日進おりど病院 理事長 大島亮先生(日進おりど病院ご提供)
日本は急速な人口減少に伴い、すでに超高齢社会を迎えている。医療分野では高齢患者の増加に加え、医療従事者の不足も懸念されるなど、さまざまな課題が生じると考えられている。
これに対し、全国の病院はどのような問題意識を持ち、どんな対策を講じているのだろうか。日進おりど病院(愛知県日進市)の理事長を務める大島 亮(おおしま りょう)先生にお話を伺った。
愛知県日進市は、瀬戸市・尾張旭市・長久手市・豊明市・東郷町と共に尾張東部医療圏に属しています。この医療圏の特徴として、藤田医科大学病院と愛知医科大学病院という2つの特定機能病院(高度の医療の提供、高度の医療技術の開発および高度の医療に関する研修を実施する能力などを備えた病院)に加え、当院から10km内に日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院や豊田厚生病院など、救命救急センターとして重症患者の受け入れに対応する地域医療支援病院が複数存在している点があります。
そんな医療資源に恵まれた地域ですが、私は日進市の医療課題として3つの“不足”があると感じています。
1つ目は「日進市内での医療機関の連携不足」、2つ目は「高次の急性期治療後の患者さんの受け入れ先の不足」、3つ目は「在宅医療や介護体制の不足」です。
「日進市内での医療機関の連携不足」とは、市内の医療機関同士が手を携えて患者さんを治療・支援する機会が少ない、ということです。主な原因は、市外の比較的近くに救急を担当する病院があることではないかと考えています。実は、市内の多くのクリニックの先生は直接、市外の大きな病院に患者さんを紹介されるという状況があるのです。
しかし、日進市で唯一、愛知県から二次救急指定病院の認可を受けている当院に適切に紹介いただければ、患者さんのご自宅に近い場所でより早く診療を受けられることにつながる場合も多いはずです。
そこで当院では、データ分析を用いて地域の医療機関との連携強化に取り組んでいます。どこから、どの疾患で、どれだけ紹介・逆紹介が行われているのかを可視化し、「感覚」でなく「数字」で語ることのできる土台をつくることを重視しています。「紹介していただく」だけでなく、「よくなったらかかりつけにお返しする」ことによって、地域の皆様がより早く、適切な医療を受けられることにつながると考えています。
また、当院では医師会や製薬会社にもご協力いただきながら、院内で定期的に勉強会を開催しています。こうした場を通じて、地域の医療機関同士がより強く連携しあえる環境づくりを進めています。
さらに、広報活動や地域イベント活動への参加を通じて、当院がどのような医療を提供しているのかを積極的に発信しています。地域のクリニックの先生方だけでなく、日進市にお住まいの方にも当院の取り組みを知っていただくことが、地域医療の質向上につながると考えています。
2つ目の課題は、「高次の急性期治療後の患者さんの受け入れ先の不足」です。
大学病院のような高次の急性期医療機関は、重症患者に対する高度な治療や救急対応に医療資源を集中させる役割を担っています。そのため、状態が安定した患者さんは、引き続き急性期管理や回復支援を担う地域の医療機関へつないでいくことが前提となります。
しかし実際には、その受け入れ先が十分とはいえず、高次の急性期医療機関に患者さんがとどまりやすい状況が生じています。結果として、本来対応すべき重症患者の受け入れに影響が出る可能性もあります。
だからこそ重要になるのが、医療機関同士の連携です。患者さんの状態に応じて、適切なタイミングで次の医療へとつないでいく――その流れを地域の中で確実に機能させる必要があります。
当院では近隣の藤田医科大学病院や愛知医科大学病院などとの連携を強化し、急性期治療後も継続した医療やリハビリテーションが必要な患者さんを受け入れています。そのうえで、リハビリテーションを兼ねて入院していただき、日常生活が送れるようになるまでケアを提供しています。
また、レスパイト入院(在宅介護を担っている家族が介護に疲れた際などに、一時的に入院して休養することを目的とした短期入院)にも力を入れています。在宅介護を担うご家族が一時的に休養を取るための仕組みは、地域で暮らし続けるための大切な支えです。このような取り組みもまた、地域内の医療の効率化につながっていくと考えています。
3つ目の課題である「在宅医療や介護体制の不足」は、徐々に高齢化が進行するこの地域の重要な医療課題です。慢性期の患者さんをケアする介護関係のスタッフを集めることは難しく、看護師よりも集まりにくい状況があり、市内では新たに施設を増やしたくても人手不足が原因で計画どおり進められないといったケースが多くなっています。
この問題の解決策として、介護スタッフの給与や待遇の改善、教育や研修の充実などをすすめる必要があるでしょう。またテクノロジーの導入による業務の効率化や、地域社会との連携を強化することで、人手不足の問題を解決することも求められています。
当院はこの問題に対し、在宅医療センターや住宅型有料老人ホームを設置し、医療と介護の双方を同一法人内で提供できる体制を整えています。この体制により、入院中の医療だけでなく、退院後の生活や介護まで見据え、患者さんの状態に応じた支援を切れ目なく行えるようになりました。
今後はスタッフが働きやすい環境を整え、患者さんにさらに最適で安全な医療を提供していきたいと考えています。
日進市が抱えている3つの医療課題に対して、重要なのは「医療機関同士の連携」だといえるでしょう。その中で、当院のような二次救急を担当する病院は、近隣の大病院、地域のクリニックの先生方との連携、そして慢性期医療や在宅医療・介護を担う機関とのハブとなることが求められています。
その期待に応えられるよう、当院もまた医療需要の変化に対応しながら積極的に他の医療機関との連携を進め、地域にお住まいの方が安心して医療を受けられるように尽くしたいと考えています。
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