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糖尿病の初期症状とメカニズム:典型的な初期の兆候から合併症、検査・診断の指標まで

糖尿病の初期症状とメカニズム:典型的な初期の兆候から合併症、検査・診断の指標まで
曽根 博仁 先生

新潟大学大学院 医歯保健学研究科 血液・内分泌・代謝内科学分野 教授

曽根 博仁 先生【監修】

目次
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糖尿病は、初期段階では自覚症状がほとんどないことが特徴であり、症状が出始めた頃には病状が進行しているケースも少なくありません。したがって、毎年きちんと健康診断を受けることにより無症状の段階で早期発見することが最も重要です。

そのうえで、本記事では、見逃してはいけない糖尿病のサインや、なぜその症状が起こるのかという身体のメカニズムから、糖尿病が進行した場合に生じる合併症、糖尿病が疑われたときに行われる主な検査、診断の指標までを解説します。

👉 このパートをまとめると
糖尿病の初期は自覚症状がほぼありません。血糖値が高い状態が続くと、のどの渇きや多尿、体重減少といった典型的な症状が現れ始めます。

糖尿病は、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。しかし、血糖値が高い状態が続くと、体はさまざまなサイン(症状)を出し始めます。

以下に挙げる症状が当てはまる場合は、すぐに医療機関に相談する必要があります。

  • 異常にのどが渇く(口渇(こうかつ)
  • 水分をたくさん飲む(多飲)
  • 尿の回数や量が増えた(頻尿・多尿)
  • 食べているのに体重が急に減った(体重減少)
  • 全身がだるく、疲れやすい
  • 手足がしびれたり、痛んだりする
  • 目がかすむ、視力が落ちてきたように感じる
  • 皮膚がかゆい、または傷が治りにくい

特に、口渇、多飲、多尿、体重減少は糖尿病の典型的な症状といわれています。

糖尿病の症状は、血液中のブドウ糖濃度が高い“高血糖”の状態が続くことによって引き起こされると考えられています。

口渇と頻尿・多尿の原因

血液中の糖分濃度が高くなると、体はそれを薄めようとして、体の細胞から水分を血液中に移動させます。この働きによって細胞内の水分が失われると、口渇が生じます。また、腎臓は血液中の過剰な糖を尿として排出しようとして活発に働きます。その結果、尿が増えて頻尿・多尿という症状として現れるとされています。

体重減少の原因

通常、食事から摂取したブドウ糖は、“インスリン”というホルモンの働きで細胞に取り込まれ、エネルギーとして利用されます。しかし、高血糖の状態が続いた場合、インスリンの分泌量や働きが低下するため、細胞はブドウ糖をうまく取り込めず、エネルギーにできなくなります。その結果、体はエネルギー不足を補うために、代わりに筋肉や脂肪を分解してエネルギー源として使おうとします。このため、食事をしっかり取っていても体重が減少することがあります。

糖尿病はその原因によっていくつかのタイプに分けられますが、代表的なものに“1型糖尿病”と“2型糖尿病”が挙げられます。症状の現れ方にも違いがあるといわれています。

1型糖尿病

インスリンを産生する膵臓(すいぞう)の細胞が破壊されることで発症します。インスリンが極端に不足するため、口渇や体重減少といった症状が急に現れることがほとんどです。

2型糖尿病

遺伝的な要因に、食べ過ぎや運動不足、加齢などの要因が加わって発症します。インスリンの分泌が減ったり、効きが悪くなったりする状態です。日本の糖尿病患者の多くがこのタイプで、一般的に初期は自覚症状がないまま進行していきます。

👉 このパートをまとめると
高血糖の状態が長期間続くと、全身の血管が少しずつ傷ついていきます。これが、さまざまな慢性合併症を引き起こす原因となります。また、極度の高血糖となった場合には、急性合併症が生じる可能性があります。急性合併症は速やかに治療開始しないと生命にかかわるため、特に注意が必要です。

治療されないまま、高血糖の状態が長期間続いた場合、全身の血管が傷つき、慢性合併症が生じる危険が大幅に高まります。以下が糖尿病の代表的な慢性合併症です。

糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)

目の奥にある網膜の血管が障害される病気です。進行すると視力低下や失明に至る可能性がありますが、初期では自覚症状がほとんどありません。そのため糖尿病と診断されたら、定期的に眼科でも検査を受け、早めに治療を開始することが重要です。

糖尿病関連腎臓病(とうにょうびょうかんれんじんぞうびょう)

腎臓にある、血液をろ過するフィルターの役割を持つ毛細血管が障害されます。初期は無症状ですが、進行すると尿中にタンパク質が漏れ出し、体のむくみ(浮腫)や倦怠感などが現れます。また腎臓の機能が低下し、透析療法が必要となることもあります。

糖尿病性神経障害

手足の末梢神経(まっしょうしんけい)が障害され、主に“感覚が鈍くなる”“しびれ”“痛み”といった症状が両足のつま先から徐々に現れます。さらに進行すると、潰瘍などの足病変や、時に足の切断を要する壊疽(えそ)につながる可能性があります。そのほか、立ちくらみや便秘・下痢などが生じることもあります。

イラスト:PIXTA

高血糖状態が長期間続いた場合、太い血管の動脈硬化も進行しやすくなります。これにより、心臓や脳などの病気のリスクが高まります。

  • 心臓の血管(冠動脈)に関する病気……狭心症心筋梗塞(しんきんこうそく)心不全
  • 脳血管障害(脳卒中)……脳梗塞脳出血
  • 手や足の血管(末梢動脈)に関する病気……特に足の血流が悪くなることによる歩行時の痛みや足先の壊疽

糖尿病治療の自己判断による中止や感染症などをきっかけとして、インスリンが十分働かなくなり、極度の高血糖となった場合、糖尿病ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖状態などの急性の合併症が起きることがあります。急性合併症は緊急治療が必要です。

糖尿病ケトアシドーシス
主に1型糖尿病でみられ、インスリンが極端に不足することによって起こります。インスリンが不足すると、ブドウ糖の代わりに脂肪がエネルギーとして使用され、ケトン体という物質が生じます。ケトン体が増え、血液が酸性の状態(ケトアシドーシス)となると、糖尿病ケトアシドーシスと呼ばれる状態になります。高血糖の症状に加え、吐き気や腹痛、深く速い呼吸、昏睡(こんすい)などが生じることがあります。糖尿病ケトアシドーシスでは、緊急入院下でインスリンの補充が行われます。

高浸透圧高血糖状態

特に高齢の2型糖尿病患者さんに多くみられ、感染症や脱水が引き金となって発症することが多いとされています。顕著な高血糖と高度な脱水が特徴で、意識障害もみられます。高浸透圧高血糖状態の治療では、主に脱水に対する治療(点滴)が行われます。

👉 このパートをまとめると
糖尿病の検査では、主に血液検査が行われます。診断では、血液検査の値を確認のうえ、症状や臨床所見などを参考として総合的に判断されます。

主に血液検査が行われ、血糖値とHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)(血液中でブドウ糖と結合しているヘモグロビンの割合)の値を調べます。

血糖値

採血した時点での血液中のブドウ糖濃度です。糖尿病では下記の血糖値を測定します。

  • 空腹時血糖値……食事や糖分を含む飲み物を10時間以上取らずに測定
  • 随時血糖値……食事の時間に関係なく測定
  • ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値……75gのブドウ糖が入った水を飲み、2時間経過後に測定

HbA1c

採血時点から遡って過去1~2か月間の血糖値の平均的な状態を反映する指標です。血液中のブドウ糖濃度が高い場合、ヘモグロビンに結合するブドウ糖の量も増加し、HbA1cが上昇します。

血液検査で以下の基準のいずれかを満たした場合、“糖尿病型”と判定されます。また、空腹時血糖値とOGTT2時間値の数値によって境界型・正常型に分けられます。境界型は血糖値が正常値(正常型)よりは高いものの、糖尿病と診断されるほどではない状態のため、“糖尿病予備軍”とも呼ばれます。

別日に行われた検査で、2回以上糖尿病型が確認された場合(1回以上血糖値の上昇を含む)や、初回検査で血糖値とHbA1cの両方の基準を満たした場合に、糖尿病と診断されます。

また、糖尿病の典型的な症状あるいは糖尿病網膜症があり、糖尿病型(血糖値)を1回確認した場合や、糖尿病型が基準値以下でも過去に糖尿病と診断されている場合は糖尿病と診断されることがあります。

A. 糖尿病に特有の症状ではありませんが、高血糖による脱水で皮膚が乾燥しやすくなったり、神経障害の影響でかゆみを感じやすくなったりすることがあります。また、感染症への抵抗力が落ちるため、皮膚の感染症(水虫や水ぶくれなど)も起こりやすくなるといわれています。

A. 糖尿病予備群(境界型)の方は、自覚症状がほとんどありません。しかし、放置すると将来的に2型糖尿病へ移行するリスクが高いとされており、この段階から生活習慣を見直すことが、2型糖尿病の発症予防にとって重要と考えられています。

この記事では、糖尿病のさまざまな症状とその背景について解説しました。糖尿病の典型的な症状は口渇、多飲、多尿、体重減少です。しかし、自覚症状に頼って診断したのでは、見逃したり、診断の遅れにつながったりすることが多く、毎年の健康診断による早期発見と早期治療が何より重要です。高血糖の状態が長期間続くと、糖尿病網膜症・糖尿病関連腎臓病・糖尿病性神経障害・糖尿病大血管合併症といった合併症のリスクが高くなります。

気になる症状がある場合や、健康診断で血糖値の上昇を指摘された場合は、必ずお近くの内科、できれば糖尿病内科(代謝・内分泌内科)に相談することが大切です。

  • 新潟大学大学院 医歯保健学研究科 血液・内分泌・代謝内科学分野 教授

    日本内科学会 総合内科専門医・内科指導医米国内科学会 米国内科専門医・ACP上級会員(FACP)日本糖尿病学会 糖尿病専門医・研修指導医日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・内分泌代謝科指導医・内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医日本動脈硬化学会 認定動脈硬化専門医・指導医日本臨床栄養学会 認定臨床栄養指導医日本疫学会 上級疫学専門家社会医学系専門医協会 指導医日本スポーツ協会 公認スポーツドクター日本医師会 認定産業医・健康スポーツ医

    曽根 博仁 先生
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