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分野の垣根を越え“共通言語”でつながる――免疫疾患の克服を目指す日本臨床免疫学会

公開日

2026年07月21日

更新日

2026年07月21日

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2026年07月21日

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臨床免疫学は、幅広い研究分野や多くの診療科にまたがる領域です。21世紀に入り、新たな治療薬の登場によって自己免疫疾患の治療は劇的な進歩を遂げ、現在では適切な治療によって疾患をコントロールすることを目指せる時代を迎えています。日本臨床免疫学会では、「横断的免疫学から疾患の克服へ」というテーマのもと、多様な分野の専門家が集い、学際的な研究や若手の育成、国際交流などを精力的に推進しています。同学会理事長の田中 良哉(たなか よしや)先生に、臨床免疫学領域のトピックや具体的な取り組み、今後の展望についてお話を伺いました。

臨床免疫学領域の進歩と現状

この20数年の間に、臨床免疫学領域における“自己免疫疾患”の治療は大きな発展を遂げました。自己免疫疾患とは、本来体を守る役割を果たす免疫が、自身の体の組織を外敵とみなして攻撃してしまう病気です。以前は治療が難しいとされてきましたが、特定の分子をピンポイントで標的とする“分子標的治療薬”の登場で様相が大きく変わりました。

特に、炎症が続いて関節が壊れていく関節リウマチは、2003年にTNF阻害薬が導入されて以降、関節破壊や機能障害の進行を抑え、寛解が目指せるようになりました。当時、私が診ていた関節リウマチの患者さんの中に、すでに関節の変形が始まっており、痛みや腫れでまったく動けないという方がいました。しかし、分子標的治療薬を投与すると病気が改善し、およそ1か月後には仕事に復帰されたのです。本当に患者さんの人生を変えられる薬なのだと実感するとともに、この薬をより多くの方に適切に届けていく重要性を改めて強く感じました。

関節リウマチ領域における成功は、ほかの自己免疫疾患の治療にも応用されています。一方、がん治療においても、免疫チェックポイント阻害薬の登場により、がんの患者さんの予後改善が見込めるようになりました。免疫の活性化によって自己免疫疾患に似た症状が誘発される免疫関連有害事象(irAE)は1つの課題ですが、本学会では専門の委員会を設置し、より適切な治療を目指して取り組んでいます。

また、2025年に坂口 志文(さかぐち しもん)先生らがノーベル生理学・医学賞を受賞されたように、免疫の異常な反応を制御する制御性T細胞の発見も大きな出来事でした。この細胞を上手に用いることができれば自己免疫疾患のコントロールに役立つと期待されています。

このように、21世紀に入って免疫学は大きく進歩しました。これまでとは違う方向から病気にアプローチできるようになり、より有効性と安全性が高く大きな治療効果が見込めるようになってきたのです。この成果をより多くの疾患に広げていくことが、私たちの重要なトピックだと考えています。

臨床免疫学のさらなる発展に向けた取り組み

日本臨床免疫学会は1973年に設立され、現在は約1,500人の会員が所属する、日本医学会の分科会の1つです。会員の専門分野は免疫学、微生物学、病理学、内分泌代謝内科、小児科、膠原病リウマチ内科、神経内科、皮膚科、消化器内科、産婦人科、眼科、アレルギー科など多岐にわたります。「横断的免疫学から疾患の克服へ」というテーマのもと、さまざまな分野で免疫疾患の治療に取り組む医師や研究者が連携して病態を解明し、病気を克服しようと活動しています。

臨床免疫学の発展と次代を担う人材育成のために、主に次のような取り組みに注力しています。

日本臨床免疫学会総会の開催

本学会では「ここに行けば臨床免疫学の全てがわかる」を共通のスローガンに掲げ、毎年総会を開いており、2026年は10月に開催予定です。総会では“KNOWLEDGE BOWL”という45歳以下の若手研究者によるクイズ大会などの企画セッションを用意し、若い世代が主体となって盛り上げていけるような工夫も取り入れています。

各種セミナーの開催

約15年前から毎年2月に沖縄で「Midwinter Seminar」を開催しています。日常とは異なる環境に身を置いて新しい仲間を作り、普段と違う柔軟な発想を育むことで、この領域の発展や新しい治療につなげたいと思っています。35歳程度までの研究者20数人が毎年参加しており、その中から本学会の代議員や各大学の教授を輩出するなど、若手の育成において重要な役割を果たしています。

そのほか、会員以外にも広く興味を持ってもらおうと、医療従事者や関連企業、学生を対象に「免疫疾患横断セミナー」を実施しています。2026年度はリウマチ、皮膚免疫、生殖免疫、感染免疫に関する講演を予定しています。

国際化の推進

国内の活動と並んで重視しているのが、海外の研究者とのつながりです。毎年海外からトップリーダーを招いて国際シンポジウムを開催しており、これをきっかけに本学会は米国の臨床免疫学会連盟FOCISのコアメンバーにもなりました。2027年の国際シンポジウムは奈良で開催、2029年は京都で全身性エリテマトーデス(SLE)の国際学会と共催の予定です。

プロフェッショナルの育成

本学会では「免疫療法認定医制度」を設け、免疫療法を研究・実践してきた医師を専門家として認定しています。併せて、アニュアルエビデンスレビューという講習会を年2回開くなど、知識向上の機会を提供しています。学習はもちろん診療にも役立ててもらおうと、「すべての診療科で役立つ免疫・炎症性疾患の薬ハンドブック」も制作しました。

機関紙の発行

「Immunological Medicine」という国際誌を年に4回発行し、本学会のプレゼンスをグローバルに示していくことにも注力しています。

臨床免疫学領域の魅力、やりがいとは

臨床免疫学領域の治療の進歩は特徴的であり、適切な診断と治療によって患者さんが日常生活を取り戻し、社会復帰できる可能性を高められるようになってきたことは大きなやりがいだといえるでしょう。

一方で、臨床免疫学と聞くと難解だと感じる方も多いかと思いますが、決して身構える必要はないと思っています。

そもそも免疫系とは、私たちの体が“自己(自分)”と“非自己(自分ではないもの)”を見分けて体を守るための仕組みです。この仕組みに異常が生じると病気が引き起こされます。免疫の異常は、免疫が過剰にはたらいている(アレルギー)か、弱くなっている(免疫不全)か、自分自身を攻撃してしまう(自己免疫疾患)かに大きく分けられます。このように考えれば、もっとシンプルに捉えられるかもしれません。

“転換期”だからこそ興味深い臨床免疫学

加えて、免疫系の考え方そのものが大きく変わってきていることもこの領域の注目ポイントです。アレルギー、免疫不全、自己免疫疾患はこれまで別の病気として扱われてきましたが、近年ではこの考え方が変化しつつあります。

まず、アレルギーは免疫が過剰にはたらくことで引き起こされる免疫の病気だと考える必要があるでしょう。免疫不全症は、かつては単なる免疫不全とされていましたが、解析技術の進歩により、生まれつきの遺伝子異常によって免疫のエラーが体で起こっている状態だという考え方に変わってきています。自己免疫疾患では、たとえばSLEは複数の遺伝子異常や環境要因で起こるとされていましたが、近年、たった1つの遺伝子異常が原因で重篤なSLEを発症したお子さんの事例が確認されました。さらに、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症のように、自己免疫疾患とアレルギーが同時に起こる病気があることも分かってきました。

つまり、従来は別のものと考えられてきたこれらの病気を“免疫疾患”というグループとして捉え直すことが重要になってきたのです。そうすることで患者さんの治療ターゲットが明確になり、より適切な治療につながっていきます。臨床免疫学領域はこうした転換期にあり、だからこそ興味深いのだと多くの先生方にお伝えしたいです。

日本臨床免疫学会の今後の展望

臨床免疫学領域には、膠原病リウマチ性疾患のように患者さんの全身を診ることが求められる病気もありますが、特定の臓器などを専門とする先生方であっても、本学会に集い、免疫や臨床免疫という共通言語で語り合っています。私自身も、ほかの分野の先生方のお話をいつも興味深く伺っています。これからも、本学会が異なる分野の方々同士を結び付ける役割を果たし、臨床免疫領域のさらなる発展に貢献できればと思っています。若い先生方にもこの領域の魅力を伝え、異なる分野の研究者とつながりを持っていただけるよう、今後もメディアの力を借りながらメッセージを発信していきます。また、国際コミュニティの一員として活動することも大切です。分野を超え、国や地域の境界を超えて同志と共に歩み、より大きな進歩を目指していきます。

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

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