わっていると考えられています。治療薬の作用と食事や運動などとのバランスが崩れた場合に低血糖が生じやすくなります。

低血糖は、糖尿病の治療に用いられるインスリン製剤やスルホニル尿素薬など一部の経口血糖降下薬(飲み薬)に関連して生じることが多いとされています。これらの薬を使用しているときに、食事の量やタイミング、運動量とのバランスが崩れると低血糖を引き起こすことがあります。特にインスリン製剤は決められた用法用量を守りましょう。

糖尿病治療薬を使用している場合、以下のような要因が低血糖の引き金になることがあります。

  • 食事……欠食(食事を抜く)、食事時間の遅れ、いつもより少ない食事量(特に炭水化物)
  • 運動……予定外の激しい運動、長時間の運動、空腹のままの運動
  • 飲酒……特に空腹時の多量のアルコール摂取
  • そのほか……入浴、シックデイ(体調不良で食事が取れない日)など

👉 このパートをまとめると
意識がある場合は、可能であれば血糖値を測定してブドウ糖10~20gまたは同等の糖分を含む食べ物やジュースを摂取します。15分後に血糖値を再測定し、改善しない場合はブドウ糖の摂取を繰り返します。

低血糖の初期症状を感じたら、落ち着いて以下の手順で対処します。

血糖測定

可能であれば、すぐに血糖値を測定します。

ブドウ糖の摂取

ブドウ糖10~20g、または糖分を含む飴やジュース(150~200mL)などを摂取します。ただし、人工甘味料にはブドウ糖が含まれていないため、血糖値は上昇しません。また、α-グルコシダーゼ阻害薬*を服用中の場合は、砂糖では分解・吸収が遅れて効果が不十分となるため、対処にはブドウ糖を使用する必要があります。

*α-グルコシダーゼ阻害薬:食事の直前に服用する糖尿病の飲み薬。小腸での糖の分解・吸収を遅らせる作用があるため、二糖類(砂糖など)の吸収に時間がかかる。

安静と再測定

ブドウ糖の摂取後は、15分ほど安静にし、再度血糖値を測定します。血糖値が回復しない、または症状が改善しない場合は、再度ブドウ糖を摂取します。食前であれば、症状が改善したら食事を速やかにとりましょう。

自力でのブドウ糖摂取が難しい重症低血糖の場合は、家族など周囲の人や医療機関で対応する必要があります。そのとき、窒息の危険があるため、周囲の人はブドウ糖を無理に飲ませないでください。直ちに119番通報し、救急車を要請しましょう。救急車を待つ間、砂糖やブドウ糖を水で溶かしたものを、唇と歯茎の間に塗りつける応急処置が有効な場合があります。

また、家庭では血糖値を上昇させるホルモンである“グルカゴン”を投与する治療法があります。従来のグルカゴン製剤は、粉末を液体で溶かして注射器で吸引し、筋肉または静脈に注射するという複雑な操作が必要でした。しかし近年、鼻からグルカゴンを吸収させる“グルカゴン点鼻粉末薬”という新しい薬が登場しました。これは、事前の準備が不要で、点鼻容器の先端を鼻に入れ、ボタンを押すだけで投与が完了するものです。

👉 このパートをまとめると
高齢者では動悸や冷や汗といった初期症状が出にくく、めまい、脱力感などが現れることがあります。転倒や認知機能低下のリスクも指摘されています。

高齢の糖尿病患者さんでは、以下のような理由により、低血糖が特に危険な状態につながる場合があると考えられています。

  • 加齢に伴い低血糖の初期症状(動悸、冷や汗など)が出にくくなる
  • 腎機能が低下し、薬の排泄が遅れることで、薬が効きすぎてしまうことがある
  • 食事の量が少なくなりやすい
  • 低血糖によるめまいやふらつきが、転倒・骨折に直結しやすい
  • 血糖値が正常になっても、忘れっぽいといった認知機能の低下が続く可能性がある

高齢者では、以下のような“いつもと違う様子”が低血糖のサインである場合があります。

  • めまい、ふらつき、目のかすみ
  • 力が入らない、だるそうにしている(脱力感)
  • 急に無口になる、活動性が落ちる(意欲低下)
  • 話のつじつまが合わない、興奮している(せん妄

これらの症状は、脳卒中認知症の症状と間違われることもあるため、周囲の人による注意深い観察が求められます。

近年の糖尿病治療では、血糖値を厳格に管理することによるメリットと、低血糖のリスクを天秤にかけ、治療目標(血糖値の目標)を個別に設定する考え方が主流になっています。

特に高齢の方や、重症低血糖の可能性が高い方などでは、低血糖を起こさないような緩めの治療目標が設定されます。

A. 直ちにハザードランプを点灯させ、安全な場所に車を停車させてください。運転は絶対に続けないでください。事前に車の中にブドウ糖を含む食べ物を複数置いておくと安心です。停車後、ブドウ糖などを摂取し、血糖値と症状が十分に回復するまで運転を再開してはいけません。

A. 発熱や下痢、嘔吐などで食事が十分に取れない日(シックデイ)は、血糖管理が乱れやすくなります。インスリン製剤などの注射薬を自己判断で中断すると、急激な高血糖状態になる可能性があるため、原則として続けます。ただし、低血糖を防ぐため、飲み薬については減量や中止を検討する場合もあります。対応方法は個人によって異なるため、事前に主治医とシックデイの際の対応(シックデイルール)についてよく相談しておくことが重要です。

A. ブドウ糖そのものが最も望ましいですが、入手できない場合は、ブドウ糖を多く含むラムネ菓子や糖分を多く含む飴、グミ、ジュースなどが代わりになります。チョコレートは、脂質が多く糖の吸収が遅れるため、緊急時の対応には向いていません。

この記事では、低血糖の基本的な情報から対処法までを解説しました。主に糖尿病の治療に伴い低血糖の症状が現れることがあり、初期の段階で気付くことが重要です。高齢者では決まった症状が現れにくく、周囲の人の観察が鍵となります。

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