JCHO千葉病院 院長 岡住慎一先生
人口の少ない地方地域では医療機関が少ないことが課題になっているケースもあるが、複数の医療機関が集まる都市部であっても、増大する救急医療ニーズへの対応は難しいものがあるようだ。
千葉県千葉市でも、救急出動件数が上昇し、救急搬送困難事案(救急患者さんの受け入れ先がすぐに見つからないこと)が発生しているという。
高齢化など医療需要の変化を見据えながら、地域の救急医療を守っていくためにはどうしたらよいのだろうか? JCHO千葉病院(千葉県千葉市)の院長・岡住 慎一(おかずみ しんいち)先生に話を聞いた。
当院は県庁所在地である千葉市中央区に位置し、至近距離に国立病院機構千葉東病院(290床)、千葉県がんセンター(450床)があります。中央区には他にも千葉大学医学部附属病院(814床)や国立病院機構千葉医療センター(410床)、千葉市立青葉病院(369床)などがあり、中央区だけを見ると人口10万人当たりの病院数や病床数が全国平均を上回っているものの、実は千葉市全体(千葉医療圏:中央区・花見川区・稲毛区・若葉区・緑区・美浜区)では全国平均に届きません。
このことは千葉市全体の救急医療のひっ迫を招く一因になっており、現場到着時間(119番通報~救急隊到着)、病院収容時間(119番通報~医療機関到着)、救急活動時間(119番通報~救急隊帰所)を延長させ、負の影響をもたらしています。
こうした現状を踏まえて今取り組むべきことは「救急医療体制の強化」と、さらにその先を見据えた「高齢者救急の体制整備」の2つだと考えています。
千葉市において救急医療体制の強化は急務です。最近では冬場のインフルエンザの流行などによって搬送困難事案が増えており、患者さんを県外の医療機関へ搬送せざるを得ないケースもありました。緊急性の高い重症の患者さんは可能なかぎり県内の医療機関で受け入れるようにしているものの、病床数が300床前後の中規模病院が中心となり全体的に病床数が足りない千葉市では、救急患者さんを積極的に受け入れることが難しいのが現状です。
この課題を解決するため、救急医療の司令塔を担う千葉市消防局に導入されているのが救急情報共有システム「Smart119」です。119番通報を受けた職員がこのシステムに患者さんの情報を入力すると、すぐに救急隊や参加医療機関に共有され、受け入れ可能な医療機関はシステム上で「OK」の返事ができるようになっています。
従来のようなアナログのやり取りでは、看護師から医師への伝え漏れが発生する可能性があり、救急隊は受け入れ先が見つかるまで医療機関に電話をかけ続けなければなりませんでした。今後は、スピーディーで正しい情報を共有できるシステムを活用することにより、効率的な救急医療の提供につながることを期待しています。
千葉市は、人口が今後も少しずつ減少していくと同時に、高齢化率は上昇していくことが予想されており、2040年では33.2%、2065年には36.0%まで上昇すると推測されています。そのため、高齢者救急への対応が重要な課題の1つとなっています。高齢患者さんは転んで骨折したり、誤嚥(ごえん)して肺炎になったりして、救急医療を必要とする場面が少なくありません。一方で、高齢患者さんは肺炎などが重症化して長期にわたる入院が必要になる可能性が高く、治癒しても体動困難(体の一部や全体がを意のままに動かせない状態)となり自宅退院ができず、施設等への転院支援が病院の多大な業務となるため、全ての医療機関が積極的に受け入れられるわけではありません。
千葉市を例にとると、高度急性期医療を担う千葉大学医学部附属病院や千葉県がんセンターが高齢患者さんの長期療養を支えることは現実的ではありません。高齢者救急に対応できる医療機関が限られるなか、地域包括ケア病棟を有し、介護老人保健施設を併設する当院が担う役割は大きなものがあると考えています。高齢患者さんの救急要請を積極的に受け入れるのはもちろん、急性期を脱した患者さんを当院に受け入れて在宅復帰をサポートしたり、訪問診療や訪問看護などを行う施設と連携して患者さんの治療にあたったり、患者さんが退院した後の生活の場を確保したりするなど、従来の公的病院の医療の枠を超えた取り組みも必要になるでしょう。
幸い当院は腎臓病の診療に強みがあり、腎センターを併設して透析医療を展開するほか、腎臓病に合併して生じる循環器の病気や糖尿病による血管疾患の診療も得意としています。高齢患者さんがかかりやすい病気に広く対応できる特徴を生かしつつ、他の医療機関との連携を密にして、地域の高齢者救急を支えていきたいと考えています。
千葉市では質の高い救急医療の実現を目指す「CHIBA e-link(千葉大学病院 救急病院連携コンソーシアム)」が組織されており、各医療機関の役割が明確化されています。専門的な医療が必要な場合は千葉大学医学部附属病院へ、急性期を脱した患者さんや腎臓病の患者さんは当院へ……と役割分担を行うことにより、限られた医療資源を効率的に活用するのが目的です。
とはいえ、医療の役割分担について地域の方々に十分ご理解いただけているかといえば、決してそうではありません。今後も引き続き、各医療機関が担う役割や連携体制に関するアナウンスを行っていく必要があるでしょう。当院も救急医療(高齢者救急)、透析医療(腎センター)、予防医療(健康管理センター)を柱に、地域医療をしっかりと支えていきたいと思います。
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