連載地域医療の現在と未来

「医療が足りている街」西宮市で求められる医療の「質」とは? 市民の期待にこたえる病院の取り組み

公開日

2025年05月28日

更新日

2025年05月28日

更新履歴
閉じる

2025年05月28日

掲載しました。
2b0ade01b2

西宮回生病院 院長 福西成男先生

少子高齢化に伴う人口減少により、全国各地の病院は逼迫(ひっぱく)する医療資源への対応を迫られている。そのようななか、兵庫県内で最も高齢化率が低い西宮市は、教育環境が充実した文教住宅都市として多くの子育て世代でにぎわい、医療を受けやすい環境が整っている(2025年2月時点)。

全国的にも珍しい状況に置かれている同市では、どのような医療課題があるのだろうか。西宮回生病院(兵庫県西宮市)の院長を務める福西 成男(ふくにし しげお)先生に聞いた。

豊かな暮らしに見合う、質の高い医療

兵庫県西宮市は、市街地を中心に医療環境がとても充実している地域です。関西屈指の住みやすい街として知られ、多くの教育施設や閑静な住宅が立ち並んでいます。そのため、子育て世代をはじめ若者の人口が多く、医療人材の確保にもそれほど困っていません。

さらに同市は、六甲山系や大阪湾を見渡せる風光明媚な土地柄で、夙川の流れる苦楽園エリアには高級住宅街が広がります。このように豊かな環境で暮らす方々は、一般的な水準よりも質の高い医療を求める傾向があります。そのため地域の医療機関は、ただ治療するだけではなく、いかに医療環境を整えて患者さんに満足していただけるかということに力を注いでいます。

患者さんのニーズはさまざまで、1日も早い社会復帰を希望する方もいれば、快適な療養生活を最優先に考える方もいます。たとえば回復期リハビリテーションの場合、ただ安静にしていられるだけでは不十分で、「居心地のよい環境や、気配りのできるスタッフに囲まれていたい」というような患者さんの声をよく耳にします。

こうした事情により、この地域では急性期から慢性期まで医療水準が年々向上している印象を受けます。これは医療技術という側面だけではなく、ホスピタリティの面においても顕著に現れています。

たとえば当院では整形外科やリハビリテーションに特化し、関連施設である兵庫医科大学病院と連携した優秀な医師の確保、先進医療の推進、地域連携の強化の3つの観点から質の高い医療を目指しています。特に、医療技術の研鑽によるレベルの高い医療提供は、患者さんに満足いただくための最も重要な取り組みだと考えています。今後も病診連携を強化し、地域密着でできるだけ断らない医療を目指します。

強みを活かし、地域住民に寄り添う

質の高い医療や地域密着型の医療体制が求められるのは、何も兵庫県西宮市に限った話ではありません。もちろん地域によっては、医療資源の偏在のような一筋縄ではいかない課題もあるとは思います。しかし、それぞれの医療機関が強みを活かして地域住民に寄り添う余地は、まだまだ残されているのではないでしょうか。

たとえば、当院はプロサッカークラブ「ガンバ大阪」や地元のフットサルチームなどを対象に、専門性のあるスポーツ整形の診療で選手をサポートしています。また、部活終わりの学生さんが来院しやすいように夜間帯まで外来を延長し、けがや骨折などに積極的に対応しています。

これからも当院は、医療技術の向上と地域に根差した診療に励み、より高いレベルで地域の医療ニーズに応えてまいります。そうすることで、魅力あふれる西宮市のさらなる発展に貢献できれば幸いです。

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

地域医療の現在と未来の連載一覧